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前田裕二著『メモの魔力』の魅力とは?担当編集者・箕輪厚介に聞いた

本日発売する前田裕二さんの著書『メモの魔力』
予約の段階からAmazon総合ランキング1位、その反響を受けて重版するも、店頭では売り切れ続出。年末年始は入手困難になる見通しだ。

前田さんにとって、一体メモとは何なのか。『メモの魔力』はどのような本なのか。
編集を担当した箕輪厚介さんに聞いた。

「具体・抽象・転用」を繰り返す、前田裕二のメモ術

前田さんのメモ術を本にしようと思ったのは、実は『人生の勝算』を作っていた時。一番最初の取材でいろんなエピソードを聞いて、すごい人だなと思ったんだけど、その中で一番衝撃を受けたのがメモの話。それだけで1冊作れるほど濃い内容だったから、中途半端に『人生の勝算』に入れるとテーマがブレてしまうと思ったので、別で本を作ろうと決めていた。

前田さんは、すべての物事をメモして、それを抽象化・転用している。例えば、「洋服の裏地が派手だった」ということも、「人が見ないところが派手なだけでも、めちゃくちゃ印象に残る」と抽象化してメモをする。そして、「SHOWROOMのホームページやアプリの普段人が見ないような場所にもあえてこだわってみよう」というように転用する。

このように、あらゆる具体的なエピソードを抽象化し、明日からできるアクションに転用をすることを繰り返すだけで、ビジネスはもちろん、人生という長い目で見ても、有効な思考法となる。

前田さんは「目に入る全ての物事を抽象化してしまうから、電車に乗ると情報量が多すぎて頭が爆発しそうになる」と言うくらい、この具体・抽象・転用をものすごい量とスピードで繰り返している。そしてそれが嘘ではないと分かるほど、一日中メモをとっている。

前田さんと一緒に舞台を観に行った時もずっとパンフレットに何かをメモしていて。隣で舞台を見ていて集中できないくらいだったんだよね。舞台が終わって「何を書いてたんですか?」と聞いたら、「これです」と言って見せてくれたメモが、まさに狂気だった。

パンフレットの至るところにその舞台の印象に残ったところや気づきをメモしていた。その舞台は見城さん(株式会社幻冬舎 代表取締役社長 )がプロデュースしていたから、前田さんは見城さんに「感動したところは10個ありました」とメモを元にした長文の感想を送ったんだよね。そしたら、あれだけ普段「熱狂しろ!」って言っている見城さんから「君は、冷静に狂ってるね」って言われていた。

その1年ぐらい後に、前田さんと同日に舞台を観に行った幻冬舎の社員から「前田さんの隣の席だったんだけど、ずっと何かをメモってて、すごかったよ」という報告を受けた。

それぐらい前田さんは、常に異常なぐらいにメモを取ってる。だから、やっぱり本にしたいなと思っていた。

『メモの魔力』は生き方の本

僕は編集者として、自己分析はこれから大きなテーマになると思ってる。連日のように講演会で「自分とは何者か」という話をしていると、必ずと言っていいほど「箕輪さんのようにやりたいことがないんですけど、どうしたらいいですか?」と聞かれる。

毎回のように聞かれるので、それは大きなテーマなんだろうなと思っている。その問いに答えるために一番有効なのは、自己分析。「自分とは何者か」という問いを、自分に対して投げ続けること。

『メモの魔力』には、巻末に自分を知るための自己分析1000問が収録されている。自己分析を、ただ就活の儀式としてやるんじゃなくて、自分の人生のテーマを見つける手段としてやった方がいいのではないかと思ってる。

例えば「人生で一番辛かったのは、いつですか?」というような質問に対して「大学受験に落ちた時です」を書いたとする。ここで終わるのではなく、「なぜそのように感じたのか」ということをより深堀りして、言語化していく。

友達に笑われたのが辛かったのか、努力が報われなかったことが辛かったのか。

もし「努力が報われなかったのが辛かった」のであれば、それを抽象化すると「自分は、努力と比例する結果が出ると、モチベーションが上がる」となる。それを転用すると、「労働時間を割けば割くほど結果が出るような、営業の仕事が向いている」とか、「寝食忘れて没頭できるような外資系金融の仕事が向いてるんじゃないか」とか見えてくる。そうしたら「その業界を研究してみよう」とか「OB訪問をしてみよう」という行動にもつながってくる。

また、「友達に笑われたことが辛い」のであれば、それを抽象化すると、「自分は人の目を気にする性格だ」と分かる。それを転用すると、「頑張れば頑張るほど褒められたり、社会的に注目されたりする仕事が向いてるんじゃないか」ってなる。それなら「編集者とか、人の注目を浴びる仕事が向いてる」と知ることができる。

このように、たった1問でも「具体・抽象・転用」をするだけで、自分のことを深く知ることができる。巻末には1,000問用意してあるけれども、100問やるだけでも、自分とはどういう人間か分かってくる。

どうして自己分析が大事なのかというと、自分で自分のことが分かっていると、人生のいろんな選択の場面で迷わないし、ある種の安心感を得ることもできるから。それがすごく強い。

前田さんが書いた本だと言うと「ビジネスでのアイデアの出し方」とか「プレゼン力を上げる」とか、そういう内容だと思われるかもしれないけど、『メモの魔力』は「自分は何をするべきか」「何のために生きるべきか」、究極的に自分と向き合うことができる、生き方の本になっている。ビジネスパーソンだけでなく、自分と向き合い、思考し、現実を変えたい全ての人にとって武器となる本だと思っている。

それに、あの狂介さんも注目しているくらいだから、手に取ってみる価値はあると思うよ。

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テキスト:塩谷麻友
編集:塩谷麻友 篠原舞
写真:森川亮太

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