箕輪 ピカピカの若手時代のインタビュー
最近、新人時代の話をよく聞かれるので、僕がまだ双葉社の広告営業の若手だったころの雑誌インタビューを掲載します。
与沢翼のネオヒルズジャパンをプロデュースした直後『カミノゲ』という雑誌にインタビューしてもらいました。
いまや本物のヒルズ族と仕事できるようになったと、この頃の胡散臭い自分に伝えてあげたい。
――先日、“年収1000万超を目指す若きビジネスマン必読マガジン”『ネオヒルズ・ジャパン』という非常にゲスい雑誌の創刊号がいきなり送りつけられて来まして、これを送りつけて来たのが箕輪さんですね?
箕輪 ええ(笑)。
――いま、知り合いたちに「読んだほうがいいよ」って勧めてるとこなんですよ。「ゲラゲラ笑えるから」って。
箕輪 光栄ですね。ボクはこれを『KAMINOGE』の井上さんとかが「いい」って言ってくれるのを想像しながら作ってたんで。
――ウッソだあ!(笑)。
箕輪 ホントです! 「これが無事校了したら『KAMINOGE』さんに取材してほしいって言おう」とずっと思ってたんです。この雑誌の制作過程の裏話とかって封印しておくのは悲しすぎるなと思うぐらいいろんな大変なことがあったんで。で、それをどこで聞いてもらおうかって考えたら、そういう話を聞いてくれるのは『KAMINOGE』さんぐらいだろうから、『KAMINOGE』さんに言おうと決めてて(笑)。
――なるほど(笑)。完全にウチとは真逆の雑誌ですけどね。ざっと見たところ、編集予算に10倍程度の開きがあるはずなんですよ(笑)。箕輪さんはこの雑誌ではどういうお立場なんですか?
箕輪 一応“総合プロデューサー”ってなっていて、立ち上げから与沢翼さんと一緒に「どういう雑誌にしていこうか?」っていう話をしていました。そこで与沢さんの考えとか「こういうふうにしたい」っていう意向を聞いて、実際の編集作業をフリーの人たちと一緒にやったという感じで。与沢さんが責任編集長で、実務の編集長をボクがやって、みたいな。
――そもそも箕輪さんが与沢翼と出会ったきっかけはなんだったんですか?
箕輪 もともとはウチ(双葉社)の『エッジスタイル』というギャル誌をやっていて、そこに出てもらったんですね。それまでボクはテレビで彼を若干半笑いで見てたところがあって、取材にかこつけて「ちょっと会いに行ってみたいな」って思って(笑)。ボクが『KAMINOGE』さんを好きだっていうことからもわかると思うんですけど、若干物事を斜めから見るようなところがありまして。
――それ誤解! 我々は物事を斜めから見たりしてません(笑)。でも、じつはウチも与沢翼には数カ月ほど前に取材のオファーをしたんですけど、まったくのノーリアクションで。
箕輪 そうなんですか(笑)。それはやっぱ半笑いをしに行くためですよね?
――完全にそのつもりでしたね(笑)。
箕輪 同じですよ。だからボクも最初は与沢さんのことを「いったいなんなんだろう」ってちょっと斜めから見に行こうと思って行ったら、まあ初対面の最初の1分ぐらいでイメージが全然変わって。テレビのあのキャラがあるからか、もの凄くまともな人に見えたんですよ。
――まともなんですか、この人。
箕輪 ええ、それが凄いギャップで。『エッジスタイル』の編集長とボクとで会いに行ったんですけど、たいてい偉い人って編集長とばかり会話するとかってよくあるんですけど、ボクにもその都度質問してくれたりして、「いままで会ってきたテレビに出てる偉い人と違うな」みたいな。それで単純に好きになって、「この人の雑誌を作りたいな」っていうふうなところで、ちょうど与沢さんもそのとき“ネオヒルズ族”ってテレビでけっこうやってて、「雑誌を作りたい」っていう話をされてたので、「じゃあボクにやらせてください」みたいなことで話が進んでいきました。
――箕輪さんは双葉社の中ではどちらの部署になるんですか?
箕輪 広告部です。
――えっ、広告部だと広告を取ってくるのが仕事ですよね。広告の人間が編集をやったんですか?
箕輪 そうなんです(笑)。ボクは普段は主にギャル誌の広告を取ってるんですけど、編集と若干近くて、タイアップ(記事)の企画とか商品開発とかもやってるんですね。
で、与沢さんが「制作費を出す」っていうことになったんですけど、「広告費」で貰うことにしたんです。つまりそれで正式に広告部であるボクの仕事になった。それから「じゃあ誰が作るんだ。いきなり1冊なんて人がいねえぞ」っていう話になり、外部の編プロに投げるにしても案件が案件だけにちょっと不安だと。それで「箕輪がそんなに感銘受けてるならおまえがやれ」みたいな(笑)。
――言い出しっぺが全部作れと(笑)。
箕輪 その前に最初は会社からは「ダメだ」って言われたんですよ。「おまえ正気か」と。
――ワハハハハ! こんなの正気の沙汰じゃないと(笑)。
箕輪 社長から「バカじゃねえの? こんな金持ちの自慢みたいな雑誌、俺は嫌だぞ」って言われて。「いや、じつはこういう思いがあるんです」って社長を口説きつつ、でもその間に与沢さんには「会社には企画が通った」って話しちゃってたから(笑)、「絶対に通さなきゃ」と思って。
――それでもなんとか会社からのOKが出たわけですよね。
箕輪 はい。でもそこからがさらに大変で、やっぱ編集作業を自分でやらなきゃいけない。それまでも簡単なページとかは作ってたので、だいたいの作り方はわかってたつもりだったんですけど、ホントの編集の専門用語とか段取りとかをよくわかってないのにやることになって。ゲラってなに?みたいな。
――いいですねえ。じつはボクも用語とかいまだによくわかってないんですよ(笑)。
箕輪 だからメールが来ると、その都度、編集の人に「このメールに対するこの返信、これで合ってる?」って確認しつつやっていった感じで(笑)。ホントに大変でしたね。
――なんてことない作業も不慣れってだけでけっこうグッタリしますよね。アルバイト初日の異常な疲労感みたいな。
箕輪 しかも通常の広告の仕事もやりつつのプラスアルファで1冊だったんで、死ぬほど忙しくて。それまでダラダラ仕事してきたタイプだったんで、「これ半端じゃないな」と思ったんですけど、そんなときは与沢さんのマインドとかに若干洗脳されてた部分で乗り越えたみたいなところがあるんですよ。
――“洗脳”って言っちゃってんじゃないですか(笑)。
箕輪 「与沢さん、こう言ってたしな」みたいな。だから何カ月も昼ごはんも食べず、ほとんど寝ずみたいな生活で、いま思うとホントにバカみたいに走り抜けた感じですね。
――最初からこんなエグい感じの構成にしようと思ってたんですか?
箕輪 いえ、最初は与沢さんのマスへのブランドイメージを良くしようと思って、与沢さん責任編集のもと、芸能人などを出して一般誌みたいにやろうと思ってたんですよ。
与沢さんが前面に出ちゃうと引く人は引くし、彼の信者だけが買うっていうのはあまりマスが変わらないんじゃないかってことで。だけど与沢さんが「それだと制作費を出してまでやる意味がない」ってことで企画趣旨が何回か変わって、与沢さん、土屋ひろしさん、久積篤史さんの3人で“ネオヒルズ族”と謳って出そうっていうふうに決まったときに、「中途半端な芸能人を出すより、この人たち中心で完全に振り切ったエグいぐらいの雑誌を作ったほうがおもしろいな」っていうことでこういうカタチになった感じですね。
で、青木真也さんとか写真家のレスリー・キーさんとか、ちょっと匂いが似てるなっていう人にご登場いただいて。
――そのネオヒルズ族三銃士の「1日のスケジュール」であったり、来歴、全スペックとかおもしろかったですよ。
箕輪 そのへんは何回も何回もライターに書き直させて。「まだ要素が足りない」って言って。できるだけ薄っぺらい雑誌にしないように、文字もボクが何回も直してっていうのは心がけました。
――この「ネオヒルズ合コン」ってのも凄いですよね(笑)。
箕輪 これは土屋ひろしさんの六本木ヒルズにある自宅なんですよ。彼が500万ぐらいかけて自宅の部屋をキャバクラの内装に変えて、女の子をたくさん呼んでは合コンしてるっていう。
――じゃあこれはホームパーティーなわけですね。
箕輪 ホームパーティーですね。で、フランス料理屋を出張で呼んで女の子をはべらかして。
――ははあ。ボク、土屋ひろしって写真を見るまで『なんでんかんでん』の社長だと勘違いしてましたよ。「なんで川原ひろしがネオヒルズ族なんだ?」って思ってて(笑)。発売日から1週間ぐらい経ちましたけど、反響はどうですか?
箕輪 相当。数日前はアマゾンで1位で、いまも2位ぐらいですね。
――マジですか!(笑)。
箕輪 だけどアマゾンのレビューとかは正直ひどくて、「このブタのグラビアは見るに耐えない」とか「出版社もここまできたか」とか(笑)。まあ、そう言われるのは承知の上だったんですけどね。
――しかも、発売翌日に大ボスの与沢翼がお抱えの運転手を暴行したとして書類送検されて(笑)。
箕輪 そうなんですよ(笑)。
――あれ、運転手を殴りましたよね?(笑)。
箕輪 殴ったと報道されてるんですけど、まったく殴ってないと本人は言ってます。
――「押しただけだ」って。
箕輪 そうですね、ほっぺを押しただけで。あの記者会見の前に与沢さんに会いに行きましたけど、「これで雑誌が回収とかになったら全責任を取ります。その費用とか全部払うんで」とか言ってて、会見が終わったあとには「死ぬ気で売るんで一緒にがんばりましょう」って。そういう男気みたいなのが意外にあるんですよ。ホントに大変な編集作業を経てくると、「与沢さんってカッコいいですよね」とか麻痺してきて。
――“麻痺”って言っちゃってんじゃないですか(笑)。
箕輪 ずっと与沢さんの顔を見続けてきたから、カッコいいのかカッコ悪いのか、インパクトあるのかないのかもわからなくなってきて。「これ(表紙)、相当インパクトある」って発売直後には言われたんですけど、徐々にわかんなくなってきて、「これまったくインパクトないな。なにこれ」とか思って。
――ワハハハハ! インパクトしかないですよ(笑)。
箕輪 それぐらい、どんどんわかんなくなってくる顔なんですよね。
――どんどんわかんなくなってくる顔!(笑)。
箕輪 もはや客観的に見れないというか(笑)。それでこれ、デザインは『メンズクラブ』のアートディレクションをやってたデザイン事務所にお願いしたり、現場の仕切りをこれも『メンズクラブ』や『LEON』とかをやってるスタイリストやヘアメイクさんを集めて。
――それで巻頭グラビアは、かのレスリー・キーが撮影してて。
箕輪 ええ。だからホントにトップクラスのスタッフで作ったんですよ。みんなも最初はいぶがしげではあったんですけど(笑)、のちにどんどんハマって熱くなっていくという、ホントにミイラ取りがミイラになるみたいに、どんどん輪が広がっていく感じでした。いわゆる与沢現象ですよね。
――与沢現象(笑)。でもレスリー・キーとはひとモメあったそうですね。
箕輪 これ、レスリーさんが「カネで受けた」と思われるのが嫌なんで言っときたいんですけど、ギャラはホントに低くて、普通のカメラマンさんと同じぐらいなんです。それで面識はなかったんですけど普通にレスリーの事務所の社長さんに電話でオファーをしまして。
――なんでレスリー・キーに撮ってもらおうと思ったんですか?
箕輪 やっぱりインパクトですよね。その前にホリエモン(堀江貴文)との「新旧ヒルズ族対談」とかベタな企画を考えてホリエモンから断わられてたんで、そうするとレスリーみたいないわゆる芸術家として一流の人と絡むことで彼らの格を上げたいというか、彼らをバカにしてる人たちが「え、レスリーが撮ったの?」ってことで引っくり返したいと思って。
あとはレスリーのキャラですよね。自分の信念を貫いて逮捕されたみたいな生き様もちょっと似てるかなと。そういうところからオファーを出したんですけど、事務所の社長さんは凄い熱い人なんで、「ぜひ!」って即答で。それにはボクも正直ビックリして、「ホントに与沢さんを知ってるのかなー?」と思って。でもあえてボクがそう言う必要もないので(笑)。
――受けると言ってるものを「ホントにいいのか」って(笑)。
箕輪 心の中では「夢なんじゃないか」っていう違和感を抱えつつもそこはサラッと(笑)。で、社長さんは「レスリーってオファーが多いけど、もうレスリーにしかできない仕事しか受けたくない」って言ってて。
レスリーさんの自分を貫く姿勢っていうのは、与沢さんが「批判を浴びてもカネを稼ぐのが俺だ」っていうのを貫いてるのと同じで、「批判もあるけど、こういうのはいまの日本人がビビッてやらない部分で、そういうのをやってもいいんだっていう1冊にしたい」っていう話をしたら、「それはウチのレスリーしかいないでしょ」的な感じで。ここまで大物になると意外とすんなりいくんだなって勝手に理解してて、「じゃあ事前打ち合わせをしましょう」ってなったときに、「レスリーがパリで飛行機に乗り遅れて来れない」と。で、社長さんだけ来て。
――本人不在で打ち合わせをやっちゃおうと。
箕輪 で、「当日はこういう段取りでやりましょう」って話をして、スタッフもけっこうテンション上がって「与沢さんのイメージがどう変わるんだろうね!」みたいな会話をしてて。で、撮影前日に「明日楽しみですね」みたいな話をしてたら事務所から電話がかかってきて、「ホントに申し上げにくいんですけど、レスリーが撮りたくないと言ってる」と。
――うわ、前日になってキャンセルをしてきた。
箕輪 「えっ、どういうことですか?」って聞いたら、「ちょっと与沢さんという人をネットで調べたら、詐欺師だとかいろいろ出てくる。レスリーはホントに自分が撮りたい人しか撮らない。松任谷由実とかも自分が3000万借金をして表参道の看板広告を借り切って写真展をやったんだ」と。
「やりたいことは借金してでもやるけど、いくら貰ってもやりたくないことはやらない人で、『打ち合わせに行けなかったのは自分のミスだけど、与沢さんについてはいくら考えてみても、本当にやりたくない』と言ってる」って。
――考えれば考えるほど嫌だと(笑)。
箕輪 そこまで言われちゃうと、ボクも「そりゃそうですよ」と。
――「こっちだってあっさりOK貰って驚いたんだから」って(笑)。
箕輪 レスリーさんにしてみれば、レディー・ガガとかビヨンセを撮るまでの位置にきて、「なんでいまさら与沢翼を撮るんだ?」と。そう思うのは当然の話で、ギャラも普通だし。
でもそりゃそうだけど、さすがに何十人というスタッフがすでに動いてくれていて、スタジオも取ってあるのにキャンセルは困る。もう時間的にも表紙を撮らないと無理だし、「それはホントに困る」っていうことをいくら言っても、「いや、でもレスリーが絶対嫌だって言ってる」と。それでボクは何回も説明をして。
――どういう角度から説明をしたんですか?
箕輪 「与沢はいまのこの日本でカネを積み上げて、批判されても本人は稼ぐことが好きなんだ」と。「彼にとってその1円稼ぐっていうことはアスリートが0.1秒記録を縮めるっていうのと同じことで、そういう欲望を追求するのってレスリーさんも同じじゃないですか」みたいな。
――100点のプレゼンですね! それでレスリーは納得しました?
箕輪 いや、「でもホントに嫌だ」と(笑)。「だけど打ち合わせに来なかったのはそちらのミスなんだし、当日現場で会って話して、それでも嫌だって言うのなら、そこまでして無理にお願いはしないです」って言って、当日12時ぐらいに撮影開始だったんですけど、「とにかく11時に来てくれ」って伝えて。でも、これはほかのスタッフには言わないほうがいいなと思って。
――現場が動揺しちゃうからですね。
箕輪 ほかのスタッフもこの、編集経験のない若者が仕切っているいかがわしい仕事を受けようか受けまいか迷ってるときに、「レスリーがやるって言ったんなら自分たちもやろう」って言ってくれたという経緯があったので。
そこで「レスリーが悩んでる」って言ったら、みんなも悩んじゃって完全に空中分解なんで。最悪、ダメだったら土下座して旅に出るぐらいのイメージで臨んで(笑)。
で、当日11時になってもレスリーは来なかったんですよ。
――うわー。現場の雰囲気を想像しただけで吐きそうですよ(笑)。
箕輪 もうスタッフは全員集合してるのに12時、1時とかになっても来なくて。「レスリー遅いですね」って言われても、「そうですね」とだけ言って。「これマジで来ないとかあるんじゃないか……」と思ってたら、やっと来たんですけど、いきなり「これどういう雑誌なの? あなたたち責任重いよ」みたいな。
――とりあえず文句を言いに来た(笑)。
箕輪 で、「与沢翼ってどういう人?」とか聞かれたので、「彼は死ぬこと以外はリスクじゃないって言ってて、会社が倒産しても這い上がってきた人間だから、失敗してもいいから挑戦する、叩かれてもいいから自分の欲望を貫くみたいな男だ」と。
「ボクも与沢翼のビジネス自体を100パーセントは把握してないけれども、彼から聞いた中では被害者はひとりもいないし、まっとうなビジネスだって言ってるからとりあえずそれを信じてる。この本はただ彼のビジネスを応援するのではなくて、そういう行き過ぎたマインドみたいなものを出したい。テレビとかでは無理でも雑誌はそれぐらいやってもいいんじゃないか」みたいなことを言って、レスリーも「まあ、わかった」みたいな感じになったんです。
――箕輪さん、ホントにネゴるのが上手ですね。
箕輪 だけど最初にネオヒルズ族に向かっていきなり「キミたちホント怪しいよ。怪しいけど、ボクも怪しいガイジンだから、怪しい者同士一緒にがんばろう」って言ったんですよ。確かにそこのマインドを隠しつつやるとほかのスタッフもみんなちょっと嫌じゃないですか?
ただレスリーがあえてそう言ってくれたことで、みんなが抱えてたつっかえみたいなものをオープンにしてもらって、要は「いまの時代を切り取るんだ」みたいな感じで各スタッフが一気にやる気が出て。「レスリーすげえな」って思いましたね。
――凄い話! 『KAMINOGE』にそんな制作秘話1コもないですよ!(笑)。
箕輪 ボクもホント初めてで。あんなどん底から急に状況が逆転したみたいな。そういう感じがあって、どんどんスタッフの結束が強まった。与沢さんの危険なところってそういう部分だと思うんですよ。
彼のビジネスは「信者が信者を作る」みたいな感じじゃないですか? だからこんなに信者が増えてて、アンチがどれだけいようが本は売れるし、ホントに新興宗教みたいな感じですよ。彼自体、そのレスリーと対峙した場とかでも言葉を多くは発さないんですけど、ただなんか魅了される。
レスリーも「ヨザワは目が凄い」って言ってて。だからそういう力はあるんですよね、人を伝染させるというか。
――だんだん箕輪さんから発せられるヨザワが“ヤザワ”に聞こえてきましたよ(笑)。
箕輪 でも与沢さんも撮影は超恥ずかしがってて、ずっと「嫌だ嫌だ」って言ってて。ただレスリーが徐々に乗せてって、こういうかわいらしい表情になったみたいな。
――このツラを「かわいい」と言いますか(笑)。
箕輪 えっ、かわいくないですか?(笑)。
――ゆるキャラみたいなかわいさがありますかね(笑)。それで、そもそもネオヒルズ族ってどんな人たちのことを指すんですか?
箕輪 定義はあってないようなものなんですけど、与沢翼みたいなネットビジネスをしてる人で、ヒルズ族の次に生まれた世代、ぶっちゃけホリエモンとかに憧れてた世代ですよね。
――元祖ヒルズ族のホリエモンたちに影響を受けた、その次の世代の若者たち。
箕輪 そうです。元祖と違うのは、ホリエモンとかサイバーエージェントの藤田晋さんって、頭もいいし、何をやっても成功するような人たちなんですね。ただネオヒルズの彼らっていうのは、与沢さんは頭いいですけど、それ以外の人たちってホントに学歴もないし、何やっても常に失敗してきた人たちで。
ただホリエモンを見て「俺もああなりたい」と思ってネットビジネスで失敗しながら成功する理論を編み出した、みたいな。そういうところで雑草から這い上がってきたみたいなのがネオヒルズ族の特徴ではありますね。
――完全に成り上がりタイプで。
箕輪 だから倒産も経験してるし逮捕もされてるし。それと土屋ひろしという人もずっと女にモテなくて、大学卒業まで異様なぐらいモテなくてホントにひねくれた性格になってて、
大阪の西成でカップラーメン食いながらホリエモンが活躍してる姿を見て、「クソー!」と思ってそこから徐々に成功していったという人で。みんなそういう心のどこかにひねくれた部分とかこじれたものがあって、ネットの力で這い上がったっていうのもネオヒルズ族の特徴かなと。
――なるほど。事業内容としてはウェブのコンサルだったり、いろんなことをやってると思うんですけど、ベースはアフィリエイトなんですか?
箕輪 最初はアフェリエイトだったんですけど、いまはセミナーがメインですね。『与沢塾』とか、彼ら3人で『ネオヒルズアカデミー』っていうのをやってて、彼らの教えを乞いたいと思う人がそこで入学金みたいなのを払って、ウェビナーって言うんですけど、彼らの授業を聴く。そういうのが主です。
――それがeラーニングというやつですか?
箕輪 与沢さんはほとんどそっちだから、講師みたいな宗教家みたいな。ボクも1回勉強のために登録しちゃったんですよ。そしたら会社に行くたびに20通ぐらい与沢さんからメールが来てて、ほかの普通のメールが処理できないぐらい。正直、迷惑メールですよ(笑)。
――ビジネス成功のノウハウみたいなことがいっぱい書かれてるわけですよね。
箕輪 それでまたキャッチが凄いんですよね、「あなたの人生このままでいいんですか?」とか。
――出社早々、生き方に疑問を投げかけられる(笑)。
箕輪 「あなたは間違ってます」とか「これだけ直せばナントカカントカ」とか。たぶんそういうのをクリックして動画を1回観ると、「もうちょっと知りたいな」ってなるんでしょうね。
実際ホントにそういうマインドみたいなことが自分のためになって成功してる人もいて、だから人によっては役に立つと思うんですけどね。ただそれが売りものだとしたら、何十万とかですからいまの世の中の価値観としては高すぎる。ただのPDFのデータだったりするんで。だから「詐欺だ」とか言われやすいんだと思うんですけど。
――実際に彼らに接してみて印象はどうでした?
箕輪 レスリーも言ってたんですけど、テレビも雑誌も絵力が強すぎて、なんか圧がありそうなんですけど、ホントに圧とかなくて。与沢さんはボクの身長より若干低いぐらいの、ホントにマスコットみたいな感じなんですけど。
――やっぱりゆるキャラっぽい。
箕輪 ただオーラはある、みたいなホント不思議な感じで。話すと声の感じがいいというか、凄い聞き入っちゃって、ひと言ひと言に重みがあってっていう。さっきも言いましたけど、ボクはそのマインドとかに刺激を凄く受けて、半分洗脳されながらこの雑誌を作ったところがありましたね。ただいくらがんばってやってても、ネットとかで与沢さんのことを調べると凄いことが書かれてるじゃないですか(笑)。
正直モチベーションが下がったりもするんですけど、会うともう1回マインドを入れ直されるというか、それは彼の危険な部分でもあり、そういう人を魅了するみたいなところがありますね。それで土屋さんはホントに腰の低い芸人さんみたいな感じで、誰に対しても低姿勢。この雑誌ではクライアントみたいなもんなんですけど、全然偉そうにせず。
――確かに対象に惚れた人間じゃないと作れない雑誌になってますよね。斜めから作った雰囲気がないですよ。
箕輪 はい。で、もうひとりの久積さんっていうのは正直不安定で、普通の29歳、ちょっと危なっかしいところはありますね。ただ彼が成功したっていうのは、異常なまでの行動力。
彼らは雑誌のことがわからないんで、「広告ってこういうふうに取るんだよ」っていう授業みたいなことをしたんですけど、そこから「広告取りましょう」ってなったときの久積さんや彼らの弟子たちの勢いっていうのがもう凄かったです。夜の8時ぐらいから翌朝の5時ぐらいまでの間にずっとLINEとかで10分に1回ぐらいのペースでガンガン質問が来たり、弟子に「早くこうしなさい」とかの指示が、信じられないぐらい異常なスピードで。
かと思えば、パタッと2日間連絡が取れなくなったりもする。あとから人に聞いたら、まったく寝ないでずっと仕事をやってて、2日間ぐらい部屋から一歩も出てこなくなるとかしょっちゅうだと。ホントに尋常じゃない集中力と行動力で、一方で正直危なっかしいんですけど、普通の若者じゃない部分っていうのはあります。
――レスリーを説得するときに箕輪さんがおっしゃった、「カネ儲けってスポーツと一緒だ」っていうのは一理あって、長嶋茂雄なんかが夜中にもバット振ってたりしてたのは「努力家だからじゃない、バットを振らないと寝れないんだから」みたいな話があるじゃないですか(笑)。それと一緒で、野球と並列で女とかカネ儲けとかがあって、女好きなヤツはとことんナンパしてヤっちゃうんだろうし、カネが好きなヤツはとにかくカネ儲けなんだと。そこに貴賎は特にないんじゃないかなーとは思うんですよ。ボクはカネ儲けをしたことないんでわかんないですけど(笑)。
箕輪 そうですね。露骨な欲望の表現だから否定しやすいだけで、べつにいいじゃん、みたいなところはあります。それが俳句だったら「おおっ」てなるけど、「女」って言ったら「はぁ?」みたいになる。その理由を説明せよって言ってもたぶん誰もできないところで、なんとなくムカつくとか、妬みとかだと思うんですよ。
――ホームラン打つヤツのことは称賛しても妬まないのに(笑)。
箕輪 ボクも正直、ひとりの若者としてテレビや雑誌で見たら、妬むとかムカつくとか「くだらねえ」って思うと思うんですけど、接してみたらピュアで明快だし、よどみがないんですよ。
土屋さんも与沢さんも明快に「お金が欲しい」と言う。与沢さんが「こないだ凄くいい話を聞いた」って言ってて、ライブドアの一番の株主の榎本大輔さんっていう人が何十億か払って宇宙旅行に行こうとしたと。「そんなにお金を払ってまで宇宙に行きたいですか?」って与沢さんが聞いたら、榎本さんは「20億払って宇宙に行けたら、そのあとたぶん30億、40億の仕事ができる経験を得られる気がした」って。つまり大金を使って経験をすることで自分をもっと稼げる器にしてくれるという。
そういう意味では、あそこまでいったらお金が欲しいわけじゃなくて、経験と替えられるものとして増やしたいし、また経験と替えてもっと増えるっていうような感じで、逆にボクみたいに中途半端に「カネねえ」とか言ってる感じより、むしろカネに卑しくないんですよ。単純に経験と替えられるものとして捉えてるっていう感じがしましたね。
――なるほど。なんせボクはアフェリエイトっていう時点で躓いてるんで。システムがよくわかってない(笑)。
箕輪 ボクもそこで躓きました(笑)。ボクの一番嫌いなジャンルなんで、ちょっと深く知ろうと思ってもできなかったんですけど。でも彼らのマインドみたいなものを理解して作ったっていう感じです。
大晦日の髙田(延彦)さんのふんどし太鼓とかも、たぶん髙田さんがガチでやってるから観てる人がネタにできると思うんですよ。あれを髙田さんが笑いを取りにいってたら、ぶっちゃけあんなに毎年の名物になるぐらいの重みもなかったと思うんで。
――「やってる本人、大真面目」っていう。
箕輪 大真面目っていうのを狙いつつ、ただ随時友達とかに表紙とかを見せて笑ってるのを確認して、「やっぱこうだよね」っていう両方を、自分を失わないようにやってましたね。
――そうか、ボクも大真面目にやんないとダメですね。余談ですけど、与沢翼はモテますか?
箕輪 ギャル雑誌に出てもらったとき、女の子たちが待ち合わせ場所で「あのデブ嫌だ」とか言ってたんですけど、いざ本人と話し始めると、たぶんボクが最初に受けた印象と同じだと思うんですよ。
意外と落ち着いてて懐が深くて話もおもしろい。それでみんなが「何番目でもいいから愛人にしてくれ」って言い始めたり、人生相談もしたがってたし。
――これは純粋にクソおもしろくない話ですね(笑)。
箕輪 でもホントに、こういうエグいだけのイロモノ的な雑誌で、内容もたぶん「最悪、つまんない」とか「クソ雑誌」とか言われるものだけど、だからこそ自分の中でできるだけ妥協しないで極端に書ききって、薄っぺらいお金持ち自慢で終わりにせず、ひとつのキャプションとかひとつの文章まで「なんでこんなにカネを稼ぎたいのか」とか「凡人との違いの根源」とかまで掘ろうとがんばったからこそ、いまツイッターとかでもネタにしてもらえるんじゃないかなと思います。
僕がバカにして作ってたら、誰にもバカにすらしてもらえないですよね。
世間の笑い者にされるっていうのも意外とハードル高いと思いましたね(笑)。
――箕輪さんがアスリートっぽいこと言い出した(笑)。
箕輪 通常はスルーされるのが当たり前だと思うんで。だから笑い者にされてよかったし、実際何パーセントかの人がこれを読んで、多少なりとも影響を受けてくれたらいいかな、みたいな感じはしてますね。
――発売されてからは双葉社の社長さんはなんとおっしゃってます?
箕輪 ホントに怖いもんで、「2号目はいつ出るんだ」と。
――ワハハハハ! おあとがよろしいようで(笑)。
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