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【尾原和啓×箕輪厚介】-後編-ゼロになる勇気

【前編】「乾けない世代」を解く、幸せの5要素
【中編】 新しいルールを作るキンコン西野亮廣 肩書経済 vs 信用経済
【後編】 ゼロになる勇気

人は生きていく途中で“3歳児”の心を失くしてしまう

箕輪
僕はいわゆる活躍している人の本を作っているんですけど、僕の持論は「3歳児最強説」で。人はどっかの時点で3歳児じゃなくなってるんですよ。

10歳でなくなってる人もいれば、社会人になってなくなってる人もいるけど、僕も尾原さんも、ホリエモンも、見城さんとかも実際そうで、要は理不尽だろうがなんだろうが「別に俺はこれが好きだから」って子どものようにやれる人。ずっとAのことをやっていたのに、急にいやこれはBだわってあっけらかんと言えたりする人が本当に残っていく気がして。

でも、例えば10歳のときにそんな無邪気な3歳児の心を潰して生きてきて、今銀行員やってるような奴はどういう風にもう一度3歳児の気持ちが芽生えるんですかね。

尾原
言い方は悪いんですけど、やっぱり3歳児になれる人って、「死ぬことなく生活できる」って思えるゾーンが大きい人なんですよね。

箕輪
ああーーーー!確かに。みんなそうだ。ゼロになる勇気がありますよね。いつ全てを失ってもまあ死なないからいいじゃん、みたいな。

尾原
そうそうそう。思っている以上にみんな怖がりなんですよね。

箕輪
つまり人間関係もそうだし、いろんなものでセーフティネット的なものを作ってる奴はよりチャレンジしやすい。ソーシャルの時代は「良好な人間関係」こそが生きる上でのセーフティネット。

尾原
そうそうそう。そのセーフティネットをどう作るかなんですよ。それは、友達関係で「お前だったらいつでもうちで働いていいよ」と。「一ヶ月くらいはゴミクズかもしれないけど、お前だったらどこかで金にする力を持ってるから飼っといてやるよ」って、箕輪さんだったら誰かがそう言ってくれるじゃないですか。

箕輪
前に妻に家を追い出されたときに、本当に泊まるところに困らなかったんですよ。むしろ、わらしべ長者のように一泊目から最高級のタワマンに泊まって、Tシャツとかもらっちゃって、むしろ裕福になってるわみたいな(笑)。でも、そういうことですよね。Twitterで泊まるとこないって言うだけでワーって連絡来て、物件選びたい放題。

尾原
そう。だからソーシャルの時代って、この「良好な人間関係」がセーフティネットなんですよね。日本ってみんな余裕あるから。むしろ、非日常を求めてるから。だから、僕は学生のとき四国のお遍路を歩いてまわったんですよ、八十八ヶ所。学生が歩いてまわると、珍しいからみんな泊めてくれるんですよ。

箕輪
その経験すごいですよね。自分は人に助けられるんだって思えると強いですよね。

尾原 
この本の中にも書いてあるんだけど、日本人がちゃんと学んだ方がいいのは「信頼」って言葉で、信頼って「信じて頼る」なんですよ。「頼られる」じゃないんですよね。まず、誰かに受け止めてもらえるだろうって倒れてみるってことが信頼なんです。さすがに人が目の前で倒れようとしてたら、誰かが拾ってくれるから。

箕輪
まさにそうですね。僕がチャレンジしやすいのはなぜかって考えたら高校生のとき、一人旅で行ったイタリアでパスポートなくしたんですよ。で、ミラノ空港で寝泊まりしてたんだけど、日本人観光客の大学生とかが、両替できない小銭をめっちゃくれるんですよ。だから「ここで俺、一生食っていけるわ」って思って。最初は今日のご飯どうしよう、マック行くしかないって思ってたのに、めっちゃ(小銭を)くれるから、いいパスタ食えるなと。
「本当に全てを失っても大丈夫だ」って思えたのはでかいですね、尾原さんでいうお遍路で助けられたみたいな経験は。それがあるから、好きなことをやり続けていても、まあ大丈夫っしょみたいなね。

尾原
あとは、お礼に与えられるものを与えて、ありがとうって言って受け取る。それは美味しい料理かもしれないし、子どもを寝かしつけることかもしれないし。

箕輪
それが「没頭」と「意味合い」ってところで培われるのかもしれないですね。例えば韓国料理が好きっていう人が料理を作り続けていたら、何かのときに私は何にもできないけど美味しいトッポギが作れます、みたいなね。

尾原
そう。だから、そういうものがたまっていけばたまっていくだけ自由になれるんですよね。ただ、まず最初にやんなきゃいけないのは、「すでにみなさん自由だから」ってとこなんですよ。だから、自分が3歳児に戻って無茶苦茶なことをやったときに、倒れたら絶対に拾ってくれる人はいますよね。それは極端な話、今の会社をクビになったとしても誰か拾ってくれる人はいますよねっていうことを“信じられるか”ってことなんですよね。

箕輪
信頼体験みたいな事ですかね。

尾原
イタリアには実際、caff sospesoっていう習慣があって、余裕がある人はコーヒー2杯分払っていくんですよ。そうすると、若くて食えない学生とかが、「caff sospesoありますか?」って聞くと、「誰かがやってくれたから飲めよ」っていう。

箕輪
それいいですね。日本ってあんまそういうのなくないですか?

尾原
いや昔はあったんですよ日本にもそういう習慣が。

箕輪
大事ですね。頼ってみることによって、自分がいざとなったらどうにかなるって、なんか自分が自信を持てるんですよね。

尾原
そうそう。でイタリアとかも、そうやってコーヒーを貰って、育った学生は、今度は社会人になったらcaff sospesoで置いてくわけですよね。だからPay forwardなんですよね結局。そうやって僕たちは生きているので。で言い方悪いですけど、どんどんソーシャルって強制的に人を善人にしますから。

箕輪
善人はコスパがいいってことですね。

誰にでも可能性のある社会

尾原
必ず何かをやってれば浮かばれる社会になってるんですよ。例えば今、アメリカが面白いことになってる。Uberっていうタクシーアプリを使えば、地図で目的地まで案内してもらえて支払いもクレジットで自動で行えるから、運転手は一言もしゃべらなくていいんだよね。だから、今Uberは英語がしゃべれない移民の方が、まず最初に就く仕事なんですよ。

1年も乗ってれば、利用者レビューが2,000とか3,000とか貯まるわけですよ。それが5点中4.5を切ってないってなれば、めっちゃ真面目なドライバーだよね。それで今何が起こってるかって言うと、Uberとイギリスのファイナンシャルサイトが提携して、Uberで真面目な運転してる奴だったら、どんな移民だろうが、どんな奴だろうが、新しい車買い替えるときにローンが下りる。

こんな風にどんどんこういう人間関係とか信頼とかってのが、可視化されて浮かばれるような社会になってきてるから、なるべく早く「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」のゲームのルールでどうやってより僕ららしく生きられるかが大事になってくる。

“ワークライフ”バランスではなく”ライフワーク”バランスが大事

尾原
そのためには切り分けですよ。とにかく会社とプライベートで切り分けるのもあるし。

箕輪
なるほど、割り切るってことですか。

尾原
うん。会社の仕事の中で、ちょっとずつ自分の好きなものを混ぜてけばいい。で、徐々に「ライフワーク」自分の好きでやってるっていうものの割合を増やしていけばいいってことです。ワークとライフが一緒なんですよ。「ワークライフバランス」じゃなくて、「ライフワークバランス」が大事。ワークの中に「つまんなくやってるワーク」と、「もう好きでしょうがなくて、それやってる自分が一番輝くライフワーク」の割合はどのくらいですか?

箕輪
尾原さんはもう(好きでしょうがないワークが)100%ですか?

尾原
僕はもう100%ですよ。


箕輪
いいなぁ~。僕全然そんなことない気がします。

尾原
何、僕との仕事はライフワークじゃないの?

箕輪
尾原さんとの仕事ぐらいっすね。

尾原
また(笑)。堀江さんに言うぞ!前田さんに言うぞ!

箕輪
いやいや(笑)100%って言いきれるって素敵ですね。

尾原
多分堀江さんも100%って言うと思うよ。

箕輪
まぁ、あの人はそりゃそうだ(笑)。3歳児のまんまですからね。

尾原
でも、ここも結局100 or 0じゃなくていいんですよ。ただ、楽しいと思える割合が20%や10%あるだけでもすごく幸せに生きれるようになるから。それをプライベートの中で見つけていけるのか、うま~く仕事の中で同じ価値観の仲間を見つけてって、仕事の中に忍び込ませていくのか、それはやり方ですよね。

編集:松下友紀 林千尋 福尾容子
写真:大竹大也

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