【尾原和啓×箕輪厚介】-中編-新しいルールを作るキングコング・西野亮廣 肩書経済 vs 信用経済
【前編】「乾けない世代」を解く、幸せの5要素
【中編】 新しいルールを作るキングコング・西野亮廣 肩書経済 vs 信用経済
【後編】 ゼロになる勇気
新しいルールを作るキングコング・西野亮廣 肩書経済 vs 信用経済
箕輪
若い世代が求めるのは「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」ですよね。でも、僕個人的には全部ありますね。
尾原
まぁ、幻冬舎にいる人は基本「達成」と「快楽」な人ですよね。きっと。(笑)
輪箕
そうですね。でも最近求めてるのは「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」だな、って思う。
尾原
そう、最近は「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」だって思うってことが大事で。僕、今日日本に着いたばっかりなんですけれども、普段はバリ島とかシンガポールを拠点にしてて、仕事があればハノイにも行くし、ウクライナも行くし、という感じで仕事をしてます。なぜそんな働き方をしているかって言うと、インターネットによって人がずーっとつながってられるから、ひとつの場所に縛られることがない。「僕はこういうことが得意な人間です」とか、「こういう意味合いの仕事だったら、別にお金なんていらなくて、もう喜んで時間を使います」ってことをずーっと発信してると、勝手に向こうから仕事が寄ってくるんですよ。
尾原
そういう時代になってきてるから、「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」の生き方をした方が、どんどん幸せが増えやすいんですよね。で、それを自覚的にやっている象徴的な人がキングコングの西野さんでございまして。で、しかも彼は確信犯的に「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」でどんどん仕事増えていくのを楽しんでる。その中で、「達成」「快楽」をモチベーションにした人間を見抜く能力がすごくて。だから古いルールでマウンティングしてくる人に対して「バーカ」って言って平気で突っぱねられる。
尾原
大事なことは、新しいものが新しいことを呼んでくるということ。「あなた新しいことやってくれるよね。」っていう信頼の中で仕事を頼まれるっていうのが新しいゲームのルールで。西野さんはその役割として、ベトナムである会社から「チーフイノベーションオフィサーやってくれ」って頼まれた。彼が没頭して遊びまくってるから来た信用経済だからおこる仕事ですよ。
だけど、「達成」「快楽」の人は、「いや、あなた何達成してくれるんですか?」とか確認に来たもんだから、「え、俺「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」のルールで頼まれたのに、なんでお前の「達成」「快楽」のルールで確認に来んだよ。」「しかも何かお前の肩書見たら偉そうな肩書きばっかり並べやがって」みたいなこと言うわけですよね。
箕輪
確かに肩書きがすごかった。
尾原
いやだから、あれって一見するとソーシャルパワーを持ってる西野さんが持ってない人を蹂躙したように見えるんだけど、別の見方をすると、この「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」の転換点にあって、実は言われてる人だって、「達成」「快楽」の世界ではものすごい肩書経済の強者な人なわけですよ。でも「お前のルール、俺には関係ねぇから。だって、新しいことやりたくて、新しいルール(信用経済)に基づいてあなたたちお願いしてきたのに、なんでそっち(肩書経済)のルール僕に押し付けんの?」っていう。正にルールが変わってきてるっていうことを象徴するケースなんですよね。
非効率な「好き」を通じて新しい仲間が見つかる
箕輪
この本が面白いのは、単純にこういう風に変わってるよっていうだけじゃなくて、時代がテクノロジーによって変化する中で、「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」を持つ人がどんどん強くなる。AI時代がよく機械に代替されるみたいな話において、むしろ「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」じゃないと、価値が生まれにくいっていう「非効率な好きこそが次の産業を生む」の所が好きで、
尾原
あ~そうそう。
箕輪
要は、人間の偏愛みたいなものが、差別化になる。で、それってもう「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」ですよね。もう別に達成とか関係なく、俺好きだからやってますよっていう。例えば、尾原さんはどの写真見ても確実に赤いマフラーをしてる。
尾原
赤いマフラー=尾原、でイメージがついているから、この間「俺のそば」って立ち食いそばの奥の方で食べてたら、こんな赤いマフラーだから、あ、尾原さんじゃないですか!?って、某社長が見つけてくれて。
箕輪
すごーい!
尾原
僕を赤マフラー以外だと認識してない人もいる。箕輪さんが赤いマフラーしてても尾原さんって言われるかもしれないです。
結局インターネットって、ちいちゃな偏愛であればあるほど、仲間が見つかりやすいんですよね。例えば、僕は絶対お見せできない裏アカウント持ってまして。僕、女性のうなじがすごい好きなんですよ。しかも、白い肌に若干ちょろちょろちょろって生えてる黒い産毛がすごい好きなんです。Pinterestっていう、写真をアップする匿名アカウントのツイッターみたいなサイトがあって、そこにうなじの写真しかあげない、僕の匿名アカウントがありまして。ブラジルで僕の趣味と全く一緒の奴が現れて、そいつも女性のうなじ写真を返してくれるんですよ。お前絶対これ好きだろ、みたいな。
箕輪
ははは。怖い怖い(笑)
尾原
で、お互い興に入ると、お互い自分のフォルダにある、好きなうなじの写真をこうやって出し合って最後出し尽くしたら、おっさんの顔の写真をあげるっていう。1回もテキストでメッセージやり取りしたことないんだけど、そういう暗黙のルールでもう4年やり取りしてるんですよ。
箕輪
怖い!すごーい!ははは。変わってる(笑)
尾原
どんな趣味の人間でもインターネットってやつは、多分仲間が見つかりやすいんですよね。仲間が見つかるって、マイナーな趣味であれば趣味あるほど楽しいから。そうするとやっぱり先輩が後輩を応援したくなったりするし。
箕輪
そうですよね。
尾原
そしたら一生の友達ですよ、その人は。しかも一生の友達ができたら、堂々と自分の趣味を深掘れるわけですよ。深掘ってく中で、「お前のうなじのコレクション最高だな」って買ってくれる奴も現れるかもしれないし。たとえ買ってくれなかったとしても、ほんとに自分しか仲間いねぇやって思ってたところに友達が現れれば、幸せじゃん。
変化に対する恐怖より、変化しないと死ぬ時代
箕輪
う~ん。僕は真逆のタイプなんでそういう悩みはないんですけど、尾原さんみたいな大好きなことばっかりやってる人って、「そもそも好きなものがまだ見つかってない」みたいな相談、よく受けると思うんですけど、そういう時どういう風に答えますか?
尾原
TEDの有名なケン・ロビンソンのトークに、「学校教育は創造性を殺してしまっている」(https://www.ted.com/talks/ken_robinson_says_schools_kill_creativity?language=ja )
ていうのがありまして、元々人間って、変化があったら変化に対応しないと死んじゃう生き物だから、変化に対して何か興味を持って動くっていう風に生物的にはできてるんですよ。だってそうしないと死んじゃうから。だって温度上がってんのに、気づかずに動かなかったら茹で上がっちゃうかもしれないし、向こうの方から新しい光が見えるからそっちの方向にいったら川が流れてるかもしれないし、
箕輪
どんな怠け者でも、どうにか変化するってことですよね。
尾原
そう。ただ、人間って一方でもう一個困った進化があって。単純に言うと、道に落ちてるヒモをヘビと思う人間と、道に落ちてるヘビをヒモって思う人間がいたときに、どっちが生き残ると思います?ヒモをヘビって思う人間のほうが生き残るんですよ。まあ箕輪さんは、明らかにヘビをヒモって思っちゃうじゃないですか。そうするとやっぱりヒモに噛まれたりするじゃないですか。
箕輪
ヒモじゃねえのかよって思いますね(笑)
尾原
「こいつ信じてたのに」って奴に騙されたりするじゃないですか箕輪さんは。
箕輪
騙されるってことはないですけど、そんな危機感バリバリで生きてはないですね。とりあえず踏んじゃいます、(ヘビかヒモか)わかんなかったら。
尾原
そうでしょ。だから生物って、ヒモをヘビって思った人間のほうが生き残りやすい。
箕輪
危機感が強い方がいいってことですね。
尾原
いいとか悪いとかじゃないですよ。危機感が強いと、何かあったときに「怖い」って想像力が働く方が生き残りやすいから、そういう風に人間のOSってできちゃってるんですよ。だけど、今までは変化をおもしろいって思う自分と、ヒモをヘビと思う自分のバランスの中で人間は生き残ってきている。だけど、今って変化をしないと本当に死ぬっていう時代になっちゃったんですよね。オックスフォードの研究者によるとここ20年の中で50%の仕事はロボットに置き換わるって言われているし、今トランプがこんな風になるなんて思っていなかったし、本当に今ここでのうのうと話をしてるけども、なんとなくもう開戦してもしょうがないよねっていう雰囲気になっちゃってるし。何が起こるかわからない社会なわけですよね。
そうするとその変化を、「怖い」っていう想像力を活かしながらも、「楽しい」って思えるように動いていかなきゃいけない。それを、どうやって自分の中で訓練していくかっが大事なんですよね。
箕輪
恐れすぎるのもよくないんですかね。
尾原
特に今まで日本は「人に迷惑をかけちゃいけない」とか、「人と違ったことをするのが良くない」みたいな同調圧力が強いことで成功してきた国だから、人と外れたことをする=駄目なことっていう風になっちゃって、好奇心が殺されやすいんですよね。
箕輪
だから「好きなことがないです」って言っちゃう人が多いんですかね。
尾原
だって好奇心ってものすごく読んで字のごとしな言葉で「奇妙なことが好き」ってことなんですよね。猫は虫みたいなものが飛んでたら飛びかかるじゃないですか。人間だってもともとそういう好奇心を持ってるんですよ。
箕輪
3歳くらいの子どもはそうですよね。
尾原
自分の蓋をちょっと開いて過去に戻ってみたら、必ず何か好きだって覚えているものがあるはずだし、もっと言うと好きなんて後からできるもんだから。最初はなんだこの箕輪って生き物はって、編集者なのにプロジェクトマネジメント一切しないし、メールの返事も返ってこないし、ただ時々しびれるキャッチコピー送ってくる(笑)
箕輪
こんなこと言ったらあれなんですけど、変人・尾原さんに仕切られる僕っていう、変人競争みたいなことになってましたね(笑)
尾原
結局、面白いからってやっていたら、やっぱりこのキャッチコピー能力すげえなって好きになっていくわけじゃないですか。だから、最初はその奇妙なものに身を委ねて、まずは一緒に踊ってみるっていうことなんですよね。それをやっていたら好きになるから。
編集:松下友紀 林千尋 福尾容子
写真:大竹大也
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