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ジブリプロデューサー、蔦屋書店員、『頭に来てもアホとは戦うな!』編集者 #箕輪書店だより 4月号の内容を一部紹介!

箕輪書店だより4月号を、明日30日22時に配信致します!

今月は、スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さん、朝日新聞出版編集者・大坂温子さん、代官山蔦屋書店・三條陽平さんのお三方に取材させていただきました。

今回は、その内容を一部だけ紹介していきます。

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【 今月の目次 】
1. 本の売り方を考える(箕輪厚介コラム)
2. 編集者インタビュー
「すべて本でした」編集者・大坂温子さんの “本と書店への想い”
3. 書店員インタビュー
常識に囚われなければ書店の可能性は無限大!
 4.著者インタビュー
「本は、これからなくなるんじゃないかな」ジブリプロデューサー鈴木敏夫が語る 時代と作品の関係性
 5. あとがき


2. 編集者インタビュー
「すべて本でした」編集者・大坂温子さんの “本と書店への想い”

発行部数70万部超を成し遂げ、今でもその記録を伸ばしている大ヒット書籍『頭に来てもアホとは戦うな!』(田村耕太郎 著)で有名な朝日新聞出版の編集者、大坂温子さん。幼いころから本とともに生きてきた大坂さんの幼少期のエピソードや企画の作り方、書店への思いを伺いました。

<100万部へ爆進! “アホ本” の快進撃>

―2014年発刊の『頭に来てもアホとは戦うな!』は現在も増刷が続いています。最初は年間累計発行部数が4万5千部。そこから3年後に一気に50万部の増刷されました。売れた要因は大阪にある「旭屋書店」さん、ただ一点にあったと言われていますが、ここまで売れ続けている要因は他にも何かあるのでしょうか?

大坂:売れた理由はまさに嘘偽りなく「旭屋書店」さんです。「ららぽーと甲子園店」などでの仕掛けをきっかけに、バーッて広がっていったという感じです。旭屋書店さんが本当に何年もずっと大事に置いてくださっていて

村上春樹さんの新作が出ても、又吉直樹さんの『火花』が出ても、いつも人気ランキングの上位に出るくらいにずっと売り続けてくださったんです。それを見つけた弊社の販売部が、「ここで売れるなら全国で売れるんじゃないか」と考え、全国に販売店舗を広げていったんです。

―現在は70万部を超えていますね。

大坂:そうなんです。今は71万部まできていて、あと30万部売るために死にものぐるいです! 最初は2017年の10月まで6万部くらいだったんですけども、今ではシリーズ累計で75万部になっています。

自分たちでも「すごい!」って思っていて(笑)。ここまで売れたのは完全に旭屋書店さんが起点です。あのお店がなければここまで売れなかった。

―すごいです。本は初速が伸びないとなかなか売れないものだという印象がありました。

大坂:何かきっかけが1つでもあればベストセラーになるチャンスはいくらでもあるので、たぶん火を点ければドーンッと伸びていく本って市場にたくさんあるんですよね。

その火を「見つけられるか」、見つけた火を「広げられるか」というのがカギになってくるのかなと思います。

特に意識したのが、「書店さんにいつも新鮮な気持ちでこの本を店頭に置いていただけること」です。具体的には帯ですね。

10万部を突破した2017年9月から今年の4月の1年半強で、13回も帯の内容やデザインを変更しているんです。金の箔を押したり、ガラッと色を変えたり…。飽きられないような工夫を常にしています。

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3. 書店員インタビュー
常識に囚われなければ書店の可能性は無限大!

代官山 蔦屋書店に建築・デザインコンシェルジュとして勤める三條陽平さんは、「おしゃれな自宅の本棚づくり」というテーマで取材を受けた異色の書店員です。
今年、中国に進出することを発表した蔦屋書店。その立ち上げメンバーとして、来年には中国に赴任する予定です。そんな三條さんに蔦屋書店の取り組みやコンシェルジュの役割、将来の目標について聞きました。

<明確なコンセプト、多様な意思が面白い書店を作る>

ー代官山 蔦屋書店には、はじめて来たのですが、書店全体に独特の雰囲気がありますね。

私たちは「提案」をすごく大事にしています。自分たちが心から「おすすめしたい」という本を選ぶと、自然と、代官山 蔦屋書店にしかない本が多くなります。お客さまに、驚きや発見をご提案するためにも、なるべく自分たちでしか仕入れられない本をお勧めするようにしています。

代官山 蔦屋書店では、新刊だから目立つ場所に展示する、あるいは平積みすることはしていません。置き場には必ず自分たちの「意思」を介在させています。

この本だから平積みにする、この位置に配置するといった具合で、きちんと根拠をもって売り場を作るようにしています。おそらく代官山 蔦屋書店の独特の雰囲気はそうしたことが関係しているんじゃないでしょうか。

ー他店にない本を並べる場合、選ぶ基準が難しそうです。仕入れる本はどのように決めているのでしょうか?

その本が「本当におすすめしたい」本かどうかで仕入れを決めています。代官山 蔦屋書店のコンセプトは「専門書店の集合体」です。「私たちが作りたいのはこういう書店だ」という共通意識を全員が持っているので、仕入れに関してもたいていの場合は、共通のセンスがありますよ。

当然、各論については意見が対立することもあります。私が「これはうちの書店らしい本だ」と思ったとしても、他のメンバーがそう感じるとは限らない。しかし、そうした違いが、ある種の「面白さ」につながると思っています。

スタッフの多様な意見が、代官山 蔦屋書店の多様性を作り出しています。お客様も多様なのであまり選択肢を限定させてしまうと全てのニーズに応えることができません。自分たちのコンセプトさえ忘れなければ、書店員の多様性は武器になります。

ー書店員の多様性ですか。

良くも悪くも、蔦屋書店には書店員らしい書店員が少ないですね。本当にいろいろなバックボーンを持った人が多いんです。前職も様々で、雑誌の編集長をしていた人や一級建築士の資格を持っている建築家が書店員をしています。

だからこそ業界の常識に囚われていないんです。書店員という閉じた世界ではなく、多様なキャリアを背景に持つ人たちを取り込んで、書店をアップデートしていくのは面白いですよ。

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 4.著者インタビュー
「本は、これからなくなるんじゃないかな」ジブリプロデューサー鈴木敏夫が語る 時代と作品の関係性

スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さんは、映画プロデューサーになる前、徳間書店の編集者だったことをご存知でしょうか。漫画家・手塚治虫さんを担当されたり、雑誌『アニメージュ』の創刊メンバーとして立ち上げたのち編集長を務められ、最高45万部を売り上げるなど、他の編集者とは一線を画する活躍をされていました。その後『アニメージュ』を通じて、宮崎駿さん、高畑勲さんと出会い、「スタジオジブリ」が生まれることとなりました。
そんな鈴木さんに、昨年8月に出版したノンフィクション小説『南の国のカンヤダ』や、時代の流れと作品について語っていただきました。

<時代に対する答えを、作品に与えることでお客さんに届いていく>

ー鈴木さんご自身の本は、積極的に宣伝などをされているイメージがないのですが、あえてそうされているのでしょうか?

鈴木:僕は本業がプロデューサーでしょ。あまり売れ過ぎるとプロデューサーの仕事に差し障りが出てくるから、なるだけ目立たない方がいいなあと。

実は、それでいろんな編集者に迷惑かけてきたんです。というのは、僕は出版社で編集をやってたからどういうタイトルにすると売れるか分かるんですよ。その上で、なるだけ売れないようにしてきたんですよね。

去年の8月に出した『南の国のカンヤダ』っていう本も、売れないようにタイトルを決めたんです。

[『南の国のカンヤダ』は、鈴木敏夫さんが、都内のとあるマンションのエレベーターでタイ人女性のカンヤダと出会ったことで生まれました。
しばらくして彼女は、生まれ育ったところへ帰国します。タイ王国の田舎町・パクトンチャイ。田園風景が広がるこの町では、大人も子供も穏やかに楽しく、その日その日を生きています。そんなパクトンチャイで、大家族とともに暮らすシングルマザー・カンヤダがこの本の主人公です。まっすぐ正直に生きている彼女の姿は、鈴木さんだけでなく、その周りにいる人を自然と惹きつけていきます。合理的に考えてしまう現代人の私たちから見ると、カンヤダは理解できないような行動を起こして、人と衝突することも。この本は、そんな彼女と、彼女に翻弄されながらも楽しんでしまう鈴木さんたちのお話です。]

ーやっぱりタイトルでまったく変わるものですか?

鈴木:変わります。映画の宣伝をする時にね、いつも意識しているのはタイトル・ビジュアル・キャッチコピーの三点。これらが、その時代のお客さんに刺さるかどうかで大きく変わります。

例えば、『猫の恩返し』のポスターは、主人公の女の子が草原に気持ち良さそうに寝転がっている姿と「猫になっても、いいんじゃないッ?」というコピーを載せたんです。この映画が公開された2002年は、のちに「失われた10年」と言われる時期で、誰もが閉塞感を感じていた。だから、そんな時代に対して、このポスターは一つの答えになるんじゃないかなと思ったんです。

これは、本についてもおんなじですよね。表紙とタイトル、帯文の三点。それらがどれだけお客さんに深く届くか。だけど、『南の国のカンヤダ』に関しては、多分早すぎるんだよね。

[『南の国のカンヤダ』というタイトルは筆のかすれた赤い字で書かれ、帯には「カンヤダは、過去を悔やまず、未来を憂えない。いつも“今、ここ”を生きている。 著者初のノンフィクション小説。」と記されている。
周りに木々が鬱蒼と生い茂った湖の対岸に夕焼けが広がっている表紙。木々は全て黒い影となり、空の夕焼けと湖に反射した夕焼けで、世界は橙色に染まってしまったのように見える。]

ー早すぎる?

鈴木:うん、きっとこれからなんですよ。近代と前近代の問題に、みんなが直面してそういうことに興味を持つのは。

ー近代と前近代の問題というのはどういうことですか?

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取材 金藤良秀、河地真里、橘田佐樹、柴山由香、柳田一記
撮影 池田実加(大坂温子さん、三條陽平さん)、森川亮太(鈴木敏夫さん)

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