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箕輪編集室2019年MVP企画 #前田裕二と本作り 『 #ギフトのあけ方 』~書籍完成記念記事~

SHOWROOM社長 前田裕二さんがニッポン放送をジャックし、その裏で24時間の生配信をする。そんな大きなチャレンジに関わるプロジェクトが、箕輪編集室で行われました。

当日その場で決まったテーマは、「プロデュースの民主化」。このテーマをもとに繰り広げられた7名の著名人との対談を、リアルタイムで一冊の本にするという前代未聞の挑戦。
「せっかくやるなら本当に嘘がなく、まったくのゼロから作る過程を共有したい」そんな前田裕二さんの想いが詰まったプロジェクトでした。

このたび、ついに一般販売を開始する書籍の制作を終えた、箕輪編集室のプロジェクトリーダー・柴田佐世子さん(以下:さよさん)にお話を伺いました。

みんなを笑顔にするリーダーの誕生

「あなたがリーダーに立候補したとき、このプロジェクトは成功するって
確信したよ」
取材に同席していたメンバーから
そんな言葉を掛けられ、
さよさんの目からは涙が溢れた。

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――リーダーに立候補された理由やそのときの心境を教えてください。

私はもともと二番手タイプだったんです。責任をとるのも、人を率いていくのも怖いと思っていました。だからこの企画が出たときも、誰かがリーダーをやってくれて自分は二番手で頑張るんだろうな、と思っていたんです。

でも心の中でずっと気になっていて。このリーダーは私がやるべきじゃないか、と勝手に感じていました。
ライターチームで1年半活動してきて、特に、イベントの最中にその場で記事を書く「リアルタイムレポート」にはずっと取り組んできました。だから今回のこの本作りは、まさにその集大成になるのではと思った部分もあったと思います。

これまで、何か決断するとき人に相談するタイプではなかったのですが、このときばかりは職場や家族に相談して、「やるならリーダーだ」と背中を押してもらいました。

スピード感が持ち味の箕輪編集室なのに、箕輪さんがリーダーの募集をかけてから何時間もあとに、ドキドキしながらコメントをしました。

――さよさんが手を挙げた次の瞬間、ライターチームで活動し続けているメンバーが次々と参加表明していったんですよね。

みんなが、「力になります」「やりましょう!」と言ってくれました。誰も付いてきてくれないかもしれないと思っていたので、その言葉がとても心強かったです。

――そこから、SHOWROOMの方との準備が始まっていったんですね。

プロジェクトが動き出したときには、すでに収録が5日後に迫っていました。
本作りについて本当に何も決まっていない状態だったので、焦りましたね。

最初は本といっても、データを縦書きにしてPDFにする程度かなと軽く考えていたんです。

でも、「もうちょっと本っぽくしたいな〜」と箕輪さんからダメ出しをもらってしまって(笑)。

どうやらしっかり本を完成させるところまで自分たちでやるようだぞ、となったんです。「本を作るにはブックデザイナーが必要」とアドバイスをもらったのですが、ブックデザイナーを探すのは正直ハードルが高すぎるし、時間もない。諦めてくれないかなと思ってしまったんです。

私の弱気を察したんでしょうね。SHOWROOMの方から「はじめからできないと言うのではなく、どうするか案を出して、判断を仰いだ方が良いんじゃないですか」とぴしゃりと言われてしまいました。

――それで気持ちに火がついたと。

それまで、リーダーと言いつつも、心のどこかで「誰かが何とかしてくれるだろう」と思っていました。
怖かったんです。自分から動いて誰かにお願いしたら、相手から面倒なことに巻き込まれたと思われるんじゃないかとか、嫌われちゃうかなとか。でも、自分が動かなかったら本当になんともならなかった。

必死にならなきゃだめだとスイッチが入りました。

箕輪編集室のメンバーに聞いてみたところ、ブックデザインができて、収録当日も現場に来ることができるデザイナー・安村シンさん(以下:シンさん)が見つかったんです。
当日は和綴じという製本方法で作ったのですが、なんと「個人的に見本を持っているので研究します」と言ってくれたんです。救世主だと思いました。そこから、デザインはすべてシンさんをリーダーとしたデザインチームにお任せすることができました。

収録日まで連日、仕事後にSHOWROOMの方と打合せをして、前田さんに初めてお会いしたのは収録の2日前。本で読んでいたままのお人柄で、私にも丁寧に接してくれる。
まっすぐに目を見て「一緒に成し遂げましょう」なんて言われてしまったら、火がつきますよね。「もうやるしかない」と、一層捨て身になった気はします(笑)。

――こんな風にメンバーを率いていこう、というイメージは事前にお持ちでしたか。

プロジェクトメンバーと、収録日の前にZoom(オンライン会議)で当日の流れなどについて打合せをしたのですが、初対面の人もたくさんいたので、ここはビシッと格好良く引き締めようと、相当気合いを入れて開催したんです。

それなのにいざZoomが始まった冒頭で、家に来ていた母が「さよちゃ〜ん、りんごむけた~!」って。その声がばっちりみんなに聞こえてしまって(笑)。

そのとき、「ああもうだめだ、格好つけるのは無駄だ」と思ったんです。自分の弱みも強みも全部見せよう、と。

――そうでしたね、私も出席していましたが、あの「さよちゃ〜ん、りんご〜!」は覚えています(笑)。でもそれがあったから、みんなリラックスして参加できたんでしょうね。

それなら良かったです(笑)。実はZoomのあと、数人のメンバーが当日のシフト組みや書き起こしのレクチャーをやる、と自ら言ってきてくれたんです。「さよさんはさよさんの仕事を」と、メンバーの調整などすべて引き受けてくれました。すごく頼もしかった。

いままで、人を率いるなら自分で整えてからみんなに役割を渡さないといけないと思っていて、自分ですべて抱え込んでしまうタイプだったんです。でも、初めて人に頼ることができて、そのおかげで、リーダーの仕事に専念できました。
頼って良いんだなというのは大きな気づきでしたね。

――メンバーには初心者もたくさんいたと思いますが、不安にはならなかったのでしょうか。

それは思わなかったですね。頼りになるライターチームのみんなが力を貸してくれていたことが大きかったと思います。
未確定のことも多いし、全然ピシっとしていなかったのに、みんな楽しみにしてくれているのが感じられて、私も楽しみな気持ちになりました。

仲間を信じて走り続けた24時間

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――いよいよ迎えた収録本番、どんな心境だったんでしょうか。さよさんはいつも笑顔だった印象があります。

常に想定外のことが起き続けていて、とりあえず笑うしかないという心境だったからかもしれません(笑)。このプロジェクト専用のカメラマンをつけることが決まったのは収録が始まる数時間前でしたし、まえがき部分を箕輪編集室で編集することが決まったのは収録開始後でした。

でも、ピンチと思うたびに必ず誰かが来てくれて、助けてくれたんです。

カメラマンにお願いしたのは、当日の朝2時だったんですよ。それなのに、連絡してすぐに「どこですか、行きます」と、4時間後には現場に駆けつけてくれました。

他のメンバーも、録音の管理や和綴じが元々できたわけではなく、役割を与えられてから習得して、驚くほどしっかり全うしてくれました。作業に没頭する私たちに代わって外に伝えてくれるPRチームがいてくれたおかげで、応援の声をたくさんいただけました。その反響はtwitterでは普段の5倍、instagramでは20倍以上だと聞いて、驚きました。

前田さんも、毎回のゲストの方に必ず「あそこにいるのは箕輪編集室の人たちで、24時間で本を作る挑戦をしていて本当にすごいんです」と紹介してくださって、嬉しかったですね。

そんな風にメンバーや前田さんに鼓舞されて、途中まではひたすら楽しかったです。

――途中までは。

夜の10時半くらいに、予定より進捗が遅れていることに気が付いたんです。
当日の作業は、書き起こし・編集・校正・デザインへの流し込み・印刷・製本と、多くのメンバーでの分担作業でした。当然それぞれのペースがあり、さらには全体の流れをみながら本質を掘り出してゆく編集作業もあって、時間がかかるのは仕方ないことなのですが、これは間に合わない、という不安が襲ってきました。

それまで楽しかった気持ちが一瞬で焦りに変わりましたね。でも不用意にみんなを焦らせるわけにもいかないので誰にも言えなくて。そこからずっと胃が痛かったです。

――そのとき、メンバーを急かしたり初心者から仕事の早いベテランに作業を振り替えたりすることもできたと思います。でも、さよさんはそうしませんでしたよね。

たしかに、初心者のメンバーもいましたしスピードも人それぞれでしたが、みんな頑張っていたんです。一発本番というプレッシャーもある状況の中、一生懸命だった。

当日一人もキャンセルすることなく、むしろ多くのメンバーが予定よりも長く現場にいて、想定外のことに対応してくれました。

何かを作るって本当に大変なことです。特に、文章を書くことの大変さは理解しているつもりです。誰かが作ったものを大切にしよう、という気持ちは常に持っていました。

だからどんなに急いでいても、仕事を取り上げたり、どうせ間に合わないからその部分は作業しなくて良いと言ったりすることは、思い付かなかったですね。

それよりも、みんなが一斉にひとつのことに向かって走っていくって、大人になってもこんなことがあるんだなと感動していました。ずっと、「みんなすごい!」と思っていました。任せているんだから待とう、と。

メンバーを信じていました。絶対みんななら仕上げてくれると信じて疑いませんでした。

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――24時間の終了間際、朝4時台の空気はすごかったですよね。

そうですね。どんなに遅くとも4時には印刷に回す、というスケジュールだったのですが、実際は4時の時点ですべての原稿が仕上がっていない状態でした。

終盤、箕輪さんと交代で幻冬舎の設楽さんが来てくださったんですが、状況をご覧になって、まずいとわかったんでしょうね。「どこまでなら間に合う?」と聞かれて、頭が真っ白になってしまいました。

覚悟をもってリーダーに手を挙げたのに、失敗したらどうしよう。でも、迷惑もかけたくない。「諦めたくない」と、「そもそも24時間で本を作るなんて無理だったんだ!」みたいな限界を超えて逆ギレのような気持ちが(笑)、頭の中でぐるぐる回っていました。

でも、そんな状況でもメンバーはひたすら手を動かし続けていたんです。
目の前の画面の中、googleドキュメントがリアルタイムで動きみるみる文章が出来上がっていくのを見て、その瞬間に、なんで自分が諦めるんだ、と、はっとしました。
自分以外誰も諦めていなかった。その姿を見て、もう一度自分を奮い立たせられたんです。

一番大変な前田さんだって、生配信の合間にスマホであとがきを書いて送ってくださっていました。最終の編集が間に合っていない私たちに「よし、書こう!」と言って、自ら私たちの作業している机にバッと座って、瞬時に書き上げてくださったんです。

それを見て心を決めて、「全部は間に合わないかもしれないけど、可能な限り多くのページを、本の形にして渡したい」と設楽さんに伝えました。
すでに印刷所に向かったメンバーを何時に戻して、何分で製本をして前田さんに渡すのか。冷静に現実的な段取りをしてくださったあとに一言、「頑張れ」と言ってくれました。

私からメンバーに伝えたのは一言だけです。「一枚でも多く」と。
そこからものすごい速度で原稿や印刷データが出来上がっていく景色には、もう言葉が出なかったです。

――あの1時間は、時が止まったかのようでした。

本当に、最後はただただ祈っていました。最後まで、「絶対に作り上げて前田さんに届ける」というみんなの思いが伝わってきました。
このプロジェクトで、「がむしゃらに頑張る」ことの眩しさに気付かされました。

ゴールのあと振り返って見えたもの

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――終了まであと1分のところで本が完成して、すべて終わったとき、さよさんは泣いていましたね。どんな心境だったんでしょうか。

実は、最後の方はあまり記憶がないんです。
本当にぎりぎりだったので、これが成功なのか失敗なのかもわからなくて。前田さんに本を渡したときも、失敗だったらどうしようと思って前田さんの目を見られなかったんです。

でも、本を渡し終えてスタジオに戻ると、準備段階からずっと一緒に走ってきたSHOWROOMのスタッフさんと目が合って、彼が頷いたんですね。眠そうだなと思ったんですが、いま思えば、涙ぐんでいたんだと思います。

止まっちゃだめだ、弱っちゃだめだ、とずっと気を張っていましたが、あたたかいスタジオの空気を感じて、「ああ成功したのかな」と実感できました。

24時間、夢中で走り続けました。

色々ありましたが、最後に湧き上がってきたのは、「楽しかったな」という感情だけでした。

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――プロジェクトを通して、リーダーとはこうあるべきだ、というような気付きはありましたか。

オンラインサロンにおいてのリーダーは「偉い人」ではないと思うので、リーダー論みたいなものはわからないですが、「傍観者にも評論家にもならない」ということだけは心に決めていました。

一生懸命何かをやっていると「悔しい」と思うこともありますが、そのたび、言い返す前にとにかく手を動かしてきたという自負があります。だからまずは自分が動いて、その姿を見せることでみんなと一緒にプロジェクトを成し遂げたいと思っていました。

「全速力で走るから、力を貸してください!」という感じでしょうか。
本当に本当に、たくさんの方に助けてもらいました。

――まさに「背中を見せる」ということですね。これまで築き上げてきた人間関係がメンバーの気持ちと掛け合わさって、良いチームになったんですね。

この人たちがいるから大丈夫だと思えたのは本当に大きかったです。

これまで長く一緒にやってきたメンバーには、結構無茶なことを求めていたと思います(笑)。

でも私から言わなくても、役割を察して自ら動いてくれたんです。これだけ人がいて、それぞれの強みを活かすと24時間で本まで作れるのかと、本当にありがたかった。

箕輪編集室で活動する上で、他の人の仕事を大切にしたいといつも思っていました。それは私だけではなく、みんなそうで、思いやりをもったメンバーばかりです。

思えばそれは箕輪さんの影響が大きくて、ずっと箕輪さんを見て、言葉を書いてきたからこそ、どういう風に人と接して、どういう風にものを作っていくかは、学べていた気がするんです。

今回あらためて、箕輪さんのすごさを目の当たりにしました。
収録当日、仙台での講演を挟んで収録に参加し、夜に原稿を見てくださる時間がありました。その場で読んだ原稿に、口頭でものすごいスピードでコメントしていって、一気に見違える文章になった。
その姿を見て、あらためてこの人に付いていきたいと思いました。あのアドバイスの時間だけでこの1年半箕輪編集室にいてよかった、と思えたくらいです。

「磯丸水産に行く!」とスタジオを去られたあと(笑)、「任せた!」と書かれたツイートには笑ったし、力をもらいました。

普段の生活では絶対に巡り合わないようなプロジェクトを、箕輪編集室にとチャンスをもらったんです。参加してくれたメンバー全員に、「箕輪編集室に入って、頑張って良かった」と思ってほしかった。関わったみんなの心に深く残るものを作りたかった。

素人でも、一から自分たちで本を完成させることができました。出来上がった本を手に取ったとき、自分たちが作った本だ、と心から実感しました。

運命を変えたある言葉との出会い

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――収録のあとも一冊10万円の限定版和綴じ本やPDFデータ版などを制作して、ついに単行本の形になった書籍が完成しましたね。書籍を手に取ってくださる方に向けて、メッセージをお願いします。

この本は、「変わりたい」と思う人にとってぴったりの本だと思います。
私も、この本で人生を変えた一人です。

どの対談も素敵な内容なのでピックアップするのが本当に難しいですが、特に刺さったのは、西野亮廣さんの章に出てくる「成長が止まってしまう人は、基本的に何かを止めることや手放すことが下手くそだ」という言葉です。

これまで、失敗が嫌で、不満を抱きながらも現状を捨てることはできず、ずっと宙ぶらりんだった自覚がありました。

でもこの一文を見たときに、何を怖がっていたのかな、と気が付いたんです。

色々と理由をつけて言い訳して、でも自分は優れていると思いたくて、失敗しないように失敗しないようにと進んでいった結果、いつの間にかつまらない大人になっていました。

この言葉をきっかけに、人生に一度は馬鹿になって走り出す瞬間があっても良いんだなと思えたんです。一時期の熱量に酔いしれ勘違いして一気に走り出す瞬間が、誰しも一度くらいはあっても良いんじゃないかと。

「好きなことだけで生きていく」と思いきりチャレンジできる人は、そんなにいないと思います。私のように、変わりたいと思ってもすぐには動き出せない人も多いのではないでしょうか。

気持ちなんて一晩たてば変わりますし、もしかしたらこの本を読んでも、自分にはできないって感じる人もいるかもしれません。

でも、本や言葉ってまたいつか戻ってくるもので、読んだあとすぐに行動できなくても良いと思うんです。

本はずっと手元に残りますから。何かのきっかけで突然その言葉を思い出して、動けることもあると思います。今回あらためて、そんな本の魅力に気付かされました。

誰にでもギフトがひらく瞬間があって、その時にこの本を思い出していただけたら嬉しいです。

私はたぶん、前田さんが書いたあとがきの最後の一文を読んで、これから何度でも自分を奮い立たせるんだろうな、と確信しています。

――最後に、さよさんにとってこのプロジェクトとは、何でしょうか。

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そうですね、一言で表すと…

「仲間」かな。

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24時間で本を一冊作る。そんな前代未聞のチャレンジの舞台裏は、いかがでしたでしょうか?

制作に携わりながら、実際にご自身のギフトもひらいていたさよさん。

たくさんの思いが詰まったこの一冊、ぜひお手に取ってみてください。
きっと、あなたのギフトもひらくはずです。

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取材・執筆:大西志帆
撮影:柳田一記
バナーデザイン:川端康介

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