アップデート主義とは何か。

おはようございます。箕輪です。

今日も佐渡島庸平の新刊
「WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE」
の中にある、僕と佐渡島さんの対談を公開します。

アップデート主義という考え方は、これからを生きる上で超重要になると思います。


納品主義からアップデート主義へ

佐渡島 少し抽象的な話をすると、コミュニティを運営し始めて気づいたことに、「納品主義」と「アップデート主義」という考え方があります。一度で完璧な情報を伝えるのが「納品主義」だとすれば、不完全でもまずは伝達し、そこから修正を加えていくのが「アップデート主義」です。

これまでは本や雑誌といったコンテンツはもちろん、一般企業の仕事のやり方に至るまで、ほとんどのシーンで「納品主義」がとられてきました。当然、本は完成品を「編集し切る」ことが求められていましたし、企業では業務内容を一回で正しく伝えるために、綿密な会議の準備や根回しが行なわれてきた。

でもコミュニティに関しては、雑な形でも、みんながたくさん話題にしやすいような意思伝達方法にしたほうがいいのです。合宿があるとしたら、日時や場所をビシッと告知するのではなく、みんなが「どこに集まるんだっけ?」と会話をして、その中で情報がだんだんと磨かれていくのが理想です。

箕輪 わかります。僕は無意識にやっている。サロンメンバーには「今度、落合陽一さんのイベントやるから。場所よろしく」ぐらいしか伝えない。そうすると、メンバーがどんどん会話をして、推測して、詳細を固めていってくれる。

佐渡島 実は堀江さんは、このやり方を徹底しています。堀江さんはサロンメンバーに「長文での投稿をするな」と口を酸っぱくして言っています。それを見て僕は「長文を読むのが嫌いだからそうしているのだろう」と思っていたのですが、実は違った。長文だと長文で返さないといけなくなって、会話がたくさん生まれる状態ができないんです。コミュニティを活性化するために、 「長文禁止」のルールは極めて重要だとわかりました。

コルクラボもそれを見習って、現在ではチャットツールのSlack を導入しました。Slack なら短文でないと読む気が起きませんから、自然とコミュニケーションが短く、頻繁になっていく。

ちなみに従来の「納品主義」の概念から抜けられていないメンバーは、 「しっかりと情報を整理しないと伝えたくない」と感じて、長文を投稿してしまう傾向にある。そのため、情報発信までの腰が重くなるし、相手からの返信ももらえず、あまりいいことはありません。

箕輪 僕も長文での連絡が来たら絶対に返さない(笑) 。

佐渡島 なぜこうした構造変化が起きたかというと、人々がオンラインに常時接続されるようになったからです。オフラインしかない状態だと、限られたミーティング時間でたくさんのことを決めなければならないから、しっかりと準備して、一度に効率良く情報を伝える必要があった。これが「納品主義」の考え方です。

でも今では、チャットツールで誰もがつながっている。だから細かいメッセージを送り合って、そのたびに情報をアップデートしていったほうが、互いのつながりが強まるのです。仕事も人間関係も、 「アップデート主義」にいかに近づけるか。既存の常識を崩すのはとても難しいし、その常識を早めに崩せた人は、この時代に成功するのだと思います。

箕輪 落合陽一さんは完全に「アップデート主義」です。NewsPicks Book の『日本再興戦略』が 10万部を突破した後、突然完成品の本に赤字の修正が大量に入った(笑) 。まさに「アップデートネイチャー」です。

でもアップデートとは、言い換えれば情報が未完成なこと。余白があるからコミュニティのメンバーが一緒になって作れるということですね。 『日本再興戦略』の場合も、落合さんの修正指示の赤字が読めなくて、僕がTwitter で「この赤字読める人いますか」と投稿すると、そのジャンルに詳しい人が赤字の中身を教えてくれました。そこにはゆるやかなコミュニティが形成されていて、その場に落合さんがいなくても、落合陽一という待ち合わせ場所でみんながわちゃわちゃと楽しむような空間になっていました。

佐渡島 その通りです。さらには完成品を求めない分、 「未完成でも発信していいのだ」という雰囲気が生まれ、サロンメンバー全体の自己肯定感が高まる。

ちなみに僕は4~5年前に、堀江さんから「メールなんかうざくて、LINEじゃないと返信する気になれない」という話を聞いたことがあります。そのときは「メールもLINEも一緒じゃないか」と思ったのですが、今、自分の手元に来る情報量が、ちょうど5年前の堀江さんと同じぐらいになっている。そうすると、一つ一つのメールに返信する気が全く起きなくて、LINEやFacebook のメッセンジャーで短文で済ませられるものだけ、一瞬で返すようになっています。

箕輪 メールだと「で?」って言いたくなるものも多いですからね。結局何を返してほしいのかは、こっちが考えなければならない。

佐渡島 堀江さんから5年遅れで、僕に同じことが起きていることを考えると、世間はさらに5年後ぐらいに、今の僕らと同じぐらいの情報量を処理するようになると思います。そのときには、 「全部のメールを処理していたら、一日が終わってしまう」と、多くの人が気づくでしょう。僕の周囲を見ても家入一真さんや猪子寿之さんなど、ほとんどのメールを未読で済ませる人はたくさんいる。

街を歩いていて、広告を見たときに、全部に「これ買います」と反応しないじゃないですか。知り合いからのメッセージもそれと同じになっていくのが自然です。今は「全部のメールを返さないといけない」という意識の人がほとんどだと思いますが、この変化にうまく対応できないと、精神的にしんどくなると思います。

箕輪 僕も箕輪編集室のスレッドはほとんど見ていないです。本当に必要なものは、メンションを飛ばしてくれたら見るようにしている。

佐渡島 今の若い子を見ていると、複数のLINEグループやFacebook グループに入って、情報が流れていくのを眺めることに慣れている。それに全部返信しようとはしない。その子たちが社会に出ると、情報はどんどんスルーするものという価値観がだんだんと主流になっていくのでしょう。ちなみにその観点からいえば、現時点で勢力を伸ばしているプレーヤーが、今後はダメになるかもしれません。典型的なのがアップルです。完璧に作り込んだiPhoneを出すのは、完全に「納品主義」の考え方で、いずれ飽きられる。ジョブズが亡くなってからは、ハードのアップデートがほぼ止まってしまっています。またNetflix も、プラットフォームとしてはアップデートされていますが、コンテンツ自体は完成品を納品している。Instagram のストーリーズやSHOWROOM の生配信のような、アップデートされるコンテンツに親和性の高い世代が社会の中心になったときに、急速に影響力を失っても不思議ではありません。

ちなみにNewsPicks も、 「アップデート主義」のサービスです。一つのニュースに対して、コメントが次々につくことでアップデートされていく。非常に鋭いコメントが一つ投稿されるだけで、ニュースの持つ意味合いががらっと変わることもある。だからユーザーはコメント欄から目が離せないのです。

箕輪 NewsPicks Book はそれを本という「納品主義」の象徴みたいなコンテンツでやってます。制作過程を僕がTwitter で公開し、読者を共犯者にしながら制作していく。本が発売された後も、読者が感想を投稿すると落合陽一さんや前田裕二さんといった著者がリツイートしたり、返事をしたりする。しかもそれに関連する講演会や読書会が常に開かれている。つまり、本は一連の体験に参加する「チケット」という意味合いに汎化していて、永遠に終わらない。これはまさしく、 「アップデート主義」の例ですね。

佐渡島 さらにいえば、コミック化も「アップデート主義」です。 『多動力』はコミックになったことで新たな命を与えられたといえます。

続きは公開するかもしれないし、しないかもしれない。こちらを是非読んでください。


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