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【日刊みの編NEWS】『大好きになり、ハマり出したら終わりがない』というヘンテコな超短編小説を書いてみた

おはようございます。箕輪編集室運営担当のトムさん(村田敏也)です。
11月13日 (金)の日刊みの編NEWSをお伝えします。

先日、箕輪さんの呟きを見つけました。「サウナとスニーカーとワインとアートって、どんな関係があるのだろうか?」 と思いを巡らしていました。

と思っていたら、「ハマり出したら終わりがない」という話がありました。

そういや、高校生の頃から、いろんなヘンテコなものにハマってしまう病癖が続いている。今日は、また、ヘンテコな超短編小説(第3弾)を飽きもせずに書いてみました。最後まで読んでもらえれば喜びます。

『大好きになり、ハマり出したら終わりがない』

1970年代の大阪、通称ミナミに「アメリカ村」が生まれ、古着屋ができた。アメリカ好きの高校生のぼくは、貯めたお金を握りしめて、「アメリカ村」の古着屋によく行った。

大好きな古着屋は「Our House」というアメリカから古着を直輸入している店だった。当時は、個人がアメリカへ古着や雑貨を買い付けに行き、家賃の安そうな、もはや使われていない事務所や倉庫などを手作りで改装して店を構えていた。大好きな古着屋「Our House」も、そんなアメリカ村の狭い階段を上がったところの二階にあった。

古着屋に入ると、独特の埃にまみれた匂いがした。ボクは、その匂いが大好きだった。その匂いの向こうにアメリカを感じることができた。「どんな人がこの服を着ていたのだろうか?」と思うこともあったが、それ以上にぼくは「どんなところで買い付けをするのだろうか?」と考えたものだ。

それから数十年が経ち、アメリカのニュージャージーで生活をすることになった。そこには、その疑問のひとつの答えがあった。

アメリカには「ガレージセール」、そして、あまり日本ではなじみの少ない「タグセール」や「エステートセール」というものがあることを知った。よく無料のローカル新聞の片隅に「エステートセール」という広告が載っていたので、その言葉には気づいてはいたのだが、初めは何のことか全くわからなくて特に気に留めることもなかった。

ところが、「エステートセールやります」という日時と住所だけの広告、いつしか、それが、週末の楽しみになった。

ローカルの無料新聞が配達された日に「エステートセールやります」というたった2,3行の広告を必死に探して、「アトラス」地図に、エステートセールの住所をマーキングするのだ。Google Mapなんていう便利なものはなかった時代だ。

そう、アメリカのグローサリーショップで買った地図帳のタイトルは「アトラス」だった。

アメリカでは、地図帳が、なぜ「アトラス」と呼ばれるのかを調べてみた。1569年、航海用の正角円筒図法「メルカトル図法」を発明したことで知られるオランダ人、ゲルハルト=クレメール(ゲルハルドウス=メルカトル)が、探検家や商人などからの情報をもとに世界地図を制作した。そして彼の死後、息子のルモルドが「アトラス」と名付けられた地図帳を完成させたらしい。その地図帳の大扉には、ギリシア神話の神「アトラス」が描かれていた。アトラスとは、天地を支え、世界の隅々まで見渡すことができるギリシア神話の神らしい。それ以降、地図帳のことを「アトラス」と呼ぶようになったらしい。言葉の由来は、なぜか浪漫を感じるものだ。

アトラス

(未だに家にある1994年のATLAS地図)

さて、話を「エステートセール」にもどそう。「エステートセール」とは、なんだかの理由で家を処分する時に、専門の業者が、家の中のあらゆる品物全てに値付け(タグつけ)して売りに出すものだ。「タグセール」とも呼ばれる。つまり、専門の業者にお願いして、ガレージセールをそのまま家の中に取り込んだ感じだ。調べてみると、「エステートセール」は1970年頃からアメリカで一般的になった生前遺品整理の方法でもあるらしい。

古着や1950年代の家具が大好きなボクは、エステートセールのある週末の早朝に1988年製のJeep のGrand Wagoneerを走らせた。この車のボディサイドには木目調のデザインが施され、1962年に登場してから大きなモデルチェンジを行うことなく1991年まで製造されたアメリカを代表する車で、大きな荷物も楽々と運べる車だ。

目的の家につくと、ディラーかアンティーク業者のバイヤーらしき人が、すでに並んでいた。そして、家の玄関のドアが開くと、みんな一斉に「ノロノロ」と自分の目当ての品を、探し出す。走り出すのではなく、あくまでも「ノロノロ」とだ。このスピード感が、大好きだった。

ある人は地下室へ、ある人はクローゼットへ、ノロノロと直行する。

ボクは、まずリビングで家具を物色する。時折、1950年代のハーマンミラー社のチャールズ・イームスやジョージ・ネルソンがデザインしたモダンデザインファーニチャーに格安の値段で出会うことがある。オークションでは数千ドルの値がついているものが、数百ドルで買えることもあった。勿論、その価値を知った業者はタグに高値をつけているが、当時はその価値を知らない業者もかなりいた。

次に向かうのは、クローゼットの引き出しやボックス。1950年代のハワイ製やカリフォルニア製のアロハシャツが家族分お揃いで見つかるときもある。当時のアロハシャツは観光のお土産でもある。「この家族は、みんなでハワイ旅行したのだろうか、果たして飛行機か、クルーズ船で行ったのだろか?」と思いを巡らせる。リーバイスの「e」が大文字、通称「ビッグE」と呼ばれる501や502のデッドストックさえ見つかることがあった。

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(エステートセールでの勝利品を着た少女。約20年前、アメリカにて)

地下室に行けば、空気が抜けて、タイヤがフラットになったシカゴ製の自転車が埃にまみれているときがある。大好きなSchwinnの自転車である。ビーチクルーザーのような自転車、椅子がバナナシートになったようなものもある。家族4人分の自転車は、すべてこの「エステートセール」で見つけた。

こんなお宝さがしを毎週やっていると、アメリカの家の中は、倉庫のように物で溢れ、いざ日本に帰るときは、それだけでコンテナを仕立てる羽目になった。もう、お気づきだろう。そう、日本の家はアメリカより狭く、このままだと荷物が入り切らないので、ゼロから建築士と物置を中心とした自宅を設計することになった。

そう、次から次とハマり出したら終わらない。

今でも、あちこちのフリーマーケットやバザーに出向いて、古い日本の民藝品や昭和時代の食器を集めたりしている。先日は、奈良円成寺の名前が入った、大日如来のお面が家にやってきた。こうやって、我が家は、さらに物で溢れかえっている。

ハマり出したら終わりがないのだ。

さて、あなたは箕輪編集室で何にハマってしまったのだろうか、また、これからどんなことにハマってしまうのだろうか?

箕輪編集室で、何か自分の好きにハマることができたら、それは最高じゃないか。


テキスト / トムさん(村田 敏也)

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