お金2.0 はじめに
どうも、箕輪です。
11月のNewsPicks Book『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽
本日発売です。
この本を佐藤さんに書いてもらいたいと思ってお願いしたのは、ちょうどVALUやTimeBankが出てきて、僕もビットコインを持ち始めた時期でした。
新しい経済が来ていることにワクワクしていましたが、全く理屈が分からず理解はできていませんでした。
そこで、この新しい経済を解明させたら右に出るものはいない、
メタップス佐藤さんに、お金の仕組みからテクノロジーの変化、そして私たちの働き方や生き方にいたるまで、網羅的に書いてもらいました。
僕自身、ヨダレが出るほど、原稿を読むのに熱中しました。死ぬほど面白いです。
お金や経済の本質、そして人間というものが何たるかが、よく分かります。
「お金2.0」の時代は革命的な大変化です。お金の概念が根底から変わる時代です。
この変化に、ただ翻弄されるのではなく、お金をツールとしてうまく使い、自分のやりたいことを実現するために『お金2.0』は必ず役に立ちます。是非、読んでください。
**はじめに **
フィンテック、ビットコイン、シェアリングエコノミー、評価経済など2017年に入ってこういった単語を目にすることが増えたと思います。
今、私たちの目の前で起きていることの多くは「お金」や「経済」に関する大きな変化です。そしてこれは私が起業する前からずっと考えてきたテーマでもあります。
インターネットが誕生した時も「情報」のあり方は劇的に変わりました。グーグルの登場によってキーボードを叩けば世界中の情報にアクセスできるようになりました。その後フェイスブックなどの誕生によってネットで常に双方向で繋がっているのが当たり前の状態になりました。この20年で、「情報」のあり方、「コミュニケーション」のあり方が変わりました。
そして今まさに「経済」のあり方が変わろうとしています。
お金や経済のあり方が変わり、それに連動して働き方もどんどん変わっていっています。仮想通貨市場の時価総額はいつのまにか20兆円を超え、日本の大企業もどんどん副業を解禁しています。SNS上で強い影響力を持つインフルエンサーの登場と、そこからの評価経済の議論など、変化は加速しています。
ただ、どのように変わっていくのか? どのような方向に向かっていくのか? それがわからないと不安になる方も多いと思います。この21世紀に登場した「新しい経済」とはどんな経済なのか、その「新しい経済の歩き方」を本書では紹介しています。
本書では現在の経済やお金の起源、そのメカニズムを紹介して、それがテクノロジーによってどのように変化していっているのかを扱い、最後に資本主義の欠点を補った考え方として、価値を軸として回る社会「価値主義」という枠組みを提案しています。資本主義には問題があると世の中で言われることが増えました。
ただ、どのような点が問題であり、どうすればそれを解決できるのかといったことが語られることはあまりありません。
資本主義はベストではないがベターではあると考えられてきましたが、現在はそれより良い仕組みが実現できる可能性が出てきています。価値主義は1つの可能性として、目の前で起きている事例を踏まえながら説明していきます。
まず最初に、なぜお金や経済の本を書こうと思ったかをお話ししておきたいと思います。
私は1986年に福島県で生まれました。今では震災や原発によってその名前は世界中で有名になりましたが、そこで育った自分からすると本当に特徴のない田舎でした。
私が生まれた家庭は、片親でお世辞にも裕福とは言えず、母親が兄弟3人を養っていました。4人家族の世帯年収は一番厳しい時は100万円台だったこともあります。今考えるとなぜ生活できていたか不思議になりますが、当時はそれが当たり前の環境でした。
当然、小学校の高学年になってくると他の子供の家には当たり前にあるものが、自分の家にはないということに気づき始めます。どうやら我が家には「お金」というものがないらしいと、かなり早い時期からお金を意識する機会が多くありました。
今でもあまり実家に寄り付かないのは、当時の家に良い記憶がないからなんだと思います。
そこで純粋に思ったのが、お金をたくさん持つ家に生まれた子供はたくさんの機会が与えられ、そうでない家庭に生まれた子供には選べる道が少ない、ということでした。
「人生って平等じゃないんだな」
この時に感じた疑問がその後の自分の人生に大きな影響を与えました。
同時に、自分の人生が生まれた瞬間から失敗が約束されているような、そんな運命のようなものを感じて、大きな憤りを覚えました。
「生まれた瞬間から失敗が約束されている人生なんてあってたまるかよ」という怒りを感じ、仮にそういう運命のようなものがあるなら全力で抗いたいと思いました。
その上で、「人間はどんな境遇であっても何者にでもなれる」ということを証明したいという思いが生きる原動力になりました。
そして、そんなことを思うようになった原因である「お金」とは何なのか? そして今の社会のスタンダードな仕組みとなった、資本主義社会とは何なのか? そこに疑問を抱くようになりました。
「今の社会の仕組みが本当にベストなのか? もっと良い仕組みは作れないのか?」ということを、気がつくと考えるようになっていました。
確かによくできた仕組みであるけれど生まれた瞬間からスタートラインが違うような世界がベストであるわけはない、もっと良い仕組みがあるはず。ないならもっと良いものを自分で作ろう、といつしか考えるようになっていました。
高校を卒業して上京し、社会の枠組みを作る仕事として法律家を目指そうと思いましたが、当時は司法制度改革の影響で法律家になるためには大学院を卒業する必要がありました。
「大学の4年の学費すらないのに、さらに大学院に2年なんてとても無理だ」
当時の自分は「司法試験に2年で合格すれば、大学を中退してすぐに法律家になればいい」と、楽観的に考えていました。大学を卒業する余裕のない人間に、プラス大学院2年で合計6年も学校に通い続けられるとは到底思えませんでした。
「方向転換しなくちゃ……」
大学に入学してすぐに自分の考えていた道が塞がりつつあり、方向性に悩んでいました。その時になってようやく気づきました。
「まてよ、お金があるかどうかで人生が決まってしまうことに疑問を感じていたのに、お金がないとなれない職業を目指すのはそもそも矛盾していないか? そういう社会システムにムカついていたんだから、その仕組みを作り変えるような仕事をしよう」
そう思って大学1年の夏には方向転換、自分で会社を作って事業を始める道を選びました(その後に大学は中退)。そして力をつけて、幼少期からずっと自分の人生に影響を与え続けてきた「お金」の正体を掴み、今よりも良い社会の仕組みを自分の手で実現しようと考えました。
そこから今まで、経営を通してお金や経済のことに触れ続けてきました。
本から学べる知識、経営の実務を通して得られる体験、事業のデータを通して得られる知見、どれも色々な気づきを与えてくれました。
同時に、自分がいかにお金や経済の表面的なことしか知らなかったのか、偏見に惑わされていて本当の構造を理解していなかったのかを思い知らされました。
経営では日々の経理から資金繰りなどを通して金融の仕組みをリアルに知ることができ、組織マネジメントという観点からも、お金を稼ぐ人々の行動原理を学ぶことができます。
事業をすることによって、人はなぜお金を払うのか? どんな時に払うのか? という疑問を、膨大な行動データから読み解いていきました。
そして、自社の株式を公開し、資本市場とは何なのか? ということを自分の経験をもって理解することができました。
「なぜ上場したのか?」と私はよく聞かれるのですが(上場しなくても継続して成長させることはできたから)、お金や経済を理解しようとしたら金融の中心地である株式市場は避けて通れません。
外から見ていた資本市場のイメージと、体験した実際の姿は全く別のもので、ここでは多くの気づきを得ることができました。私は当初は資本市場に対しては当然ですがネガティブな印象を持っていました。
人々の欲望が渦巻く場所で、何かの役に立っているとは思えなかったからです。ただ、それは私の理解が浅かっただけで、経済を持続的に発展させていくために必要なシステムとして機能していました。
そして、なぜ今のような仕組みができたかと言うと、金融の歴史や人々の欲望を最適化していった結果だということも理解することができました。
当事者として関わったことで、非常によくできた仕組みである一方、課題もあることが見えてきました。この体験は「タイムバンク」という新規事業を作る時に活きてきました。
これらの経験を通して得た発見は、お金に対してネガティブなイメージを持っていた私にとっては目から鱗の連続で、知れば知るほど興味を掻き立てられることばかりでした。
ある仮説を立てて事業を通して検証すると、それに紐づいた次の仮説が見つかる。その仮説検証を繰り返すことで大学では学べないような活きた知見を得ることができました。
2015年から世の中ではFintech(フィンテック)という言葉が徐々に広まっていき、ビットコインなどの仮想通貨が2016年後半から一気に普及し始め、2017年は仮想通貨ベースの資金調達手段であるICO(Initial Coin Offering)が盛り上がり、お金や経済のあり方が大きく変わっていくことが誰の目にも明らかになりました。
この本ではFintech やビットコインなどの技術的な最新トレンドの紹介をしたいわけでもありませんし、新たな金融工学や経済学の理論を紹介したいわけでも全くありません(そういった話はメディアや大学の先生がたくさん紹介されているのでそちらを参考にしてください)。
また、人生の方向性に迷っている人に対する自己啓発本でもありませんし、「こうすれば仕事の効率が上がる!」といったライフハック的な本でもありません。世の中はこう変わるといった未来予測を趣旨とする本でもありません。
この本を書いた目的は、「お金や経済とは何なのか?」、その正体を多くの方に理解して欲しい、そして理解した上で使いこなし、目の前のお金の問題を解決して欲しいということです。
多くの人の人生の悩みの種類は3つに分かれます。
①人間関係、②健康、③お金です。
そして、③お金、によって人生の道が狭められてしまったり、日常がうまく回らなかったりという経験をする人を、1人でも少なくしたい。
昔の自分のような思いをする人をできるだけ減らしたい、そして、昔の自分に教えておきたい、知っておいて欲しいことをできるだけ包み隠さず書いていきます。
私は普段は企業経営をメインとしておりますが、このことは、自分が15年以上ずっと考えていたテーマですので、昔の自分がもっと早く知りたかったことを文章として残しておくことにしました。お金をテーマに文章を書くのはこれが最後になると思います。
お金や経済のメカニズムを万人が理解して使いこなせるようになった時、人間がお金に対して抱く不安・恐怖・焦り等の様々な感情から解放される時が来るかもしれません。
何よりも、多くの人がお金というフィルターを外して人生を見つめ直すことで、「自分はなぜ生まれてきて、本当は何がしたいのか?」という本質的なテーマに向きあう契機になると思っています。
かつて、電気の発明が人間の生活を一歩前へ進め、医学の進歩が疫病から多くの人を救い、身分からの解放が個人の一生に多くの可能性をもたらしました。
同様に「お金」や「経済」もまだまだ進化の途中であり、人間は今とはもっと違う存在を目指せると、私は信じています。少なくとも、朝から晩までお金のことを考え、お金がないことに怯え、翻弄される人が多くいる時代は、私たちの世代で終わりにしていいはずだとも思っています。
専門用語などはできるだけ使わずに書くことを心がけました。ITや金融関係の人にと
っては少しくどいように感じられるかもしれませんが、ご容赦ください。
本書を通して、お金や経済を「ツール」として使いこなして自分のやりたいことを実現できる人が増えることを願っています。
佐藤航陽
『お金2.0』は本日発売!死ぬほど面白いです。
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