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「チャンスは待っていてもこない」やりたいことを実現するためには

「チャンスは待っていてもこない」やりたいことを実現するためには「やりたいことは今やる」「やろうと思ったら一生懸命やるので」。

彼女の言葉には、説得力がある。上辺だけには聞こえない。

彼女は10年の事務職を経て、未経験からライターに転向後、わずか1年半で雑誌編集長を務めた。しかも2児の母という顔を持つ。

後半では浜田綾さんのライターとしてのキャリア、家庭と仕事の両立、そして今後の仕事について伺いました。


オンラインサロンがきっかけでライターに

――綾さんが書くことを仕事にしたきっかけは何だったんですか?
浜田:最初は、数年前に参加していたオンラインサロンでのライター募集に手を挙げたのがきっかけでした。もともとは趣味でブログを書いていたんです。

だけど、何でも「やるんだったら一生懸命やりたい」と思うタイプなんで、ワードプレスでブログを書いて皆でフィードバックし合うオンラインサロンに入って、のめり込んで活動していたんですよ。

そんな時、オンラインサロンのオーナーが「新しくメディアを起ち上げるので、一緒にやってくれるライターを募集します、ギャラも多少出ます」と募集をかけていてたんです。

そこで反射的に「やりたいです」って手を挙げたのが始まりです。

最初は記事の書き方もわからなくて、うまく書けなかったときがありました。ディレクションしてくれた方から「この原稿はちょっと出せないかな」って言われたこともあって、どうしたらいいんやろって凹みました。

でもそこで考えて、「自分」を前に出してみたら、わりと上手くハマったんです。

たとえば、整体院さんの記事なら、実際自分が腰痛で悩んだ時の話を織り交ぜてリアリティーを出してみたり、写真もフリー素材はやめて痛そうな格好をしている自分の姿を旦那に写真撮ってもらったり(笑)。

そういうことが許されていたメディアだったので、自分を出して自分ごと化した方が記事もよくなりました。この仕事が終わった後、やっぱりライティングの仕事をやっていきたいなあと思いましたね。

――前田デザイン室では紙媒体の編集にも挑戦されてますよね?
浜田:よく考えたら無鉄砲だと思います(笑)。でも、紙の本作るのはやっぱりやりたかったし、地方に住んでいるうえにWebの仕事がメインなので、この機会を逃すとなかなかチャンスが回ってこないだろうと思ったんです。

『死ぬこと以外かすり傷』にも「今やれよ!」って書いてるじゃないですか。待ってるだけじゃチャンスは来ないよ、本作りたいなら今作れよって。それが私の心に残っていて、その通りだなと。だからやると決めました。

でも、やったらやったでわかんないんですよ。私も大人やし、わからないところを聞くのは躊躇するんですけど、やっぱり「本を作りたい」って気持ちが勝つんですよ。なので、わからないことを一つひとつ周りの人に聞いて、つぶしていきましたね。


2人のサロンオーナーから学んだ、「仕事を頼みたくなる人」の条件

――編集者やライターの立場から見て、箕輪さんや前田高志さん(箕輪編集室メンバー兼「前田デザイン室」室長)のここがすごいって思うところはありますか?

浜田:編集者さんって――アートディレクターも似てるんでしょうけど――人に気持ちよく仕事をしてもらうプロだと思うんですよね。

企画を立てたり、マーケットを見るための戦略があったりもするんだけど、人に頼んでやってもらう部分も大きいから、いわば “プロデューサー” なわけですよね。だから気遣いがすごい…!

――人からお仕事をいただく上で大切なことは何だと思いますか?

浜田:ライターに限らず、写真撮る人もデザインする人も一緒やけど、頼める人はいっぱいいるんですよ。その中でも自分を選んでくれた人は、会ったときに「あ、この人なんか良さそうやな」と思ってくれたからなんです。

やっぱり人柄って大事で、それに成果物が伴えば、ずっと頼んでくれると思いますよ!

前田高志さんって、もちろん実力もめちゃめちゃあるんですけど、人柄が魅力的なんですよ。一見ふざけているようだけどすごく気を使っている、だからこそそれがデザインにも活きるのでしょうしね。あととにかく正直です。

打ち合わせに同席させてもらってわかったんですけど、前田さんのことが好きでデザインを頼みたい人が何人もいる。そういうフリーランスを目指したいですよね。


仕事と家庭両立の秘訣は、“スーパーウーマン” を目指さないこと

――結婚されていて子育てもしながら、オンラインサロンの運営もライターのお仕事もするのは、大変じゃないですか?
浜田:そうですね。私の場合は、周りの人に恵まれてるなと思います。

ライターになった時、色々しんどくなって銀行の振込を忘れるとか、家のことが回らなくなったことがあったんですね。一度夫に「家のことに気が回ってないんじゃないの?」って言われたことがありました。

夫としては心配をしていただけだったと思うんですが、私はボロボロ泣いてしまって「私はあなたをずっと支えてきた。私もやっとやりたいことを見つけたから応援してほしいんです! そんなふうに言われると辛い!」って。

そしたら夫が「自分が活動するお金は自分で工面すること。それから家のことは何を手伝ったらいいのかわからないから、具体的に伝えてほしい」と言ってくれたんです。

そのときに、今まで「私がやらないと」って気負ってたことも、任せていいんだって気づくことができました。そういうコミュニケーションをとって説得できたら、旦那さんも応援してくれるんじゃないかと思います。

――たしかに、妻がやらなきゃ、母親がやらなきゃと思ってしまうこともあると思います。

浜田:私も与えられた使命は全うしたいので、子どもに対してもそうでした「お母さんを完璧に頑張らな」って。でも、そうしたら子どもにも完璧を求めてしまうんですよね。

息子が幼稚園の時、「『ゲゲゲの鬼太郎』のテレビが見たいから習い事を辞めたい」って言い出したことがあって。小さい子だったらよくあることなのに、「あんたがやりたいって言ったから高いユニフォーム買ってまで習わせてるのに!」って、すっごい怒りました。

その事件を「最近ムカついたこと」として必死にブログに書いていたら、その時「自分も習い事いっぱい辞めてきたのに、自分のできてないことを子どもに求めて、勝手やな」って客観視できたんです。

私おかしいな、変わりたいなって。ライターをはじめたのもちょうどその時期でした。

世の中のお母さんは、自分のことをもっと大事にしてもいい気がします。自分勝手でいいくらい。スーパーウーマンにならなくてもいい。

しんどい思いをするなら楽しいことでしんどい思いをしたほうがいいし、結果的に子どももしっかりしてきますよ。少なくとも私の場合はそうでした。


一番やりたいことのために、チャンスはつかみにいく

――これからどんなお仕事をしてみたいですか?
浜田:やっぱり、本を作ってみたいですね。そう思うと、ゴーストライター的なポジションではなく、ポートフォリオになる仕事――つまり、ちゃんと自分の名前が載る仕事もやってみたいです。

前田高志さんが「浜田さんは僕のゴーストライターをしてくれているけど、もう名前出しなよ」って言ってくれたんです。それで、アイリメーカーの板垣雄吾さんには「オープンゴーストライター」なんて呼んでいただいています(笑)。

出版社や編プロにいたわけじゃないので、本を作るのはなかなか厳しいとは思っています。でも諦めてない。チャンスがあったらどんどん挑戦します。

誰かに本を作ってもらう立場になった時に、「この人に任せたい」って思うのは、やっぱりいつでも取材に来れるとか、この人に作らせたら売れるっていうメリットのある人。

今の私にはそういうメリットは少ない。そこはシビアにわかっているつもりです。

「オンラインサロンで、いつも異様にいい本作るよね」とか「異様に売るよね」と言われるくらいやり続けていたら、チャンスがあるかもしれない。だからもう、諦めずにどんどんやるしかないですね。


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テキスト:イノウエカズオ今井慎也古奈正貴月白イオリ奥村佳奈子
編集:佐伯美香
写真:永田謙一郎
バナーデザイン:惣島厚

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