『プロセスエコノミー』発売記念対談 尾原和啓氏×箕輪厚介
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『プロセスエコノミー』発売記念対談 尾原和啓氏×箕輪厚介

 これまでビジネスにおいて常識とされてきた「完成品を売る」というアウトプットエコノミーの概念をくつがえし、「プロセスを売る」という逆転の価値を提示する一冊『プロセスエコノミー 〜あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)。
 発売は7月28日とまだ予約段階ながらも、Amazon総合ランキングで1位になり、すでに重版が決まるという注目ぶり。

 発売を前にして、著者であるIT批評家の尾原和啓氏と、編集担当者の箕輪厚介氏がオンライン対談を行った。

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「所属欲求」が満たされない時代

箕輪:ハッキリ言って、僕がこれまでに編集した本の中でも、今回はまたさらに力が入った一冊になりました。尾原さんに書いてもらった内容が素晴らしいっていうのもあるんですけど、純粋に「僕が読みたい本だ」って思いました。読みやすいし、このプロセスエコノミーっていう概念を、ちゃんと社会に浸透させたい。

尾原:嬉しいです。僕がここ最近に出した本って、時代の流れにフォーカスしたもので、知っていれば得をする内容なんだけど、必ずしも全員の武器にはならないんですよね。でも今回の本は、小さい会社や個人の方にとっても武器になると思ってて。

箕輪:まさに。僕も編集を担当するなら、週末にイオンとかドン・キホーテとかで”エネルギー有り余ってるけど、何をしたらいいかわかんない”って人たちのために作りたいと思ったんですよね。
 この『プロセスエコノミー』という本を、「今」という時にみんなが手に取るべき理由みたいなものってありますか?

尾原:そうですねー。実はこの本に書いてある多くの理論って、10年前、20年前からすでに起きていた現象なんですよね。じゃあなんで今それが必要になってくるかって言うと、世界がオンラインで繋がりすぎて、情報の流通があまりにも加速してしまったことで、ゲームのルールが急速に変わってきてるんですよ。

箕輪:すごいわかる。僕さっきまで学生時代の友達と飲んでたんですけど、そこでプロセスエコノミーの話してて。「それ3年前から言ってなかった?」って言われて。でも今になって、一般の人たちもこの考え方を取り入れないといけなくなるくらい変化が起きてるってことですよね。

尾原:そう。最近、クリエイターズエコノミーって言い方めっちゃするじゃないですか。スマホが出てきて、誰もが発信者になれるし、誰もがメーカーになれる時代ってことなんだけど、逆に言うと機能的なものは一斉に生産されるから、すぐにパクられて埋没しちゃう時代になっちゃったってことなんですよね。

箕輪:うん、めちゃめちゃそれ感じます。

尾原:みんなクリエイターズエコノミーのポジティブなところだけを見てるけど、そうなったら競争過多になる。

箕輪:1億総クリエイターになるってことは、本当にクリエイティブなものが埋没しやすいってことですよね。宮崎駿さんとか、抜け切ったクリエイターは別として、どんなに素晴らしい企画でも、アウトプットは全て一瞬でパクられますよね。

尾原:そうなんですよね。YouTubeとかInstagramとかTikTokも、面白いテンプレートなんかがあると、今はみんなすぐに真似をする。似たような動画がたくさん出ちゃうから、インフルエンサーすら埋没してしまう時代になってきてますよね。

箕輪:うわー、めちゃめちゃわかる。だからこそプロセスを見せて、そこでファンを作るってことですよね。

尾原:そうなんです。あともう一個あって、(ソーシャルで)繋がる戦いにみんながちょっと疲れてきてて、「本物」に回帰したがってるって側面もあると思うんですよ。

箕輪:へぇ面白い。どういうことですか?

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尾原:昨年の象徴的な話に、Instagramが「いいね数」の表示・非表示を検討し始めたじゃないですか。最初は、ソーシャルで繋がることで、アップした写真に「いいね」がもらえる喜びとか、シェアしてもらうことで全然違う人に繋がった喜びみたいなものが溢れてたんだけど、それが行きすぎて多くの人が数字とシェアの奴隷になっちゃってたんですよね。これ”麻薬”じゃないですか。

箕輪:完全に麻薬ですね。

尾原:この承認欲求の奴隷になる麻薬から離れたいと思った時に、「どこに戻ればいいんだろう?」ていう回帰する場所を書いたのが『プロセスエコノミー』なんですよね。

箕輪:まさにまさに。

尾原:その辺の着想を得たのは、オードリーの若林さんと2年前とかにお話をさせていただいた時なんですけど、「僕、最近、周りには『ラジオが主戦場』って言ってるんですよね」って言われてたんです。理由を聞くと「『承認欲求』と『所属欲求』は車輪の両輪で、いろんなところで承認欲求が満たされるようになった今はむしろ、自分がどこかに所属してるって実感が無くなってる。その点で、ラジオって居場所になれるんですよ」って言ってて。

箕輪:めっちゃ面白い。

尾原:そう、それでこの「居場所って何?」って言うと、やっぱり、誰かのwhyを共有したり、箕輪さんだったら次に何を仕掛けるんだろうって、見えない「冒険」を共にする仲間がいるっていうのが、変化の時の最高の居場所だと思ったんですよね。

参加の想像と、参加の余白

箕輪:プロセスエコノミーって聞いて、”エリートの金の儲け方”って思われちゃうと困るんですよね。”お料理教室をやってます”とか、”イラスト描いて売ってます”とか、地道にやってる人たちに活用してほしいなって思ってて。

尾原:ほんとほんと。

箕輪:プロセスエコノミーは「why(それをなぜやるのか)」が大事で、 世の中にはNIKEの『just do it』やAppleの『think different』みたいな「why」が完成され切ったものもあって、「それに負けない広告を作らないといけないのは辛い」という考え方もあるんですよね。もちろんそれも一理あると思うんですけど、だからこそ僕は「why」が大切になると思ってて。

尾原:ふんふん。

箕輪:モンスター企業みたいに「why」は強くなくても、本当に突き詰めてやれば、2人か3人は味方が見つかるはずだから、その人たちをハブとして、また新しい人がプロセスを知って共感してくれてファンになって。そうやって広がっていくんじゃないかって思うんです。

尾原:そこが、チームラボ代表の猪子寿之さんが以前から言っていた、世の中が「グローバルハイクオリティ」と「ローカルロークオリティ」に二極化するって話だと思っていて。普通のサービスだったら、クラブハウスやNetflixみたいに、ドカーンって巨額を投じて作られた圧倒的なクオリティのものには到底かなわないじゃないですか。

箕輪:うんうん。確かに。

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尾原:日本のウーバーとかって、国内で見れば産業としてすごいけど、世界だとまだまだ存在感は薄い。でも一方で、ネットの良さって「点」で戦うんじゃなくて「線」で戦えるとこだと思ってるんです。
 例えば、昔、けんすうさん(マンガ情報サービス「アル」を手掛ける連続起業家)が、毎朝だし巻き卵を作ってたんです。

箕輪:やってた! ホント上手だった。

尾原:そう。卵焼きの写真とか動画のクオリティは本当にロークオリティなんだけれども、毎日ちょっとした工夫で卵焼きが美味しくなっていくとか、卵焼き食べてくれる相手のことをポツンとつぶやいてたりとか、見ているうちになんか親しみを感じちゃう。
 そういう連続性の中で文脈が生まれて、文脈の中に繋がりが生まれて、Netflixのめちゃめちゃお金をかけたハイクオリティよりも愛おしくなるんですよ。

箕輪:めっちゃわかる! 一般の人が戦う武器として必要なのは、「私とあなたしかわからないこの関係性」をいかに作り上げるかってことですよね。

尾原:そう。しかもその関係性っていうものが、「隙間」の中から段々段々、浮かび上がってくる。

箕輪:隙間というのは?

尾原:隙間って何かって言うと、さっきのけんすうさんのだし巻き卵も投稿だけを見たら、食べさせる相手の名前が1回も出てないんですよね。でも「こういうのが好みだった」とか、「こういう風に喜んでくれた」みたいな相手のリアクションは書いている。それをずっと見ていると、段々食べている人のキャラクターとか浮かび上がってくるわけですよ。

箕輪:なるほどね。「参加余白」ってことですよね。

尾原:そうです。やっぱりイマジネーションとパーティシペーション(participation)。参加の想像参加の余白ですね。想像した分、そこの住民になれるんですよね。だから、さっきのオードリー若林さんの「ラジオ」という居場所になるんですよ。

箕輪:リスナーの投稿がないと成立しないし。

尾原:そう。何より、ラジオは「声」だけだから、想像するじゃないですか。

箕輪:あー、そういうことか。

尾原:圧倒的なNetflixとかだと、もはや完成されすぎてて、想像が入り込む余地がないですよね。

箕輪:だからか。僕のことも「ラジオ聴いて好きになりました」とか、「ラジオをきっかけにオンラインサロン入りました」って人が多いのは、そういうことなんですね。

尾原:昔は生まれた地域が所属欲求を支えてくれていたけど、今は隣近所の人すら知らないっていう人類初めての状態になって、承認をしてくれる場所よりも、所属する場所が求められてるんですよね。

何を売るか。海外企業の実例

箕輪:この本を編集するにあたって、尾原さん超強いなと思ったのは、圧倒的な「実例」なんですよね。世界中の企業をリサーチされていて、プロセスエコノミー的なもので成功している企業の実例がいっぱい出てくる。それが宝物のように面白いなと思っていて。

尾原:ありがとうございます。

箕輪:いろんな企業があるんですけど、今日は靴のECのザッポス(Zappos)
の話を聞いてもいいですか?

尾原:何時間でも語れるよ!(笑)。

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箕輪:ザッポスはまさにプロセスエコノミー的観点でかなり面白いなと思ってて。「靴を売ってるわけじゃない」って話ですよね。

尾原:「靴を通してお客さんとの輪を」っていうコンセプトなんだけど、「靴を通してホスピタリティ売ってる企業だ」って言ってるんだよね。

箕輪:お客さんがほしいスニーカーを取り扱ってなくても、「すみません。うちでは無いんですけど、あなたの家の近くのお店では売ってるので、ぜひ」みたいなことを言うんですよね。

尾原:しかも「もうとりあえず商品押さえときましたから」って。「買われるんだったらそのままにしますし、買わないんだったら私の方でキャンセルします」ってところまで、お客さんに寄り添っている。

箕輪:めちゃめちゃすごいっすね。まさに靴売ってるわけじゃないんですもんね。そのビジョンというか、企業のプロセスを売ってるわけですもんね。

尾原:そうなんです。「お客さんに輪を届け続ける」を売ってるんですよね。だからお客さんもやみつきになるんですよね。

「選択の違い」がオリジナルを作る

箕輪:ちょっと本題から離れるかもしれないですけど、このプロセスエコノミーが世の中に浸透したとして、一番不本意なのは「言い訳」として用いられてしまうこと。

尾原:それ編集の際に、箕輪さんに言われてハッとしました。

箕輪:Twitterで「プロセスエコノミー」を検索してると、苦言を呈してる人が結構いて。要は、結果が出ないのは努力してないからなのに、その理由を「プロセスエコノミーだから」と言い訳に使う人が出てくると。まぁそういう人って結局はうまくいかないから、別に放っておいてもいいんだけど、やっぱり「圧倒的な目的と努力があってのプロセスだからこそ輝く」っていうのは大事だなと思って。だからこそ本の中にも、『プロセスエコノミーの弊害』って章も設けたんですよね。

尾原:言い訳にしちゃったら、そこで物語は進まなくなりますからね。一緒に冒険を歩みたいって思ってくれる人がいるから、そこにいろんな物語が産まれて、その物語が生き生きしてるから、また新しい人が来てくれて。その掛け替えのない時間、掛け替えのない価値に、結果的にお金を払いたくなる。

箕輪:めちゃめちゃ分かる。プロセスエコノミーって何かを楽にするものじゃなくて、自分自身が問われるものだと思うんですよね。「自分が何でそれをやりたいか?」って深い次元で問われるものだなと思ってて。

尾原:そうですね。自分が自分である理由って「決断の集積」だと思うんです。太宰治が「失敗と裏切りの積み重ねが自分の性格を生む」みたいなこと言ってるんですけど、人間がその人らしくなるのって「選択の違い」が生まれた時なんです。
 例えば、AかBかを判断する時に、他の人がAを選んだのに、自分はBを選択をした。その瞬間、他者との「違い」が見えてくるわけじゃないですか。この選択の積み重なりに一貫性があって、他の人にない未来を紡ぎ出すからこそ、その人に惹きつけられて、旅を一緒にしたくなる。決断って「断つことを決める」から決断なんだよね。

箕輪:なるほど。

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尾原:でも決断ってなかなか難しい。フォロワー数をたくさん持っちゃってること自体、ある種の麻薬というか、一つ一つの発言や投稿も「いいね」を稼ぐ決断に、自分の重力がかかりやすくなっちゃうと思うんです。箕輪さんだってそうじゃないですか?

箕輪:うん(笑)。でも僕、「彼氏と◯◯してる」に使っていいよ、っていうふざけた動画をアップしたら、2000人フォロワー減りましたけどね。

尾原:痛い(笑)。普通は2000人のフォロワーを増やすために、毎日毎日ものすごい努力してるわけですもんね。

箕輪:なんかフォロワーが減るたびにムカついて、余計に動画を連投し続けたの(笑)。そしたら2000人減った時点で下げ止まった。だから2000人は僕のビジネス的なノウハウに興味があっただけで、僕のパーソナルな部分には興味なかったんだなって思って。

尾原:途中で怖くなってやめないってすごいね(笑)。

箕輪:僕の「why」は「好きなように生きる僕に付いてきてくれ」ですから。それもそれでいいってことですよね。

尾原:うん。コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さんが『ファンベース』って本の中で、”ファンの定義を間違えちゃいけない”ってことを書いてるんですよ。”過去を懐かしむっていうのがファンではなく、変化する未来に一緒に歩いてくれるのが本当のファンです”というようなことを言ってて。

箕輪:めっちゃ面白い。

尾原:だから過去の自分を懐かしむファンが増え始めたら気をつけなきゃいけない。

箕輪:それあるなぁ…。「箕輪さん、前はこんなことする人じゃなかったのに」って言われたら、気にせず振り落とせばいいんですよね。

尾原:そうそう。「箕輪さんはこういう人だったのに」とか、「あの時の箕輪さんを思い出してください」とか言われたら、それは本当のファンじゃないんですよ。

ビジネスの形を変えたBTS

箕輪:さっきの事例にプラスしてなんですけど、BTSについても聞きたいと思ってて。尾原さん、本で書いた後も、BTSに関するリンクを送ってくれるじゃないですか。韓国のエンタメがプロセスエコノミー的に何がすごいのか教えてもらっていいですか?

尾原:日本ではBTSをK-POPグループの1つと見てらっしゃる方も多いんですけど、ハーバード大学の講義では「これは全く新しいビジネスの作り方だ」っていう風に取り上げられてるんですよ。
ハイクオリティーな歌やダンスに意識が行きがちなんですけど、彼らが世界に売っているのは、一人一人の成長の物語とか、その成長の中でお互いの絆がどういう風に強まっていくのかみたいなプロセスなんです。 BTSって昨年アメリカで大ブレイクしたんですけど、その前に一番人気が沸騰してた国がどこかって言うと、中東のUAEなんですよ。

箕輪:めっちゃ意外でした。

尾原:彼らが所属する事務所「HYBE(ハイブ)」の社員が、骨を埋めるつもりで現地に行って、UAEの文化とか、何を好むのかとか、現地の習俗を徹底してリサーチしてるんですよね。そしてBTSのメンバーが、「UAEや中東が好きだから勉強したい」って言って、けなげに学んでいく姿を見せる。そうすると、ちょっとした仕草やツイッターの振る舞いとかで、「私たちのことをちゃんと見てくれてる」「分かってくれてる」っていう風になる。その一つ一つのプロセスで、ファンとの絆がどんどん強化されていくんですよね。

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箕輪:へぇー。面白い。

尾原:さらにそれを支えるのが「ARMY(アーミー)」って呼ばれる熱烈なファンなんです。キングコング西野亮廣さんが言うところの「セカンドクリエイター」ですよね。(※ARMYは、自分たちでBTSの応援広告を出したり、アメリカの社会運動を牽引するなど、多大な影響力を持っている)
 BTSって自社スタジオを持っているから、著作権を気にしなくていい。今で言うひろゆきさんの切り抜き動画みたいな形で、ファンが編集できるような動画をたくさん上げている。その動画をそれぞれの文脈で編集して、みんなが楽しめるような動画をアップするARMYがいて、まさにセカンドクリエイターとして支えている。メンバーごとにARMYがいるわけだから、いろんなバリエーションがあるわけですよ。

タッチポイントを日常化する

箕輪:プロセスエコノミーって言うと、「それは有名な人だからできるんでしょ」と言う人も多いと思うんです。一般の人が「今からこだわって料理教室やりたい!」って時に、どう活かしていけばいいんですかね?

尾原:まず大事なことは、自分の人生において「どれだけの人に冒険を一緒に歩いてもらえるか」って話なんですよね。今までのような、完成すれば終わる「点」で完結するビジネスモデルだと、完成品をずっと売り続けなきゃいけない。
 でも、プロセスエコノミーで冒険の同行者になってもらうと、「毎月あなたの冒険が見たいです」って言ってくれて、その進捗やプロセスに月額を払ってくれるかもしれない。毎月の料理教室に「あなたの成長の軌跡を見たい」って言って、参加してくれるかもしれない。
 10万円を1回だけもらうよりも、今どんなふうに挑戦していて工夫しているのかを、毎回1000円支払って見に行きたくなる。そんな気になるタッチポイントを増やしていくことが大事だと思うんですよね。

箕輪:タッチポイントを日常化するってことですよね。1万円1回より、1000円10回の方が価値があるってことですよね。

尾原:そう。しかも今はネットがあるから、日常的に繋がることのハードルが低くなってるじゃないですか。それこそクラブハウスで自分の居場所(ルーム)を見つけた人って、「行きつけの店に寄る」みたいな感じでフラッと参加するんですよね。

箕輪:分かる。タッチポイントの多さについて、別の角度から言うと「可処分精神を奪う」ってことだと思うんですよ。たとえばディズニーとかも、僕自身はそこまで興味なくても、友達の家族がディズニーのグッズを使ってたり、何かしらディズニーが視野に入ってくる。心は奪われてはいないんだけど、日常の中でのタッチポイントが多いんですよ。

尾原:それ、心が奪われるんじゃなくて、心を着替えたがってるんですよ。

箕輪:と言うと?

尾原:どうしても会社や学校だと、上司や先生の目とか、世間の目とかって言うものに合わせた自分でいなきゃいけない。だから、自分のなりたい自分になれる時間っていうのは本当に大事だと思うんです。
 Windowsでもいいのに、わざわざMac使ってる人って、「think different」っていう言葉通り、「人と違う考えをしていいんだ」「人と違う考えが世界を変えるんだ」っていう自分の中にいる「なりたい自分」をつついてあげたいんですよね。

箕輪:なんか分かるなぁ。少し話を戻すと「私は無名だからプロセスエコノミーやっても誰も注目しないでしょ」っていうのをすごい言われるんですよ。これを解決しないと、この本が本当に意味ある1冊になんないなと思って、ずっと考えてるんです。

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尾原:そこが、この本の鍵ですからね。

箕輪:例えば、毎日、自分が通勤する途中にサッカーしてる少年がいて、下手だったのが徐々に上達していって、数ヶ月後にその少年の試合があるって聞いたら、「見に行ってみようかな」ってなるみたいなことです。変化をずっと見続けた分、きっとプロのJリーガーの試合より、熱が入ると思うんですよ。
 みんなすぐSNS的思考になっちゃって、ライバルがインフルエンサー、西野さんとかホリエモンとかって考えちゃうんだけど、そうじゃなくてもっと身近なところで、自分のこだわりとか努力を届けていけばそれがプロセスエコノミーだし、経済圏を作れるんじゃないかなって思うんですよね。

尾原:(独立研究者の)山口周さんが「役に立つから意味がある」とおっしゃられてますけど、「意味」を感じる時っていうのは、自分の心との距離がグッと近づいた時だと思うんです。その少年がだんだんサッカーが上手くなっていくという日常のタッチポイントに触れる中で、自分の中に眠ってる「ひたむきに成長に時間を使っていく」っていう心に着替えたくなるところに繋がるんですよね。

箕輪:なるほどね、そこの共感もあるんですね。

尾原:だから相手の中に自分を見出すっていう距離感がすごく大事です。

プロセスをとことん楽しむ

箕輪:本の最終章で、プロセスエコノミー的な生き方のモデルとして、片付けコンサルタントのこんまりさんの話が出てくると思うんですけど。ここがめっちゃ面白くて。結果的に見れば、こんまりさんは片付けコンサルタントになって、出した本はベストセラーになってるけど、そもそもそこが目的じゃなかったんですよね。

尾原:むしろ、こんまりさんって、元々、片付けが得意でも好きでもなくて、根っこにあったのは「素敵なお嫁さんになりたい」って思いだったんです。素敵なお嫁さんに近づきたい思いで生活情報誌とかを読んでると、片付けに関する内容がたくさん書いてある。そこをきっかけにやり始めてみると、片付けそのものが楽しくなってきて。だから、始めた当初は人に教えるとかは全然考えてなかったそうなんです。

箕輪:片付けるという過程そのものが目的になっていたってことですよね。実は僕も過程を目的とする人間なんですよ。

尾原:知ってる知ってる。だって箕輪さん、結果が約束されてなくても、ヒリヒリする状況の中にいる自分を楽しんでますよね。

箕輪:バレてる。恥ずかしいな(笑)。僕、目的って、ほんとないんですよ。今この瞬間の楽しさに生きがいを感じちゃう。

尾原:見てて分かる(笑)。でも多くの場合ってその逆なんですよね。本来、旅って行程そのものが楽しいはずなのに、いつのまにか目的地に到着することが目的になってて。勝つまでは我慢しろみたいな昭和的な発想で、プロセスを全然楽しんでないんですよね。

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箕輪:うんうん。

尾原:でも大事なことって、こんまりさんにしても、最初は片付けが得意でも好きでもなかった。だけど片づけをやっていく中で心がスッキリして、自分がやりたいことの輪郭が見えてくる。そして片付けの価値が変わったことで、どんどん楽しくなっていく。

箕輪:プロセスを楽しんでいること自体が強みになっていくってことですよね。

尾原:そう! ポジティブ心理学の中ではフロー理論っていうのがあるんです。人って挑戦がハードすぎると不安になるし、逆に簡単すぎると退屈になる。でも、ちょっと背伸びしないと達成できないっていう感覚の時に「ゾーン」に入る。これがフローの状態。この時って、プロセス自体が楽しいから、めちゃくちゃ気持ちいいし、めちゃくちゃ成長するんですよね。

箕輪:うんうん。分かります。その感覚。

尾原:そういうフロー状態で、自分の「好き」や「楽しい」を追求して、バンバン成長していくと、次のステージが見えるようになるんです。こんまりさんを例に言うと、自分の部屋や共同スペースの掃除を済ませちゃうと、もうそこで自分の「楽しい」も終わっちゃうじゃないですか。だから、次はお兄ちゃんの部屋を片付けさせてもらう。すると、お兄ちゃんからは「ありがとう!」って喜んでもらえる。自分が楽しむためにやっていた自己中心的なプロセスが、結果的には利他にも繋がっているっていう。

箕輪:そうなんですよ。サウナランドなんかがまさにそうで、自分が楽しいものをとことんこだわって作っているだけなんですけど、それがみんなにウケて、どんどん仕事に変わっていく感じ。

尾原:そう。しかも、片付けの居場所をどんどん替えていったこんまりさんと違って、箕輪さんは困ったことに、ビジネス書っていう自分の居場所の片付けが終わると、ビジネス書だけ作っている自分に退屈しちゃってる。

箕輪:まさにまさに。

尾原:そうすると遠くに出かけたくなるわけですよ。それが、今の箕輪さんにとっては「サウナ」という場所だと思うんです。これまで箕輪さん的な発想の転換をする人がいなかった業界で、最初は疎まれるかもしれないけど、熱量を持ってやってるうちに「なんかあいつ面白そうだから一緒にやろう」って冒険が始まる。すると、いろんな交わりが生まれて、ファッションブランドのESTNATIONとコラボできるみたいなことになるわけですよ。

箕輪:プロセスを楽しんでたら、不思議とそこに結果がついてきてる。ここがプロセスエコノミーの醍醐味ですよね。いやー、尾原さんの話、めっちゃ面白かったです。ほんとありがとうございました。

尾原:いやー熱く語っちゃいましたけど、僕にとっても、すごくいいヒントになりました。こちらこそ、ありがとうございました。

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尾原和啓(おばら・かずひろ)
IT批評家、フューチャリスト、藤原投資顧問 書生。
マッキンゼー・アンド・カンパニーからキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げを支援。その後リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。転職回数は13回にも及ぶ。経産省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。現職は14職目 シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。著書「モチベーション革命」(幻冬舎Newspicks books)は 2018年Amazon Kindleで最もダウンロードされた。「ITビジネスの原理」(NHK出版)は2014年、2015年連続Top10のロングセラー(2014年7位、2015年8位)。
「ザ・プラットフォーム」(NHK出版新書)はKindleビジネス書1位、有名書店総合1位のベストセラー。

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執筆:上田たきび
書き起こし:竒藤宏、上田たきび、氷上太郎島嵜伸孔
バナー:中村裕介



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『多動力』を始めとするヒット作を多く手がける、幻冬舎 箕輪厚介が運営するサロンの公式note。箕輪編集室→https://camp-fire.jp/projects/view/34264 箕輪厚介の会社→https://naminoueshoten.com/