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編集とは何か?テーマを見つける

ボイスメディア「Voicy」で2019年10月6日に放送された箕輪厚介さんの「ミノトーーク! 編集とは何か 〜テーマを見つける〜」の内容をテキストでお届けします。


仕切り直しの湯上がりトーク

どうも、箕輪です。
今は、目黒駅の高松湯っていう銭湯の向かいの居酒屋で、一人でビール飲んでます。

本当は昨日、Voicyで編集とは何かっていう話をしようとしたら、僕の子どもが来て、「前田さんが、実はメモをとってないで目をとってる!」って言い出してVoicyどころじゃなくなったので、あらためて今日、編集とは何かについて話します。

編集は彫刻だ

編集って、「彫刻を彫る」みたいなイメージです。
彫刻する時ってまず作品のイメージがあって、そのイメージに近付けるように彫っていくと思うんですけど、その作業に近いです。

人に付いている余分な情報や社会性っていう贅肉的なものを一つひとつ剥がしていって、そもそもあるべき「ありのままの姿」を露わにしていくイメージです。

世間から僕は、売れるようなテーマを見つけて分かりやすいキャッチコピーを付けて、売れそうなプロモーションを仕掛けて、バズらせて、「はい、ベストセラー。売れてよかったね。」ってやってるみたいに捉えられていることが多い気がするんですけど、実は真逆です。とにかく売りましょうっていうことは、一切考えません。

まず、著者のありのまま、本来の姿は何かっていうのを見つけます。その姿を理解しやすくするために、導線としてキャッチフレーズを付けたりデザインの力を借りたりしますが、基本的には本来の姿が一番大事だと思っています。

僕は、本質を探る作業にほとんどの時間や意識を費やしていますね。

テーマをみつける~塩田元規さんの場合~

例えば、塩田元規さんの本『ハートドリブン』でいうと、最初、この本はエンタメ企業アカツキの社長からの「これから遊びが重要な時代だ」というメッセージをコンセプトにしようと考えられていました。

でも、僕はそれにとらわれず、まず塩田さんと雑談をしました。

雑談では、「こう書いたらいいと思いますよ」とか「今の売れ線は」とかは絶対に言いません。ただ、ふわふわ、スマホとかいじりながら喋るんです。周りを回遊しているみたいな感じで。

それを繰り返すうちに、「遊びが仕事」みたいなテーマって、主語が最近の人だったら誰でもいい、ありがちなテーマだと気が付いたんです。

雑談を繰り返すうちに、塩田さんの口から「魂が」「内側の進化が」というワードが出てきて、そこで僕のアンテナが反応しました。やっと、オリジナリティが見えた。何にも染まってない「その人だけのカラー」が垣間見えたな、と思って。

塩田さんにその部分の話を振っていくと、やっぱりノッてくるわけです。要は、どこかであるような話をしている時と、自分の中身を切開してそこからドロリと何かが出るような感覚って違うんですね。ここが塩田さんにとっての核であり、切ったら血が出るようなところだ、と確信して、テーマが決まりました。

その人の突き抜けた部分が世界と共鳴する

固有の価値があるものって、絶対に今の世の中との接点があるんです。誰かの真似だったり二番煎じだったり、表面だけ取り繕ったものは演出を過剰にして嘘をつかないと新しく見えません。
でも、完全に固有なものは、マーケットの大小にかかわらず今の時代と接続する接点を持っています。

大きな流れとして、「ロジカルなもののコモディティ化」があります。
思考やデータ、数字などは、圧倒的な材料としては機能しますが、 材料の伝わるスピードや精度が高まりすぎたことによって、それがあることが前提になってしまいました。
昔は一部の人にしか手に入らなかった情報やデータがあったので、それをフックにして「データドリブン」で勝負するのはすごく理に適っていたんです。でも、データだけでは勝負できない時代になって、データや数字だけだとみんな行き着くところは同じだと気付いたんですよね。

一方で、人知れずただただ気が狂ったみたいに一つのことをやりまくって、「もううるさい! データとか関係ないけど、俺はこれが好きなんだ!」みたいな人の行き着くところが超ユニークで、ああアリだね、と認められる時代になっている気がします。

そんなふうに、データ的な数字の世界とハートドリブン的な世界を上手い具合に混ぜる打ち手が、今のこの時代において新しいと感じますね。

あえて軽薄な言葉でいうと、「ビジネストレンドとしてキテるな」って思ったんです。 これって面白くて、恣意的にビジネストレンドを起こそうとすると、絶対新しいと思われないんです。売れそうなビジネス書のテーマ何だろう、って考えて作っても絶対ズバッときません。

でも、目の前の一人の固有性を、彫刻を彫るように余計な社会性や取り繕いを削って削って、その人の一番気が狂った場所とか一番イッちゃってる場所を出した時に、めちゃめちゃ今っぽいものになるんです。

テーマをみつける~青木真也さんの場合~

青木真也さんの『空気を読んではいけない』(幻冬社)っていう本が3万部以上のベストセラーだったんですけど、これは結構あり得ないことなんです。格闘技ブームでもないし、「青木が本出したら絶対買うぜ」っていう読者がいるわけでもない中で、そこまで売れました。

その時の本の作り方も、さっきの話と全く同じでした。
青木さんとはよく二人でサウナへ行く仲だったんですけど、本出したいって言ってきて。でも僕は、自分の好きな著者の本作って売れないのはある種の遊びだと思っているので、青木さんの本かー、と渋っていたんですよ。

それから、二人でサウナや水風呂で話していた時に、青木さんが突然、「箕輪さんって友達っているんすか」って聞いてきたんです。

いや普通にいるでしょ、って答えたんですけど、青木さんが真顔で、「僕一人もいないですけどね」って返してきたんです。「僕ほぼ一回も人とご飯食べたことないんすよね」って。

え、練習の後とか食べないの?って言ったら、「他の人とか食べてるんすけど、俺そういうのまじで嫌なんで、もうここで失礼しますって言って帰る」って話してきて。でも試合の後とか、スタッフと、怪我とかなかったら食べないの?って聞いたら、「いやもうソッコーで家帰って、iPadでずっとエゴサしてます」とか言ってて。あ、こいつ、結構きてんなって思ったんですよ。

聞くと、小学校の時から友達がいないとか、小学校の時は、壁に向かって給食を一人で食べさせられてたとか、大学の柔道部で先輩の手をわざと踏みつけたり絞め落としたりしてたとか。最近も地元で昔の友達にサインくれって言われて、仲良くもないのにサインくれって言われてムカついたから縁切りしたみたいな話をしてきて。「毎年一回縁切るんすよ、人間関係うざいから」って。

その瞬間に、さっきでいう塩田さんのハートドリブン的な発想が見つかったのと同じで、「彼のありのまま、あったな」って感じました。

格闘家として強いとか、寝技が美しいとか、そういう余計なものを全部削ぎ落した結果に現れる固有の人間性が見えたんです。

ママ友・通勤ラッシュ。 日常で覚えていた違和感と繋がる瞬間

その時ちょうど「ママ友問題」みたいなものを思い出しました。幼稚園の送り迎えでビニール傘を持って行ったら変な目で見られるとか、みんなに合わせてランチに行かなきゃいけないとか、そういう話を妻から聞いていました。

僕はその頃タワマンの横にある超ボロボロのマンションに住んでいたんですけど、幼稚園に送りに行くと、すごいんですよ。パパはスーツ着て胸ポケットにチーフとか入れてショーンKみたいな感じで、ママもバチッとキメていて。

この、異様に周りの目を気にする感じ、「すごいなこいつら」って思って。「完全に嘘でしょ」みたいな違和感を覚えていました。編集者としての引き出しになるので、そういう違和感の気付きは大切にしていて。

それでさっきの青木さんの話を聞いて、「今すぐこのまま青木さんをタクシーに乗っけて、あのタワマンの送り迎えのとこにブチ込みたい!」って思ったんですよね。これはテーマになるなと。

みんなやりたくもないのに、空気を読み合っている。
だから青木さんみたいにある種異常な奴が、「友達なんて要らない」とか「縁なんて切れ」とか「先輩だって絞め落とせ」みたいなことを言ったら、そこそこ面白いんじゃないの?って思ったんです。

これがさっき言った、「固有のものを見つけると、どこかしら“時代の集団的無意識”に接続できる」ということです。

あと、同時に思い出したのが品川駅港南口の光景でした。朝、人がすごいんですよ。雪崩のようにサラリーマンが駅から出口まで歩いていて。
一人ひとりは普通に生きているのに、絵として、家畜がザーっと歩いているように見えてしまうのが異様だなと思っていたんですよね。

あのスーツを着て下を向いて歩いている人たちのど真ん中に、青木さんを格闘技パンツ一枚で立たせて写真を撮って、『空気を読んではいけない』というタイトルにしたら面白いんじゃないかと思って企画したんです。

そうしたら、3万部くらい売れる本になっていました。

「盛るより彫る」 その先にヒットが生まれる

そういうことで、テーマというのは、その人のありのままを彫刻を彫るようにして繰り返して見つけるって感じなんです。

それが見つかった時、みんながなんとなく違和感を覚えているが言語化しきれてない何かとぶつかって、それを本にすると、「ああ、これ読みたかったんだ」と読者が感じるものが生まれるんです。

だから、フォロワーが多かろうが本当にみんなが興味のあるテーマじゃなかったらバズりません。どんなに小手先で盛ったり編集したりしても、本当に興味のあるテーマにはたどり着けないんです。

必死に目の前のその素材を彫って彫って彫りまくる。だから僕「盛るより彫る」って言うんですけど、彫りまくって無駄なものが一切削ぎ落とされた時にあらわになるその姿を世間にぶつけると、「みんながモヤッと思ってたけど言語化しきれてなかった何か」にぶつかってバズるんですよ。で、売れるんです。

っていうのが、「編集とは何か?」の、もう本当に100個あるうちの一つですね。

***

この内容を音声で聞きたい方はこちらから。
https://voicy.jp/channel/946/57661

写真:大竹大也
書き起こし:大西志帆大村祐介帆足 和美
編集:大西志帆

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『多動力』を始めとするヒット作を多く手がける、幻冬舎 箕輪厚介が運営するサロンの公式note。箕輪編集室→https://camp-fire.jp/projects/view/34264 箕輪厚介の会社→https://naminoueshoten.com/

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