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みの編は“面白い”の原動力を体感できる場所。

箕輪編集室(以下みの編)発足初期から携わり、『死ぬこと以外かすり傷』の中でも綴られている、1000人規模イベント(プロジェクト名は「革命のファンファーレ1万部プロジェクト」)の総指揮を行った浅見裕(通称あざみっくす)さん。

このイベントがきっかけでイベントプロデュースチーム(以下イベプロ)がみの編に誕生し、現在もリーダーとして活躍している。

*前回の記事はこちら
「“人を巻き込む”ための最適解はたった1つだ」


第2回目は、みの編と秩父デザイナーズギルド(浅見さんが主宰するフリーランスギルド)との共通点、みの編のこれからに迫ります。


圧倒的他者への想像力が行動と結果を変える

ーあざみっくすさんがみの編に入って一番得られたものとは?

圧倒的他者への想像力ですね。

想像力が鍛えられた要因は2つあって、1つは日本一レベルで忙しい箕輪さんと結構な頻度で関わったこと。それによって「限られた時間でどうOKをもらうか」、「どうプレゼンすればいいのか」を普段の生活ではありえないレベルで考え抜くようになりました。

2つ目はチームでやるということ。今僕はフリーランスなんですが、フリーだと「誰かに任せる」シーンがないから、他者とのコミュニケーションが生まれないんです。

みの編以外だと「いかに心地よくやってもらうか」とか、「一旦任せてみる」とかの経験ができない。

それが経験できたから、圧倒的他者への想像力が身についたなと思います。

ーそれを体感したエピソードはありますか?

革命のファンファーレ1万部プロジェクトの時も、「ゲストの等身大パネルを段ボールで作りたい」と提案してくれたメンバーがいたんです。

「え?段ボール?」って思ってちょっと心配だったんですが、「やってみたい」って言ってくれたから信じてみた。そしたら結果、段ボールの等身大パネルで来場者のみんなが結構写真撮ってくれて、喜んでくれてたんです。

この経験から自分で決めてしまうと想定内のことしか起きないけど、メンバーに任せたら良くも悪くも想定外の結果を生み出せることに気付きました。

やっぱり自分だけの想像の範疇だと“置き”にいっちゃうし、安パイを選んでしまうんだなっていうのが学びになりましたね。これは僕の中で結構大きなパラダイムシフトでした。

ーとはいえリスクに感じることはありますよね。OKするしないの線引きはどこですか?

完全にリスク観点ですね。コアな問題になる場合は止める。最低限それがなくても大丈夫とか、何かあってもイベントがストップしないという最低ラインは守っています。運営が立ち行かなくなってしまったら、イベント自体失敗してしまいかねないので。


解像度の変化に気づいたらコミュニティへのモチベーションが生まれた

ーみの編に入る前はイベントの“場作り”みたいな経験はあったんですか?

2016年くらいからリアルではなく、オンライン飲み会・フェス(対談・読書会など)イベントをやっていました。その時は今と違ってコミュニティを作りたいというよりかはZoomというオンライン会議システムを知って、オンライン上でのコミュニケーションの面白さに気がついたのがきっかけです。

家にいながらいろんな人とコミュニケーションが取れる、意外と違和感なく飲めることが面白かったですね。

ー自らイベントを企画・運営しようと思ったのはなぜですか?

自分がゼロイチ(何もないところから生み出すこと)が好きだと気づいたのが理由です。イベント開催などをする前は新卒からずっと勤めていた会社で、いわゆる「思考停止した会社員」になってました。

でもふつふつと「自分じゃないとできないものをやりたい」という思いがこみ上げてきて、2012年ベンチャーに転職。

さらに2016年にフリーランスになって、ゼロイチの“自ら生み出してる感じ”が自分のモチベーションになることに気が付いた。そこからイベントの企画・運営を自然とやり始めてましたね。

ーオンライン上でのイベントをやっていた時期と今とでコミュニティに対するモチベーションはどう違いますか?

もちろん関わっている人も違うし、コミュニティに対するモチベーションが違いますね。その当時はオンライン上でイベントを増やし、地元のメディアもやっていく中だったのでWebでの発信は得意になってきてたんです。

でもオンライン上で形成された熱をリアルで吐き出すために“場”が必要という感覚になってきた。これみの編そのままって感じなんですけど、オンラインで会っているとリアルで会いたくなるじゃないですか。

ーはい(笑)。すごくよくわかります。

そこでオンラインからリアルに移行していく時、さまざまなコミュニケーションツールがあるけど、ツールごとにコミュニケーションの解像度が上がっていくのに気がついたんです。

昔:手紙→リアル
今:チャット・LINE→電話→オンライン会議システム→リアル

昔と今を比べるとわかるんですが、今は情報の粒度によってツールの使い分けができるようになってきてる。「要件はチャット、深い話はリアルで」みたいな。だからこそリアルで会う時にはコミュニケーション濃度が変わることに気がついた。

「その時にしかできないことをしよう」という意識が芽生えたんです。オンライン上でのイベントをやっていたからこそ、リアルとの距離感や深度の違いがわかったんだと思います。


「“面白い”の原動力」を感じる2つのコミュニティ

ーあざみっくすさんは地元でギルドも主宰されていますが、みの編と秩父デザイナーズギルドの共通点はありますか?

どちらも「“面白い”の原動力」が一番パフォーマンスを上げるってことですね。秩父デザイナーズギルド、以下ギルドはまさにそれです。例えばロゴ制作の仕事をいただいたとしたら、工数度外視でデザイナー何人かで話し合う。

普通3人稼働したら「人件費や工数がかかりすぎ」って問題になりますよね。でも、超スピードが早い、あるいはパフォーマンスが異様に高いとか、思いもよらなかったメリットが生まれるんです。

5,6名でやっているから、当事者意識もあってバランス良いですね。(ギルドの報酬体系が気になる方はこちら

ー逆に2つのコミュニティの違いは?

チームの成り立ちが違うというのはありますね。ギルドは当事者意識を持てる小隊で5、6人。僕の持論で稼働しやすいメンバーの人数って3人、7人だと思ってて。

最小単位の3人の組織を組み合わせて大きな隊にするか、当事者意識が持てる7人以内に収めるのがいいと思ってるんです。

チャットやLINEグループでも3人だと絶対しゃべるけど、4人だと1人が話さなくなったりする。4本脚のテーブルは1本脚が抜けてもなんとか立てるけど、3本脚は1本抜けると倒れる。まさにそんな感覚で、これをずっと持論として持っているんです。

で、3人の次が7人。マジカルナンバーセブンの7人で、直感的に物事をインプットできる最大数。Webサイトのメニューも7つ以下だと、スッと理解できるんですよね。

ー人数少ない方が当事者意識があるっていう意見、すごくわかります。ちなみにギルドを作った理由はなんだったんでしょうか?

機能面と感情面の2つですね。フリーでやっているとフィードバックがないし、知見がたまらない。それを補完したかったのと、単純に気の合う人たちで仕事をしたいというのが大きかった。

よく「地方創生したくて地域軸で集めたんでしょ」っていわれるんですが、価値観の合う人がたまたま地域軸で集められただけ。価値観→地域軸という順番であっただけで、秩父にこだわりはありません。

価値観だけにしなかったのは、もう1つの軸である地域軸を刺したことでコミュニティの濃度が上がると考えたからです。

ー地方創生じゃないのに、地域イベントを開催している目的は?


これも2つあって、1つは価値観の合う仲間を増やしたかった。意外と地元は地縁によりがちで価値観でつながる機会が少ないんです。

もう1つは「人に楽しんでほしい」という軸ですね。僕のもともとの性格なんですが、自分発信で行ったことで喜んでもらえるのが至上の喜びなんです。

ー仕事でもそれは表れていますか?

そうですね。デザイン・コーディングをお願いすることもあるんですが、お願いする人のモチベーションが高いかどうかが一番の優先順位です。

クライアントに満足してもらうことはもちろんですけど、デザインなどをお願いした人にパフォーマンスが高い仕事をしてもらえる環境を用意するのが何よりも大切だと思ってますね。

楽しんでもらうってことが自分のモチベーションだってわかってきてから、よりそう思うようになってきました。自分も相手も「自分ごと」になればやる気が出る。だから最近は自分ごとにならない仕事はお断りするようにしていますね。

自分もみんなも楽しめる時間で埋め尽くしたい

ーたくさんのことを手がけてきたあざみっくすさんですが、今後の目標は?

みの編での活動は、「とにかく楽しい」と思える時間で埋め尽くしたいと考えています。せっかく、自らお金を払って「選択して」この活動をしているんだから、楽しまないってもったいないじゃないですか(笑)。

あとは他の人が見て、「あ、一緒にやってみたい!」と思ってもらえるプロジェクトをこれからもやっていきたいですね。

みの編に興味がある人、もしくは既にみの編にいるメンバーは、みの編での過ごし方・楽しみ方を「自らが決めて、やりきる」ことをお勧めします。

「なんかやってみたい」と思ったら片っ端からできることに手を挙げてみる、「インプットをたくさんしたい」と思ったら、過去の定例動画などをすべて見る、みたいなことでもいい。

とにかく「なんとなく」という状態が非効率で、自分はみの編で「こう過ごすんだ!」って決めてやりきることが大切です。それが人を呼ぶし仕事を呼ぶし、何より自分が楽しく過ごせる時間を作れると思います。


執筆 高下まみ
写真 大竹大也
バナーデザイン 惣島厚

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