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「自分は何者か」を問い続けた人には勝てない

※この記事は1月19日に静岡県立大学で行われた講演会『時代の読み方』(主催:COCOA)の内容をまとめたものです。

*前回の記事はこちら

圧倒的思考量で自分と向き合う

箕輪さんが就職活動をしていた頃と今とでは、ルールが変わったと言います。

「一昔前は自分らしさが許容されるような世の中じゃなくって、もうレールが決まっていた。このレールだったら乗れるなって思うことが就活という面においては圧倒的に正しい考え方だった。でも、今はあらゆる企業が新たなレールを作らなきゃいけなくなっている世の中で、大企業とか銀行もこのままじゃ潰れる。

レールを作ってくださいっていうことが求められているから、自分が何者なのか、自分にとって“×100になるもの”は何かっていうものを探す。時代が変わっているにもかかわらず、今でも昔の就活生みたいに会社とかレールに合わせようとしてしまうと結構ヤバいことになる」

自分が何者なのかを言語化するには思考量が問われる、と箕輪さん。

「就職浪人してから暇だから、毎日3時間くらい喫茶店に行ってずっと書いてた。自分が何者か。なぜその会社なのか。自問自答して、大量殺人鬼のメモかってくらい雑に書きまくったね。

例えば俺、旅行好きじゃん。旅行会社アリじゃんっていう考えがよぎるんだけど、それって趣味と会社がマッチングしているだけで、本質とはマッチングしてねぇなみたいな。旅行会社の本質は何かっていうと、要は秘書的な仕事。それが悪い仕事っていうんじゃなくて、いかに効率的にチケットを取るだなんだっていうのはインターネットで代替できるし、対面で丁寧に接客してこの人感じがいいなって思われる仕事。俺、旅行は好きだけどその仕事は一番向いてない仕事なのよ。そのミスマッチがある。

ふわっとしている人は旅行好きだから旅行会社ってなっちゃうんだけど、死ぬほど考えてあの仕事の本質って何かなって思うと、真逆だなって気付いたりするんだよね。だから何時間もずっと考えるっていうのは大事」

また、どれだけ自分自身と向き合い、自問自答してきたかが成功の可否を担っているという話も。

「俺は今、起業家の本ばっかりやってたり、ビジネスで若くして名を上げた人と絡む機会が多いんだけど、共通点としては強烈に学生時代とかに自分と向き合っている人が多いですね。NewsPicksの編集長、佐々木(紀彦)さんも僕と同じで就職浪人していて、彼は優秀な人なんで僕みたいに沖縄の会社じゃなくてゴールドマン・サックスに内定してたんですけど。

そこで内定者として働いてて、俺ってこのお金が上がったり下がったりする数字を操るの全く楽しくないって思って内定辞退した。で、就職浪人しているときに海外行ったり、読書したりして自分は本当に何がやりたいのかって向き合ったって言っていた。そういうものを経た人は強いよね。仕事ができるかどうかじゃなくて『俺はこの道を進む』って思っている人は強い。

殴り合いになってもすぐに倒れないっていうか、倒れてももう一回立ち上がれるみたいな。だから学生みたいな時間があるときに、それを死ぬほど考えるっていうのはめちゃくちゃ大事だなとは思いますね」

自分の本質は、原体験に眠っている

自分自身と向き合うときに立てるべき問いは「自分が何者か」「何をやりたいか」「なぜその会社なのか」(「どう生きていくか」)の3つだと言います。

自分が何者かっていうところは、原体験的なものを拾っていく作業。あのとき超嬉しかったわとか、友だちにこう言われたら自分が一番嬉しいとか。一番モチベーションが上がるポイントは何かっていうのを考えまくる。

俺は最初の就活でサークルのリーダーだったって言ってたんだけど、一回もリーダーみたいなことやってない。手ぶらで合宿とか行ってたけど、みんなが何か持ってきてくれるみたいな。じゃあ、何で俺はそんないい加減なやつなのにみんなが支えてくれていたかっていうと、箕輪がいたほうが場が面白いよねみたいな感じだと思うの。

それを高校とか中学まで遡ると、うちのサッカー部って2、30人しかいなかったから監督が気を使ってかわからないんだけど全員に役職を与えたの。キャプテンとか以外にも用具係とか。で、俺はレギュラーで結構うまかったのに、俺だけ役割がなかったの。ありえないでしょ? 

『え、え、俺ないんすか?』って言ったら、『お前はいいんだよ別に』って言われて。わかんないんだけど、俺はもう“ただいればいい”、“いるだけで面白い”みたいになって、具体的な仕事は何もできないだろうって思われてた。

だから常に具体的には機能しないけど、いることによっていないよりも楽しいっていう存在で、これは雑誌とかテレビとかと同じだっていうのをそういうふうに発見していくわけよ。

自分は別にリーダーでもなんでもないけど、人が困ってる時に気がついてちょっとサポートするのが好きだなとか、自分がどんな人間かっていうのはそうやって探っていく。それで何者かっていうのがわかって、次に何をやっていきたいかっていうのが明確になる」

そして、自分が何者なのかを言語化出来たら、それが社会とどう紐づくのか、ひたすら壁打ちをすることが重要だと言います。

「楽しい存在、つまりふざけさせるとか面白くするっていうことだけど、難しいのはその解釈が広いこと。例えば、東芝に行って面白い商品が作れないかって言ったら、できなくもないと思うんですよ。

ただ、まあ無理でしょうね。多分東芝では面白いっていう価値観が別にそんなに優先されてないだろうから。相当偉くなってから実は面白いことやりたかったんだって言って面白い商品を出すしかない。1年目から面白さを求めてたらそれは自己満足だから。

それでいうと本当にやっぱりエンターテインメントしかありえない。でもディズニーランドとか無理じゃないですか。与沢翼とかネオヒルズ族連れてきて『金儲け最高!』みたいなのはディズニーランドではできないからオリエンタルランドには行けないとか。テレビ局でもNHKには行けないとか。そうやって自分と社会とをずっと壁打ちしてくって感じですよね」


(次回に続きます)

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テキスト・編集 / 石川遼篠原舞

写真 池田実加


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