時代の先端へ。いま求められる「PL脳」からの脱却 朝倉祐介著『ファイナンス思考』 #熱狂書評
朝倉祐介さん著『ファイナンス思考』が発売されて、もうすぐ一週間が経とうとしています。
こちらの記事の通り、みの編と関わりが深い一冊なんです。そんな本書を、みの編メンバーが続々と手にしています。
「ファイナンス思考」という聞き慣れない言葉。ファイナンスという言葉を見てアレルギーを起こしてしまう人もいるかもしれませんが、実は私たち個人に関係する言葉でもあるんです。
企業と人、これらは多くの共通項をもっています。前回の熱狂書評では、このことを恋愛に例えて解説しました。
そして今回紹介する書評も、個人の視点で見た「ファイナンス思考」についてです。
ライフワークとライスワークの違いとは。
PL脳を脱却した人生はどうなるのか。
そうした視点で語るのは、箕輪編集室メンバー荒木利彦さん。丁寧な筆致で綴られた熱狂書評をご覧ください。
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あなたに甘美なライフワークを
「ファイナンス思考」という本書特有の言葉。まずは、この言葉ができた経緯から解説します。それは、
・日本からアマゾンのように大きくスケール(成長)する企業が輩出されないのはなぜか
・なぜバブル崩壊以降、先進的な技術や優秀で勤勉な人材を抱えているはずの日本企業が、総じて停滞してしまっているのか
・どうすれば、日本から真に社会的インパクトを発揮する企業や新産業を創出することができるのか
という問題意識からです。これらの問題は、目先の売上や利益を最大化することを目的視する短絡的な思考態度によってもたらされたと、朝倉さんは考えています。
そういった思考態度は「PL脳」と名付けられていて、それに相対する長期的な視点で見る思考態度を「ファイナンス思考」と言います。
「個人」にみるファイナンス思考
高度経済成長期のように直線的に発展していく予測可能な社会において有効だったPL脳。一方で現在は、生活に必要なものは全て手に入ってしまった成熟社会です。そうした21世紀型の経済環境においては、PL脳では正しい舵取りはできないと本書では看破しています。
そこで、新たな環境に適応するために「ファイナンス思考」が必要になってくるのです。
自身の周りのお金について考えてみます。個人の資産は、貯金・株式・持ち家・パソコン・スマホなどです。負債は、住宅ローン・奨学金など。売上げは給与・アルバイト代で、費用は家賃・食費・被服費・水道光熱費・インターネットやスマホの利用料などが挙げられます。
PL脳を患ったままお金を扱っていると、そうした目先のお金にばかり気が取られてしまい、最大の資産である「時間」を無駄遣いしていることがあります。ファイナンス思考を身に付けることでより多くのお金を稼げるようになるのです。
もちろんお金が全てではありませんが、お金で解決できることは山のようにあります。些末な物事に心を奪われるよりも、楽しいことに気を配った方がいいのではないでしょうか。
ライスワークとライフワーク
目先の損益計算書(PL)の数値の改善に汲々としすぎるあまり、大きな構想を描き、リスクをとって投資するという積極的な姿勢を欠き、結果として成長に向けた道筋を描くことができていない
個人で考えると、例えば「生活に困りたくないから嫌いな仕事で給料を稼ぐ」ということが、これに当てはまるのではないでしょうか。ライスワークとも言われますね。
定年退職するまで、好きでもない仕事を続ける。いざ定年を迎えると「何をして生活すればいいか分からない」と途方にくれる人も大勢います。
その反面、好きなことを突きつめて仕事にする人も大勢います。ライスワークに対峙する言葉としてライフワークです。
ファイナンス思考とは取りも直さず「態度」や「思想」の問題であり、究極的には「志」の問題である。昭和の残滓ともいうべきこの成功体験に固執するPL脳に引導を渡し、未来を切り拓くのは自分たちであるという気概をもつ一人ひとりが、個々に奮起する必要があるのではないでしょうか。ファイナンス思考を身につけて日本を再興する試みに、皆さんも加わってみませんか?
PL脳を脱して「ファイナンス思考」を身に付けるためには圧倒的な試行が必要です。目先の利益にまどわされず、コツコツと圧倒的な量をこなし、自身の「ファイナンス」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
あなたに甘美なライフワークを。
荒木 利彦
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誰しも目の前には生活があります。それなくして、人生を語ることはできません。しかし、日常にほんの少し「ファイナンス思考」を取り入れるだけで、ライスワークがライフワークに変化してくるかもしれません。
変動し続ける21世紀型の経済社会の中では、PL脳をもった個人も、企業と同様に置いていかれる可能性があります。
本当の「資産」とは何か。それは単にお金を意味するものなのか。自身のPLを、もう一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。
引き続き、このような熱狂書評をお待ちしています! 朝倉さんの言葉を引用したものや一言書評でも、構いません。ぜひ「#熱狂書評」をつけて気軽に呟いてみてください!
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テキスト 荒木利彦
編集 清水翔太