働く必要がない世界で、どう生きるか
どーもー!箕輪2.0です!
いよいよ本日発売です。
発売前から大反響で既に重版が決まりました。
今回も「まえがき」を公開します。
今までのニューズピックスブックの中で最も骨太ですが、
AIとBIが社会に浸透し、働く必要がなくなった世界で、私たちはどう生きるべきかを、この本を読んで考えていただけたらと思ってます。
これからを生きる人にとって、ベースとなる一冊です。ぜひ読んでください。
AIとBIはいかに人間を変えるのか
まえがき
近年、あちこちで見聞きするようになったテーマにAIとBIがある。
AIとは言うまでもなく人工知能のことで、2016年グーグル社のアルファ碁というAIが世界チャンピオンのイ・セドル氏に4勝1敗と完勝して新聞やテレビで取り上げられ、広く話題になった。
BIは、国民全員に生活できるだけの現金を無条件で給付する「ベーシック・インカム」という制度のことで、2016年にスイスが導入の国民投票を行ったり、2017年にフィンランドが社会実験を始めたりして、こちらも各メディアで広く取り上げられている。
このように現在はAIもBIも世の中の話題に上るようになってきたが、10年前にはまだどちらもほとんど話題にされることはなかった。AIもBIも、ここ数年で急に光が当たるようになったテーマである。
なぜAIとBIがここにきて急に話題を集めるようになったのかというと、2つの理由が考えられる。
1つ目の理由は、ここに書いたようにAIが囲碁で人間の世界チャンピオンに勝ったとか、フィンランドで実際にBIの導入実験が始まったといった話題性のある事実が生まれ、広く報道されるようになったことであろう。
実はAIの研究はすでに50年~60年も前に始まっており、30年ほど前にもちょっとしたブームがあった。しかし、これまでのAIの機能はせいぜい大規模電子計算機、或いは大型電子辞書の域を脱しておらず、とても知能とか頭脳とかと呼べるものではなかった。しかし、近年登場したディープラーニングを駆使したAIは、自ら認識し、自ら学習し、自ら判断を下すことができるレベルの知能を獲得し得たのである。
こうして初めて知能と呼んでも良いレベルの機能を備え、その成果として囲碁という複雑なゲームにおいて人間のチャンピオンを破るという偉業を達成したからこそ、このように広く話題とされているのであろう。
BIの方も歴史は古い。社会の世情と経済を安定させるためには、最下層の人達までを含めた全国民の生活を公的に保障する制度が有効であるというBIの考え方は、200年も前からある。それ以来、政治学、社会経済学の一つの重要なテーマとして議論されてはいたのだが、これまではユートピア的な、即ち実現することが難しい非現実的な制度としてみなされてきていた。
それが近年になって、スイスの国民投票やフィンランドの社会実験という実際の政治的活動が起きたことで、BIが広く社会の関心を呼び、世の中の重要マターとして承認されたのであろう。
このようにAIもBIも近年広く話題に上るようになったのは、どちらも単なるアイデアでしかなかったレベルを脱して、現実の事柄になってきたからだと考えることができる。
そしてもう一つの理由が、実はこちらの理由こそが本書を書く目的として筆者が重視していることなのだが、AIとBIはどちらも現状の世の中を根底から覆してしまう可能性を持っていることである。
AIもBIも、ウォークマンやスマートフォンの発明で人々の生活が便利になったり、生活保護の制度によって貧困や格差の問題が緩和したりするのとはケタ違いのマグニチュードで社会に大きなインパクトを与える可能性を持っているのだ。
今の時点でのAIは、まだ我々の生活や社会の仕組みに対して大きなインパクトをもたらすほどのレベルにはなっていないが、AIが全ての知的活動において人間を凌駕するシンギュラリティの到来までわずか30年ほどだという予測もある。
またBIについても、フィンランドだけでなくオランダやカナダでも社会実験の取り組みがなされているように、本格的な検討の動きが世界の国々に広がりを見せている。場合によってはシンギュラリティの到来よりもずっと早い時点で、多くの国でBIが採用されるようになっているかもしれない。
そしてAIが高度に発達した場合にも、BIが実現した場合にも、産業革命の時以上の大きな変化が、経済活動だけでなく社会構造や人々のライフスタイルにももたらされることになる。
約1000年続いた中世においては、正しきことや善きことは全て神が決め、人々の生活と日常は神の思し召しに従うのが当然のことであった。しかし、ルネサンスによってわずか100年ほどの間に、人間の感情と理性が善きこと・正しきことを決め、感情と理性に従って生きることが真っ当な人生だとみなされるようになるという大転換が起きた。AIとBIはそれまでの社会のあり方を何から何まで覆してしまったルネサンスに匹敵するほどのインパクトをもたらす可能性があるのだ。
AIとBIのことを多少なりとも知った上で、近未来がどのような世の中になるのかを想像してみると、単に明るい姿だけでなく何となく空恐ろしいような、得体の知れないほどの大変化を予感する人も少なくないであろう。
大きな変化はまだ今のところは目に見える形では生じていないが、少なからぬ人々が何となくAIとBIに感じている得体の知れないことの重大さが、近年AIとBIが世の中のあちらこちらで語られるようになってきている本当の理由だと考える。
ニュースとして取り上げられたきっかけは囲碁でAIが人間に勝ったとか、北欧の一国でBIの導入実験が始まったという小さな出来事であったにもかかわらず、池に落ちた小石の波紋が消えることなく徐々に大きく広がっていくように、AIとBIが日毎に多くの人々の間で語られるようになってきているのは、やがて起きるであろう大インパクトのプレリュードと見なしても良いかもしれない。
本書はAIとBIに関するこのような認識を前提に、「AIとBIは世の中をどう変えるのか」について分析し、予測し、メッセージを提起したものである。
単なる未来予想の一つの寓話になってしまわないように、まず簡潔に、しかし総括的にAIとBIについて紹介・解説して、それぞれが持つ現代社会を根底から覆してしまう可能性を分析した上で、AIが更に発達し、BIの導入が実現すると、世の中がどう変わっていくのかを明らかにしていく。
第Ⅰ章では、そもそもAIとは何ができる機械/システムなのか、AIと人間の頭脳は何が違うのか、AIはどこまで発達しどのように使われるようになるのかについて、これまでのAI研究の経緯を含めて紹介・解説する。そしてAIが発達した社会において人間は何ができるのか、世の中の仕組みや仕事はどう変わるのかについて考える。
詳細は本文で解説するが、AIが発達することによってもたらされる最大のインパクトは「知的労働の価値の暴落」と「感情労働の価値の向上」である。
産業革命によって化石燃料と内燃機関が生産活動の主役となって人力が価値を失ったように、現在、知識や論理的思考力をウリにしている人材はAIに代替され、価値を失うことになる。
代わって価値が大きく向上するのは、人に寄り添って共感や癒やしを与えたり、安心や勇気やモチベーションを喚起する資質や能力になる。このように、社会と仕事と人生の価値体系の主軸が、知性/インテリジェンスから感情/感性へとシフトしていくことを示す。
第Ⅱ章ではBIについて、ロールズやパリースといった先駆者による理論的根拠にも触れながら、まず制度の具体的な仕組みについて紹介した上で、制度的メリット、マクロ経済的な合理性、思想的特徴について解説する。またBI実現の障害とされる財源の問題や、BIへの反対論として根強い「BI給付による人々の怠惰化:フリーライダー問題」についても、実証研究の事例を挙げながら冷静に検討・反証していく。
またスティグリッツやピケティが指摘するように、日・米・欧のいずれの国も、現行の資本主義によって必然的に生じる格差と貧困という構造問題を解決することができずに苦しんでいる。
BIはこうした状況において、現行の資本主義の構造問題に対する処方箋としてだけではなく、経済の新たな成長エンジンの機能も有しており、景気対策としての有効性も持つという、BI導入の合理性と必然性を解説する。
更にBIは、「働かざる者、食うべからず」という歴史上の規範を覆し、「働かなくても、食って良し」という新しい規範を打ち立てることになる。
そしてBIがもたらすこの規範が、民主主義の基本理念である機会の平等を現実的に担保することになり、民主主義を十全な形で完成させるのである。
このようにBIは、現代の先進国が直面している格差と貧困という構造問題に対する有力な解決策として、資本主義と民主主義を救う処方箋であることを示す。
そして第Ⅲ章では、Ⅰ章で示した「価値の源泉がインテリジェンスから感情/感性にシフトすること」と、Ⅱ章で示した「働かざる者食うべからずから、働かなくても食って良しへと転換すること」によって、どのような社会が現出し、人々はどのような仕事に携り、どのような日常と生活を営むのかについて総括し、「AIとBIによって世の中はどのように変わるのか」を示す。
AIとBIによって、人間は食うため、生きるための労働から解放されることになる。これは人類史上初めてのことであり、人間は重大な歴史的意義を持つ〝新しいステージ〟に立つことになる。
働かずとも生きていくことができる世の中は一見ユートピアに感じるかもしれないが、実は深い苦悩の淵と隣り合わせである。働かなくても良くなった社会で、人間はどう生きれば豊かな人生を送ることができるのか、その生き方と考え方を本書のメッセージとして提起する。
現時点でのAIとBIは、産業革命のプロセスになぞらえると、やっと蒸気機関が発明されたばかりのステージであろう。産業革命においてエネルギー源は、石炭から石油へ、そして原子力へと発展していった。
その間に、船で1ヶ月かかっていた大陸間の移動は飛行機による10時間のフライトになり、夜に灯していたランプの火は、電球に、蛍光灯に、LEDになって明るくなった。
そして蒸気機関が登場した当時と比べて、今日の経済の産出量は100倍以上に増大し、経済力の向上に伴って民主主義が生まれ、資本主義の発達が生んだ帝国主義によって世界大戦が勃発したり、資本主義VS共産主義の冷戦二極構造が現出したりした。
南米の蝶の羽ばたきがアメリカのハリケーンを引き起こすがごとく、ワットの発明した蒸気機関が200年の間に世界大戦や、冷戦構造やベルリンの壁の崩壊や、リーマンショックやEUを生じせしめたわけである。
人間の囲碁チャンピオンに勝ったアルファ碁も、たった2000人の失業者を対象に細々と始まったフィンランドのBIの社会実験も、今はまだワットの蒸気機関でしかないかもしれないが、AIもBIも現在の世の中のスキームと価値構造を根底から覆す可能性と必然性を持ったものであることは間違いないと考えている。
本書を手に取ってくださった方々が、AIとBIが社会にもたらすであろう変化とインパクトを知り、AIとBIによる豊かな社会と良き人生を実現するために少しでも参考にれば幸いである。
波頭 亮
はい。
今までは「稼ぐ力」の優劣で序列が決まっていたが、AIBI後の世界では「やりたいことを持っているか」が序列になるというメッセージが僕は響きました。
本書を読んで、AIBI後の価値観をインストールしてください。
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