動画は、ものの魅力を“強制的に”ブチ込める【みのゼミ】第1回 タカオミさん
箕輪編集室ではこれまで行なってきた「学割制度」をリニューアルし、今年(2020年)4月より「学校」としてのシステムをスタートさせました。
その名も「みの校」。
中学(みの中)、高校(みの高)、大学(みの大)、大学院(みの大学院)がそれぞれ独立したチームとなり、“現実の学年に合わせて” 所属する場所が決まります。
そんな学生が多数在するみの校では、今後「みの校ゼミナール」(みのゼミ)と称し、ビジネスや教養、クリエイティブについてなど、豪華な講師を招いた多彩な授業行われます。
4月11日に行われた記念すべき第一回の講師は、動画クリエイターのタカオミさん。
「今回はこの中からスターを発掘します!」
「動画のすごさを知る」をテーマに、他のメディアとの違いや、動画ならではの特性と魅力を余すことなく語ってくださりました。
今回はそんな授業の一部をお届けします!
〈授業への参加、動画やスレッドの閲覧は社会人の方も可能です。アーカイブ動画で全編が見たい方はぜひ箕輪編集室でご覧ください〉
【Profile】タカオミ(動画クリエイター)
映像系の専門学校に通ったのち、カナダに渡航。日本食レストランを紹介する動画メディアや日系企業のPR動画を制作するなど、動画クリエイターとしてのキャリアを歩む中、Twitterで箕輪編集室を知り入会。映画『箕輪大陸』などの撮影・編集に携わる。現在はNewsPicksの番組ダイジェスト動画や、NewsPicks BookのPR動画制作なども手掛けている。
新たな動画の作り手を発掘したい
司会:タカオミさん、記念すべき第1回です! よろしくお願いします!
タカオミ:みの校の初授業ですよね。プレッシャーがすごいんだけど。これでみの校への期待値が決まるじゃん(笑)。
——第1回ということで、緊張が見えるタカオミさん。それもそのはず。開始前の時点で、Zoomには42名が参加していました。
タカオミ:今、箕輪編集室内では動画の新たな作り手が現れていません。
僕はずっと「動画クリエイターを増やしたい」とは考えているんですが、動画を作るには技術やノウハウも必要ですよね。なので、まずは動画制作のモチベーションを上げることができたら嬉しいです。
今日はこの中から、スターを発掘したいと思っています!
——箕輪編集室には「ライターチーム」や「デザインチーム」「メディアチーム」といったクリエイティブに特化したチームが存在します。しかし、どのチームでも新たな作り手が生まれてきていものの、動画の“新しい作り手”がなかなか出てきていない現状を訴えます。
タカオミさんはそんな状況を打開すべく、2019年末から2020年初頭にかけてサロンメンバーを対象に「タカオミゼミ」という動画制作ゼミを行うなど、スキルやノウハウを実践的に共有する活動を行なってきました。
「新たな作り手を見つけたい」そんなお話を皮切りに、タカオミさんによる特別授業が始まりました。
強制的に“ものの魅力”をブチ込めるのが動画
タカオミ:はじめに「動画は能動的でない人間にもアプローチができる」ということについて。
動画には「映像」があり、「音声」があり、「時間軸」があります。時間軸があるということは、言い換えれば「ストーリー」があるということです。
視覚的な情報に「音声」と「ストーリー」があるものといえば、舞台や劇場、映画、ゲームなどがありますね。
ただ、映画を劇場で観るには、自分でチケットを買って、足を運ばないといけません。ゲームも同じで、ゲームを買って自分でプレイしなきゃいけない。
つまり「 “能動的な” 行動が求められる」わけです。
でもSNS動画はそうじゃない。SNSで流れてくる動画やYouTubeは “受け身” の状態で取れるんです。自分からガツガツ取りに行く必要がない。
これが僕の思う、動画のすごいところです。
少し僕の話をします。『日本再興戦略』(NewsPicks Book)の著者、落合陽一さんが出演する「WEEKLY OCHIAI」というNewsPicksの番組があるんですが、これはNewsPicksの有料会員しか見られないコンテンツなんです。
落合陽一さんが好きな人や、NewsPicksのコアな読者は当たり前のように知っていても、いわば “知る人ぞ知る” コンテンツだったため、番組の存在や面白さがあまり多くの人に伝わっていませんでした。
そこで、NewsPicks取締役(当時編集長)の佐々木紀彦さんが、もっと一般層にも番組を浸透させたいと考えて、Twitterにダイジェスト動画を流すことにしました。その動画の制作を僕に依頼してくれたんです。
ここで作った動画はなんと40万回ほど再生されました。そこからNewsPicksの有料会員がめちゃめちゃ増えたらしいんです。「Twitterに動画を投稿してから登録者数が増えました!」という報告をもらい、嬉しかったことを覚えています。
これはつまり、「WEEKLY OCHIAI」を知らなかった人に、その面白さを “無理矢理” 流し込んだということです。飯を食えない人に、点滴で栄養ぶち込むみたいな感じですかね。
そうやって、強制的に情報やものの魅力をぶち込むことができるのが動画なんです。
InstagramやTwitterなど、みなさんが日常的に接している情報メディアの中で、今までまったく知らなかったものにいきなり出会える可能性がある。
まず、それが動画の1つの魅力です。
“ネタバレ” しているものしか買われない時代
タカオミ:今日はマトリックスを作ってきました。
これは、コンテンツの深さと浅さ、そして受動的か能動的かという僕のイメージです。
まず街中の広告や電車の広告は、外に出掛けただけで見ることができますよね。ある意味、回避不可能です。こういうのは、自分が見たいと思っていなくても見てしまうので、すごく受動的なコンテンツです。
でもコンテンツとしては浅い。多くの人々に広く伝わるけど、伝わり方としてはめちゃめちゃ浅いんです。
次に、TwitterやInstagramなどのSNSに関して。これらは広告とか街中にあるチラシ、ポスターよりは、コンテンツとしてのパワーはもちろんあります。しかも、かなり気軽に見れる分、受動的でもある。
しかし、たった140文字や、たった1枚の写真で伝えられることは情報量としてそんなに多くありません。なので、これもコンテンツとしてはそこまで深くないのかなと思っています。
noteが最近すごく流行っていますが、Twitterで読ませようと思ったら、ワンタップさせないといけません。たったワンタップだけど手間がいる。つまり、noteやWEB記事は自分からアプローチをしないといけない媒体なんです。読ませようと思ったら、タイトルも頑張って作らなきゃいけません。
そのため、バズってる記事でも、本文を読まずに記事のタイトルだけ読んで反応しているだけの人って結構いるんですよね。
YouTubeも基本的には自分で検索したり、「これが見たいな」っていうものをクリックして見るものなので、能動的にアプローチする必要のある媒体です。
コンテンツの深さという意味では、1時間など長尺の動画もあるので、ものにはよりますが、一般的にはそこまで深いコンテンツではないかなという印象です。
映画の場合は、先ほども言ったように、自分が見たいと思う映画のチケットを買って、映画館へ足を運びます。実際に観ている間は、2時間椅子に座って受動的に映像を観るだけなので、映画館に行くまでは能動的で、そのあとは受動的なコンテンツですね。
本やゲームだと、自分が欲しいものを買い、購入後も、自分で本を読み進めたり、ゲームをプレイします。購入までも、購入後も常に能動的でなくてはならない。なので、ストーリーなどを理解するまでの労力がかかってしまいます。
逆に言えば、だからこそ、ゲームや本はすごく深いコンテンツを作れます。RPGなど長いゲームは、多くの場合80時間ほどはプレイすると思います。その時間、YouTubeなら動画が何本観れるでしょうか? 映画だとしたら、単純計算で40本観られます。要するに、コンテンツとしてのボリュームがすごい。その代わり、プレイするのに能動性が必要なのでちょっと大変です。
最後に、SNS動画です。SNSに流す動画はたいてい1分から2分くらいの長さです。Twitterの140文字や写真に比べれば情報が多いけれど、起承転結があるようなストーリーまでは伝えられません。
だけどその分、全然興味ない人にも見てもらえる可能性があるんです。
Twitterだと動画は自動で再生されるから、受け手はほとんどアクションを起こさなくていい。たまたま目に入ってきたものを「なんかちょっと面白そうだな」とスクロールする指を “止める” アクションが必要なくらいで、かなり受動的なコンテンツです。SNS動画の特徴であり、すごいところはそこだと思っています。
以前、キングコングの西野さんがこんなことを言っていました。
「今の人たちは、面白いと確信を持っていないと、お金も時間も使わない」
昔は情報源がテレビや新聞などしかなかった。だから「面白いかどうかわからないけどこの映画を観に行ってみよう」とか、「面白いかどうかは確信が持てないけど、このゲームを買ってみよう」とか、「美味しいかどうかわからないけど、この店に入ってみよう」が当たり前でした。
でも今の人たちは、レストランなら食べログでレビューを見たり、Instagramで検索したりして、その店の評価をチェックしてから行く。
映画ならタイトルをTwitterで検索すれば口コミがたくさん出てきますね。『カメラを止めるな』が “話題になっている” から、面白いんだろうなと信頼できて、初めて「じゃあ映画館に観に行こう」となります。
逆に言えば、手元で調べれば “面白いとわかるもの” がたくさんあるのに、今さら “面白いかわからないもの” に、時間と頭を使ってまで観に行こうとはならないわけです。
少し極端な言い方をすれば、この時代では “ネタバレ” しているものしか買われないということ。
なので最近、絵本の予告を売るとか、本の「はじめに」を全文公開するみたいなことが流行っていますよね。要するに、今の人たちは自分に価値があるコンテンツだと確信すれば買うということです。
こんなことを言ったらあれだけど、たとえば僕が作っている1分のダイジェスト動画を見て「面白くないな」と思ったら、本編の1時間はべつに見なくていいと思ってます。
それくらい、SNSに流す1〜2分の間に本編1時間分の「ここが一番大事だ」というところを全部凝縮して作っています。その1分が刺さらないならおそらく1時間見ても何も刺さらない。そういう思いで作っています。
SNSの動画というのは、このコンテンツが自分にとって絶対に役に立つとか、自分の興味が湧くだろうなっていう “確信を持たせるためのツール” として、めちゃくちゃ有用なんです。
動画は嘘がつけない
タカオミ:もう1つ、動画のいいところを挙げます。それは、嘘をつけないということです。これの何が「いいところ」なのか。
たとえばライターさんの書くテキスト記事の場合、極論、何も言っていないことも想像で書けてしまうと思うんです。
もちろん、読者に正しく伝えるために行間を読んで言葉を付け足すことができるという意味では、いい面も備えています。
しかし、たとえば悪い週刊誌だと、めちゃくちゃなこと書かれることもありますよね。言っていないことも書けてしまう。そういう意味ではテキストはコンテンツとしての信頼度が低くなります。
でも、動画はそれができないんです。
たとえばインタビュー動画だった場合は、絶対にその人が話したことしか使えない。撮ったものを無理矢理に変えるのは、相当な悪意を持ってやらないと難しいです。
つまり、「嘘がつけない」ということは「コンテンツとしての信頼度が高い」ということなんです。これが、動画のもう1つのいいところです。
* * *
タカオミさんは確信を持って語ります。
「強制的に相手に魅力をぶち込む力がある」
「動画は嘘がつけない」
普段何気なく見ていたSNS動画。こんなにも動画の価値について考える機会はなかなかありませんでした。
すでに動画制作をしている人にも心に響くものがあり、考えさせられる内容だったのではないでしょうか。
ただ作るのではなく、動画の価値を知り、そこに想いを込めることで、人をも巻き込む力となる。
この授業を聞いたメンバーから、新たな人材が次世代の「スター」となるべくすでに走り出しているかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
〈「みの校」の講義への参加、動画やスレッドの閲覧は社会人の方も可能です。アーカイブ動画で全編が見たい方はぜひ箕輪編集室でご覧ください!〉
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編集:舩津里奈子、金藤 良秀、ドイミチコ、帆足和美
文字起こし:舩津里奈子、井ノ口雅幸、古山雄貴、はなみん、岩井李人、池田大
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