宇野常寛氏が語る、「箕輪編集室」以降の出版③
※こちらの記事は、2017年12月4日に放送された宇野常寛さんのインターネット対談番組〈HANGOUT PLUS〉に箕輪厚介がゲスト出演した回の書き起こし(一部加筆修正有り)となっています。
宇野:テレビの時代というものが緩やかに崩壊していった後に、どうやって本というものを使っていくかということを考えたときに出てきたのが箕輪厚介。すっごい一言で言うと「本とはイベントチケットである」という定義だよね。
箕輪:まさにまさに。宇野さんって本当、難しいことも書くのに僕みたいな人間もちゃんとウォッチしてくれてありがとうございます(笑)。
宇野:そうでしょ?
箕輪:本当そうですね。僕、でもそれは散々色々な人が言ってて、CDがイベント…
宇野:CDが握手券のオマケだったからね。
箕輪:そうなったから、書籍もイベントとか体験の入口になるんだって、僕が編集者になりたての頃みんな言ってて僕は想像できなかったの。いや、無理だろって。そんなのどういう形? って思って。毎回イベント作ってコスパ合わねえよって思ってたんだけど、気づいたら実現してましたね。
宇野:うん。
箕輪:要は盛大なお祭りに参加するチケットみたいな。
宇野:正確に言うとさ、イベントチケットっていうかコミュニティーへの招待券みたいなものとして本を使っているというのが箕輪厚介のやっていることでさ。一言で言うと。
箕輪:すげえ。宇野さんって本当、本物の…
宇野:俺本物だから(笑)。
箕輪:いや、凄い。まさに。こんな言語化されたの初めて。本当コミュニティへの入り口なんですよ。要はこの…なんとなく楽しそうな集団に参加するためにこれ読んでおこう、みたいな。
宇野:うん。もちろんその背景には、それこそいろんな人が言っている…共通の知り合い筋で言うと、西野亮廣や前田裕二が言っているようにね、情報から体験へと巨大な文化の中心の移動が起こっている。インターネットのせいで。
箕輪:うん。
宇野:その中で、コピーできるテキストや映像にはもう価値は宿らなくて、コミュニケーションという絶対コピーできないものにしか人は価値を感じないと。そうなると、CDは握手券になり、本はイベントチケットになると。
箕輪:まさに。
宇野:それを最もラディカルに実践しているのが箕輪さんの訳だけど。
箕輪:うん。
宇野:たださ、そこでちょっと箕輪さんいやらしいなーって思うよね。
箕輪:きたー(笑)。
宇野:つまり、なんかさ、基本的にNewsPicks Booksって、議論のさわりしか書いていないよね。それは結構確信犯で、特に堀江さんの本とか…
箕輪:僕ね、確信犯って毎回言われるんだけど、全力で売っているだけなんですけどね。
宇野:みんなそう言うよ。
箕輪:(笑)
宇野:でもさ、堀江さんの本とか結構分かりやすいけどさ…
箕輪:石を投げているだけってことですか?
宇野:NewsPicks Booksって大体そういう作りになっている。読み終わったら、「意味ないよ」って書いてあるんですよ。
箕輪:その通り。そこが僕が一番言いたいことなんですよ。本物の批評家って僕自身が言語化できていないことを僕が思っていることを言語化してくれるんですね。
宇野:だからNewsPicks Booksに凄い…箕輪厚介に騙されてみんなぶわーって買うんだけど、その中の9割くらいの奴らは読んで、そうかホリエモンこんな思考しているのかって納得して終わっていて、一番肝心なメッセージを見逃していると思うの。
箕輪:僕それ、たまにツイートしますよ。これ読んでも意味ねーよ! っていうようなことをさらっと。僕それ一番言いたいの。
宇野:うん。だってこの本はイベントチケットなり、本当にこの本に書いてあることを理解したんだったらお前行動しろって。具体的には「一緒に読んだんだから、俺たちのコミュニティに参加して変えていこうぜ」っていう呼びかけなわけじゃん。
箕輪:まさに。で、更に言うと、イベントなんか参加しても何の意味も無いんですよ。同じこと。
宇野:うん、そう。
箕輪:だから、来年(2018年)はNewsPicks アカデミアは2つの出口を提供しようと思ってて。まあそれも過程に過ぎないけど。もう単純に、ああ気持ちよかったっていうのは気持ち悪いから。僕としては吐き気がする。
宇野:そう。
箕輪:2つあって、1つはピッチコンテストみたいなやつ。片桐さんとかホリエモンとかが1年に1回、そういう本を読んで起業したいとかビジネス作りたいという人を評価する場をちゃんと提供する。
宇野:うん。
箕輪:あとは、NewsPicksがやっているジョブオファーみたいなところと連動して、彼らが読んだ本とか学んだものとか思考性とかを、企業と結びつける。本当に会社を移るとか、やりたいことを斡旋する場所を…アウトプットの場まで提供したいと。
宇野:採用市場と結びつけるの面白いね。企業のキラキラ広報戦略みたいなのに中途市場って荒らされちゃっている訳じゃん、言ってしまえば。
箕輪:大体文系は…理系もそうかもしれないけど、大学受験した時が一番優秀なんですよ、日本人って。
宇野:うん。
箕輪:僕が作る本なんてインスパイアされるだけなんですよ。モチベートされて、じゃあどーすんの? ってとこまでで。要はアウトプットを準備することによって、僕も本を作るレベルが一段上がるんですよ。
宇野:うん。だからね、本当ね、NewsPicks BooksをKindleで買って流し読みしているやつはあんまりちゃんと読めていないと言うか、罠に気付いていないよね、完全に。
箕輪:(笑)
宇野:本当に罠に気付いていないと思うよ。
箕輪:僕結構そうですよ。
宇野:適度に隠されているからね。
箕輪:あーでも気付いていなかった。でも僕はその意図を込めている。『多動力』なんて読んでも…『多動力』で会社辞めようとか。ま、そいつは行動しているから良いかもしれないけど、いやいやいやって。本質はそこじゃねーぞと。
宇野:うん。
箕輪:堀江さんってメルマガをマジで休まねーぞって。そういう、1個のことを死ぬ気でやった奴が横展開した時にとんでもないパワーを発揮するんだぞっていうことを言いたくて。みんな多動力を言い訳にばかり使っているんですよね。
宇野:本当そう。NewsPicks Books読んでさ、こんなの1時間で読めるじゃんとか、その人のブログに書いていることまとめているだけじゃんとか凄い悪口とか言うの簡単なんだけど、あの本ってちゃんとね…変な言い方すると、ちゃんと本の外側とか読むと良くない?
箕輪:いやー、宇野さん、嬉しい。
宇野:みんなもっと本の外側読めよって思う。変な言い方だけどね。それが総合的なメッセージになっている訳じゃん。
箕輪:そうなんですよ、まさに全部。
宇野:だから本の外側とかメタレベルで読んでいる人だったら、これがコミュニティへの導線であって、何か具体的な目に見えるアクションの方が本体で、これはイベントチケットに過ぎない。コミュニティへの招待券に過ぎないと(気付く)。
箕輪:強引にはやらないですけど、毎回締めを僕が編集として違和感無かったら、最後はもういいよ、もう捨てろよって感じで終わってます。
宇野:だからさ、これ結構実はいろんな人が直面する問題だと思う。この先は本当に体験しかないと。ただその体験っていうのも安直にやるとワナビー層とかコンプレックス層とかのヒーリングにしかならなくて、ちゃんとした出口をどう設計するかっていう問題がすごく大きく横たわっていて。1つのビジネス書の回答として中途採用市場との結託っていうのは大きい回答だよね。
箕輪:そうです。要は学びっていうものはアウトプットがなかったら単なるオナニーになっちゃうんで。英語だって、喋るってことが無かったら身につかない。だからここ(NewsPicksアカデミア)で本当に学んでそれが可視化されたら、オファーが来るとか、そういう場にしようと。
宇野:うん。
箕輪:ピッチコンテストでホリエモンが本当に金出すとか、そういう人たちがモチベーション高い、本気のオナニーじゃない人たちがいれば、僕もより意識が高まって、本当に彼らがピッチコンテストでいいプランを出せるような本を作らなきゃって思うし、転職市場に活発に行けるように個の力を高められるような本を作らなきゃって思うから。やっぱ唯一欠けてたアウトプットを来年(2018年)は整備していこうって思いますね。
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編集者 箕輪厚介を中心に、魅力的なコンテンツをプロデュースし、世に放つクリエイティブ実行集団こと「箕輪編集室」の定例会ゲストに、ついに評論家・宇野常寛さんがご登場!
紙の書籍・雑誌など旧メディアの生き残り方から、広義のメディアの未来まで、時代を読み解く二人の編集者が熱い議論を交わします。また既にネットで話題を呼んでいる、落合陽一さんの新刊『日本再興戦略』秘話についてもいち早く語ります。
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