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「社会通念なんて豚に食われろよ」  少数派にしか到達できぬ快楽がある


大人になるということは、世間との帳尻を合わせるということだ。

しかし、彼は合わせない。

-いつも「変な」服を着ている。
-気に食わないことがあったら人目をはばからず罵倒する。
-中指をたてる。

しかし、彼は誰に対しても細かな気配りをする。

-誰よりも「人間」を見ている。
-傷つきやすく繊細。
-酔わないとしゃべれない。

豪胆、繊細、憤怒、気遣い、悲哀、混沌、そして、それを覆い隠せない未熟性・・・。

豊洲で行われた箕輪大陸(※)上映会。制作チームのメンバーだった彼に箕輪厚介さんがかけた言葉が忘れられずにいる。

「仮にお前が犯罪を犯して、箕輪編集室がなくなっても俺は許すよ(笑)。お前を見ていると、見城さんが俺をどういう気持ちで見ているかが分かる気がする」

率直に言って彼は「変」だ。非常にめんどくさい。中庸を目指す人間にはオススメできない。

だが、彼の生き方には確かに「箕輪編集室の原点」があるのだ。

(※)箕輪大陸:箕輪編集室メンバーが、500時間以上かけて箕輪厚介に密着し、作成したドキュメンタリー映画。昨年、箕輪厚介の誕生日である8月28日にユナイテッドシネマ豊洲で公開され、その後、クラウドファンディングの支援等、全国で公開された。


箕輪編集室メンバーの紹介企画。今回は、映画「箕輪大陸」の制作チームメンバーで、オンラインサロン「駒撮」のオーナーを務める駒月麻顕さんのインタビューをお届けします。

少数派でいる方が絶対に面白い

柳田:こんにちは。今日もなんというか、、、独特な格好ですね。

駒月:僕が一番嫌いな言葉知ってますか? 「オシャレ」って言葉ですよ。

柳田:へ?

駒月:「オシャレ」ってなんやと思います? 「オシャレ」っていうのは5割くらいの大衆が「いいね」と思っている状態なわけですよ。僕はそれをクソださいと思ってるんですよね。

柳田:そ、そうなんですか・・・。

駒月:「一見何か分からないけど、分かるやつは分かる」みたいな状態が好きなんですよ。

僕はバイクが好きなんですけど、Tシャツはオフィシャルショップでは絶対に買わないんです。なぜかというと、そこで売っているものには「MotoGP」とか「鈴鹿サーキット」とか「YAMAHA」とか、そういった文言が書いてあるわけですよ。そんなのクソださいし、つまらないじゃないですか。それよりも自前のスプレーでTシャツに何気なく「35」っていう数字を書く。それを見ただけで「ああ、これはMotoGPのライダー、カル・クラッチロー(※)のゼッケンだ。」と気付く。
分かるやつには分かる。その状態こそが正義なんですよ。

(※)カル・クラッチロー:ロードレース世界選手権のMotoGPクラスに参戦するレーシングチーム「LCRホンダ・カストロール」に所属しているMotoGPトップライダーのひとり

柳田:(わあ、いきなりめんどくせー)でも、そんなにマニアックだと分かる人なんてほとんどいなくないですか?

駒月:いや、分かるやつは絶対にいますよ。ギークにしか分からない。分かるやつだけにしか分からない快楽がそこにあるんです。

TV番組、音楽、映画や趣味でも、よくみんなが好きなものってあるじゃないですか。僕はメディアに作られた流行ほどつまんねーものはないと思ってるんですよ。少数で何かに熱中していることが楽しいんですよね。子供の頃で言うところの「ヒミツの基地」で遊んでるみたいな感覚ですよ。どこかの空き地で「エロ本を見つけたぜ」みたいな感覚が好きなんですね。

柳田:ふーむ、なるほど。

駒月:少数の中で流行っているものの方が絶対に面白いんですよ。だから僕は中学生の頃からあえて少数派に属することを望んで行動してました。周囲の影響関係なく、誰かが熱狂しているコンテンツは絶対に面白いと思っていて、そういうところを狙っていた方が楽なんですよね。

少数でいることを顧みずに選び取っているものだから熱量も必然的に高くなる。それこそが生き方なんですよ。多数が好きだと熱量もその分薄まっちゃうんじゃないですかね。

柳田:でも、好きなコンテンツで大人数が集まってワイワイやるのも楽しいじゃないですか。

駒月:それって本当にそのコンテンツのことが好きなんですか? 周りの雰囲気に流されてませんか?

柳田:・・・はい。すいませんでした。。。。。

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(自分をごまかすなよ。おっさん)

物心つく頃から「好きなことが見つからない」という悩みとは無縁だった

駒月:でも、まじめに少数派であることを続けてきて良かったことがありますよ。

柳田:ほう、それは何ですか?

駒月:最近、「自分の好きなことがなかなか見つけられない」という悩みを抱えている人が多いじゃないですか。僕は子供の頃からそういうことで悩んだことがまったくないんです。

柳田:それは聞く人が聞いたらメチャメチャ羨ましい状態ですね。

駒月:普通、何かを始める時って、周囲やメディアの影響があったりするじゃないですか。例えば、普通の人がバイクに乗り始める動機って、彼氏・彼女が乗ってた、先輩が乗ってた、親が乗ってた、といった具合で周囲の人間が、本人に何らかの影響を与えたことがきっかけだったりするんですけれども、僕には何もないんですよね。ただ単に、時速300キロで道路を疾走するためにはどういう手段があるのかを考えて、自動車は高いなと思ってバイクに行き着いただけなんですよね。周りでバイクに乗ってた人なんて全くいなかった。いたとしても4,50代のおっさんばかり。そんな中でまだ10代だった僕がバイクに乗っているという状況こそが面白かった。

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(あれは楽しかったなぁ・・・)

柳田:でも周囲から影響を受けて好きになるっていうケースがあっても良くないですか?

駒月:それを本当に好きなら全然いいと思いますよ。でも大人数が好きなものってどうしても純度が落ちる。例えば、ジャニーズやAKBみたいに、ファンが多いと、どれだけライブに行ったとか、どれだけ金をつぎ込んだかとか、本質とは全くかけ離れた話題で盛り上がったりするじゃないですか。僕はそういう話をするのがクソかったるいんですよ。

「好きなら好きでいいじゃん」ていうスタイルを貫けるのが、不純物が混じらない少数集団の良さだと思ってます。

周りの目なんてどうでもいい。みんな好きに生きたらいい

柳田:そういう感じで生きていると、生きにくくないですか? みんなが駒月さんみたいにはなれないと思いますよ。

駒月:僕みたいになる必要なんてないじゃないですか。みんな自分らしく生きたらいいと思ってるんですよ。普通だったら普通でいい。要は周りの目なんて気にするなってことですよ。

僕は左手の薬指に指輪をつけてるんですけど、これは社会へのアンチテーゼとしてつけてるんです。世間的には左手薬指に指輪をつけているなら結婚、右手薬指なら恋人じゃないですか。でもそんなことに何の意味もない。誰が決めたかも分からないバカバカしいルールに全員従っていることへの抵抗として、左手薬指に指輪をつけてるんです。

ピアスなんかもそうで、左側の耳につけていれば守る人、右側が守られる人、あるいは穴の数は奇数じゃないと縁起が悪いなんていう、よく分からないお約束があるんですよ。だから僕はあえてどちらも外して、偶数の穴を右側の耳に空けてます。ちなみに、男が右側にピアスをつけるのはゲイの象徴なんですね。でもそれは決まりがあるわけじゃない。だから、そう指摘してきたやつをぶん殴るためにつけてるんです。

柳田:素晴らしい哲学だと思います! (過激派がいる・・・)

駒月:もっと言えば、彼女と指輪作りに行く時に「中指じゃだめなんですか?」って聞いたんですよ。中指に指輪をはめていたら、中指を立てた時に映えるじゃないですか! 僕はそういうことをしたかったわけですよ!

でも、「それはさすがにやめてくれ」って彼女に叱られてしまいましてね。
仕方なく左手薬指につけてます。でもなんか寂しいなーって思ってるんですよね。。。

柳田:ああ、そこは彼女さんの言うこと聞くんですね。

駒月:・・・。

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(なんで許してくれないんだよー。中指に指輪をはめたかったなー)


テキスト/柳田一記新井大貴
取材・編集/柳田一記、柴田佐世子
写真/藤澤俊秀
バナーデザイン/惣島厚

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