見出し画像

今ある「空気」を壊し、どれだけ裸になれるか

こちらは、5月31日に今井紀明さんをお招きして開催した「次世代の才能を編集する」の書き起こし記事です。

今井さんへの圧倒的敗北感

今井:僕は認定NPO法人「D×P」で、年間1000人くらいの高校中退や不登校の経験がある子たちの支援をやっていて。それを始めたきっかけは、イラクの人質事件から引きこもり、4年間くらい人とまともに話せなかったり、パニック障害になったりした時期が昔あったからなんです。

箕輪:大変ですね。

今井:大変ですねってめっちゃ他人事のように(笑)。

会場:(笑)。

箕輪:いや、僕今井さんに完全に敗北したっていう思いが強かったんですよ。高校生の時常にギリギリを生きている破天荒な自分に酔っている部分があって。断崖絶壁の端のところに片足で立って「死ぬ! 危ない」みたいなくだらないことをやっていたわけよ。

そしたら、ニュースで高校生がイラクにて拘束されたと聞いて負けた! と思った。こいつマジで仕掛けてきやがったって机叩いたもん。

今井:仕掛けてない(笑)。

箕輪:急にやるのずるいよ! って圧倒的敗北感を感じた思い出だけ残っているんだよね。

今井:そんなに鬱憤が溜まっていたの?

箕輪:鬱憤が溜まっていたわけじゃない。けど、「そんなことやるの? 箕輪やべぇな」って思われたくて色々やってたの。でも(今井さんに)圧倒的グローバルのレベルで攻められて、それありかよって思った。

今井:ずるいも何も僕は困りましたからね(笑)。事件後にイギリス歩いてたら、それで声かけられることもあって。

箕輪:今井さんはバズるためにやったわけじゃないでしょ?

今井:それはそうですよ(笑)。あの時はイラクの子どもたちの医療支援のために行った。

箕輪:なんで高校生の時にそれをしようと思ったの?

今井:僕らの世代って高校生だった時に9.11があったじゃないですか? それからすごい海外に興味を持ち始めて、まずお金を貯めようと思って昼飯を抜いたんですよね。

箕輪:それおかしいだろ!(笑)

今井:ガチで関心があったんで。テロによって関係ない人たちが死んでいったことに対して、純粋な怒りとか疑問が湧いてきて。

箕輪:今井さんがすごいのは、そういう人なのに僕みたいな人とちゃんと絡んでくれることだよね。だって、僕そういうピュアなところないですもん。正義感みたいな。

破壊というモチベーション

今井:いや、僕は逆に箕輪さんの仕事とかめちゃくちゃ尊敬していますよ。パワーもらっています。箕輪さんのエネルギーはどこから湧いてくるんですか? 僕の場合は、怒りみたいなものとかがあったからかもしれないですね。

箕輪:破壊だね。僕は窓ガラスを単純に割りたい人なの。パリーンって音を聞いて走って逃げたいだけ。多分今井さんの場合は、割る理由がめっちゃあるでしょ。でも、僕は割る理由ないもん。「ふざけんなよ! 窓ガラス」って思うだけ。

今井:笑える(笑)。僕は怒りみたいなものがすごく強くて、17、18歳の時に海外に渡った。人が亡くなったり、傷ついたり、なんでそういう仕組みになっているんだろうっていう疑問が強くあって、僕は動きまくってた。

箕輪:同級生に同じ問題意識を持っている人いなかったでしょ?

今井:いなかった。だから、誰とも繋がらなくて学校に通わずみたいな。理不尽な理由で亡くなっていく人たちに対して何かできないかってことを常に思ってた。箕輪さんとはだいぶタイプが違うかもしれないですけど。

箕輪:真逆ですよ。僕は、主語が自分じゃなかったことないよ。

今井:箕輪さんは何が面白くて仕事をやっているんですか?

箕輪:世の中を愕然とさせたい。「えー! そっち行くの」みたいな。昨日、あべみかこちゃんっていうAV女優と仕事して。僕のジーパンには落合陽一とメタップス佐藤のサインがあったんだけど、僕はその空気を壊したいと思って内股のところにあべみかこのサインをもらったの。そういうどちらかに傾いている空気をバンって破壊したいだけ。

今井:めっちゃ僕とタイプ違うな。

箕輪:これまで僕は、与沢翼の本とかを出してイロモノだと思われてた。けど、NewsPicks Book編集長になって世の中において一番意識高い人になった。で、今度はそれを破壊したい。

今井:イノベーションみたいなね。新しく変えていきたいというか、常識的なものを変えていきたいっていうことですよね。

箕輪:佐渡島さんが「あいつは失礼だ、非常識だとか言い始めた瞬間、その人ってそれ以上伸びないんだよね」って言ってて。要は、自分が正解と思い始めると周りが失礼に見えるじゃないですか。

スマホいじらないのが正解だと思っている奴は「スマホしまえ、失礼だ」って言う。けど、普通にスマホいじりながら話す世代からしたら、何も思わないじゃないですか。変化するという前提を持っていれば、失礼だという概念は生まれないよね。パンツ一丁で座ってても「そういう世代なんだな」って。

今井:うちの生徒がスマホいじりながら喋ってたとしても、その子の感性というか面白い切り口があったりする。

箕輪:僕が大切にしたいのは、「こんなの嘘だ。そんな常識にはとらわれていないぞ」って言うこと。要は、くだらない常識や思い込みとかを破壊し続けたい。もっとフラットに行こうよと。

今井:例えば、Twitterに(僕の頭に指で作った)銃を当ててる写真を載せたりとか。

箕輪:炎上するかもしれないじゃん。「イラクで殺害された人たちが見たらどう思いますか?」とか言われることはあると思う。それを本当に傷ついている奴から言われるならまだしも、お前らはただそういう空気を作りてぇだけだろって思う。

今井:失礼な態度をとっても、今の10代の子たちって全然予測しない動きをするんですよね。うちの生徒たちは経済的に厳しかったり、親から搾取されたりしてきた子なんですけど、一般的な高校生と比べると起業したいと言う子が多いんですよ。彼らが自分たちで会社を作ろうとしていたり、不登校の子たちを巻き込んでSlackでコミュニティを作ったりとか。

どれほど鎧を脱げるか

箕輪:この前N高で授業して、すごい嬉しかったのが(授業中に)何人か寝てたの。講演会とかだと、みんな僕のことを当然知っているんだけど、だるそうに寝ている奴がいるところにあえて行くことがすごい楽しい。

今井:箕輪さんってなんでそんなふうに思えるんですか? 普通だったら嫌な気分になるじゃないですか。

箕輪:僕は全員犬だと思っているからね。下に見ているという意味じゃなく、僕も今井さんも犬というか動物だと思っている。基本的に動物と人間のグラデーションだと思っているから、動物に近い人ほど好きなんだよね。起業家はちゃんとスーツを着るし、世間体を気にすることもあるけど、剥き出しの源泉の部分がすごいから好きなんだよね。

今井:箕輪さんはいつも本音で生きているもんね。

箕輪:本音で生きないと効率悪いからね。ホリエモンとか見てると、本当にそう思うよ。ホリエモンと対談する時「うっす、ホリエモン」って酒飲みながらすげぇ柄のシャツに裸足でいって、さすがに突っ込まれると思ったの。そしたら何も突っ込まずに「俺も箕輪と同じの飲みたい」って言われて。「突っ込まねぇんだ、この人」ってちょっと酔い冷めたもん。

でも、ドレスコードのあるNewsPicks晩餐会にスーツ着て行ったら、三次会から合流したホリエモンにネクタイを引っ張られて「お前ダセぇ格好してんじゃねぇよ!」って初めて怒られたの。「俺ドレスコードありって招待状に書いてあった時点で行かねぇって返信したよ!」って言っててすげぇ犬だわって思った。

もう剥き出しなんだよね。ちょっとでも違和感を感じると「行かない、やらない、ふざけんな」みたいな。だから、僕はナチュラルボーン変人よりまだまともなのよ。戦略的にできるだけ鎧をまとわないように生きているの。

だから、高校生みたいに完全に真っ裸な奴を見ると「(自分は)ダメだな」って思うし、寝てても嫌にならない。むしろ寝たいのに寝ないっていうのは本当にダメだと思う。

***

テキスト 酒井琢磨

編集 橘田佐樹

写真 山内ノブマサ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?