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無邪気なクリエイティブ集団が、"才能"と"社会"とのハブになる

※この記事は1月19日に静岡県立大学で行われた講演会『時代の読み方』(主催:COCOA)の内容をまとめたものです。

*前回の記事はこちら

仕事をエンタメ化した人から活躍する

オンラインサロンとは、会員に月額をもらいながら箕輪さんと一緒に仕事やサークル活動をするといった、コミュニティのことです。その価値とはどのようなものなのでしょうか?

「オンラインサロン論でいうと、結局ただレールに乗ってる仕事って価値がなくなってきていて、楽しい仕事とか自分がやっててやりがいとか生きがいを感じるような仕事はむしろエンターテイメントになっていくんですよね。箕輪編集室でやってるような、普段絶対会えない人の記事を作るとかその人たちのコミュニティをデザインする仕事っていうのは、いわゆる仕事としてやってる人が今までいたけど実はエンターテイメントみたいなもので。

エンターテイメントだと思ってやってる人の方がいいクリエイティブを生み出す。まあホリエモンとかがずっと昔から言ってた、「遊びが仕事になる時代」っていうのがまさにそうで。遊びみたいな仕事がいっぱい増えていて、遊びのようにやる人たちが活躍する時代になってるなって。

箕輪編集室の指針として、「圧倒的なコンテンツを創る」「コミュニティをプロデュースする」「やばい奴をプロデュースする」というものがあります。

実際、箕輪編集室にはオンラインサロンのプロデュース依頼が続々と舞い込んできています。

「オンラインサロンのプロデュースなんて、時代の狭間の仕事なんですよ。そんなの請け負っている会社って日本中に一個もなくて、だから時代の最先端なんですよ。でもそれって会社組織でやろうとすると難しい。『オンラインサロン今流行ってるらしいから、お前ら勉強しろ。オンラインサロンの部署を作るぞ』ってさっきまで紙の本を編集してたおっさんの編集者がやり始めても、多分センスすげー悪いですよ。

でも箕輪編集室ならオンラインサロンはこういうものだって説明する必要もないし、だいたいの概念が分かっているから『プロデュースするぞ』って言ったら一瞬で価値観が浸透して実装し始めるんですよ。だから俺がやることは、異常なまでにガーってやって価値観を浸透させて、最初の仕組みだけワーワー言って作ること。そうすればあとはみんな分かって勝手にやってくれる。凄いクリエイティブな集団になっていくんだろうな。

俺が出版社に所属しながらオンラインサロンやって、デジタルとアナログの両方をやっているから分かるけど、出版社はうちに勝てないだろうなと思います。ただ出版社は流通だとかアナログな資産をめちゃくちゃ持っている。書店流通とか取次とのパイプがあるとか。

今後の流れとしては、オンラインサロンは遊んでんだか働いてんだかわからない無邪気なクリエイティブ集団が、アナログな出版社とか企業と組んでやっていく風になるんじゃないかなって思う」


時代にそぐわない編集は、才能を殺す

「やばい奴をプロデュースする」ということについては、『空気を読んではいけない』の格闘家・青木真也さんを例に挙げています。

「彼は試合で相手の骨を折ったりするわけですよ。中指立てたりしてめちゃくちゃ問題児なんだけど、それがスポーツ雑誌のインタビューとかだと、『試合だと思ってやったら負ける。殺し合いだと思ってやらないといけない。それぐらいの覚悟がないといけない』って言ってる。

だけど、実際彼に聞いたら、本当これヤバい話なんだけど、中学生のとき柔道で相手選手の骨を折ったときにものすごい興奮した、と。それ以来骨を折るのがある種快感になっているから、普通に骨折りたいと思って仕事してるわけですよ。俺の骨だけは折らないでくれよって思うんだけど、そういうヤバい話を聞くと、それが一種の才能だなと。善悪とは関係ない、才能というか異物ですよね。

うちの社長の見城さんが“原色”と“オリジナル”って話をよくするんだけど。赤でも緑でも黄色でも原色ってあるじゃないですか、混ぜてピンクとかはあるけど決まった原色っていうのがあって。お前が見たことない原色があるぞって言われたら地の底まで見に行くっていう。

その表現に近くて、俺が探しているのは全く聞いたことも感じたこともない、善悪とか関係ないそいつの異物感。でも、青木真也が骨折るのが好きですって言って『骨折る技術』みたいな本出したら、まあ2,000部しか売れないヤバい本になるだけなんですよ。俺はそんな自己満足な編集をやりたいわけではないから、社会との文脈を作るということをやる。

青木と一緒に話してて、彼はそんな人間だから、友達もいないし、人とご飯も行かないんですね。そういう話をしてたときに俺の奥さんから、ママ友同士の嫉妬とか何だとかの愚痴をずっと聞いてたの。かたや、青木と話すと人と関わったことがなくて骨折るのが好きみたいな。そうなったときに世間と異物じゃないですか。

俺はこの異物を世間にぶち込みたい、人と関わる必要なんてないんだぞと。人付き合いがしんどい、合わせなきゃいけないのがしんどいっていう人にこの青木のヤバさをぶつけたときに『あ、人生なんて何でもありなんじゃん』って思ってくれたらこれは格闘技選手の本ではなくて一個の人生論として成立するなって思って。

そのとき品川の港南に住んでたんですけど、品川駅のコンコースって、本当に家畜のようにサラリーマンがドバーッと歩いてるんです。そいつらの顔見て『まじでヤバい、ゾンビの集団だ』って毎日思ってたのを思い出して、あのところに逆方向ど真ん中に青木を格闘技パンツ一枚で立たせたら、俺が感じてる社会と青木の異物感が完璧に表現できるんじゃないかと。


それで、タイトルを『空気を読んではいけない』にして、中身が人と食事に行く必要はないとか、上司でも刺し違える覚悟を持てとかやったら一種の人生論として時代に突き刺さるものになるんじゃないかなって思ってやったの。だから俺のプロデュースとか編集っていうものは、異常な人間を見つけてそれと社会との文脈を考えて出すこと。

圧倒的なコンテンツやそういうヤバい奴をプロデュースするっていうのは、オンラインサロンがどうというよりも俺の仕事のやり方で、それができるのはうちしかいない。出版社でもできるんだけど、時代にあってるかっていうとぶっちゃけそれ紙の本でやる必要あんのとか、色々今出てくるんですよ。

青木でいうと、彼のオンラインサロンもプロデュースしたし、noteもプロデュースしたし、一時期全方位で彼をプロデュースしてた。彼の韓国の試合のセコンドまでやって『ラスト30!』とか言ってやってたぐらい、トータルプロデュースしてた。

昔は紙(媒体)かテレビ出るぐらいしかなかったけど、今はネットやイベントとかあらゆるアウトプットの方法があるから、時代に合ってない出版社の編集者っていう枠組みになると、才能を幸せにできない。そうなると、箕輪編集室みたいなとこじゃないと対応しきれないですよね。

要は、青木さんがオンラインサロンやったほうがいいなって言っても『いや、僕副業禁止で紙の本の編集者なんですよ』って言ったらその時点でアウトなんで。そういう意味かな」

(次回に続きます)

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テキスト・編集 / 橘田佐樹篠原舞

写真 池田実加

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