2023年の箕輪厚介

毎年、iPadのメモ機能に一年間の目標みたいなものを書いているので、それを書くための素材として、

整理しないままに昨年の振り返りと今年以降の生き方、働き方について吐き出すように書いていきます。

めちゃくちゃ長くなるか、途中で飽きて短くなるか分かりませんが。

さて、昨年はどんな一年だったかを振り返ります。

昨年は書籍編集者でいうと『世界2.0』佐藤航陽、『熔ける再び』井川意高、『死なばもろとも』ガーシー、『ずる賢さという技術』守田英正といった本をメイン編集者として、あと何冊かをプロデューサー的にやりました。

数字でいうと自分編集の本で20万部は作ったので、ここ数年ますます本が目に見てて売れなくなっていくなかで、労働時間で考えると生産性は高いかなと思います。

2年くらい前みたいに毎月本を出し続けるというのは体力的にも集中力的にもモチベーション的にも難しくなってきています。いや無理だなと思います。何年間もそれを続けている編集者の人たちは本当にすごいなと思ってます。

僕の性格的に鬼のように短期で、集中して、爆発的にやるタイプなので、2、3年で200万部以上作ったあの日々で、他のひとの30年分くらいの容量を一気に消費してしまった気がします。

いますよね、スポーツ選手でもアーティストでもそういう人。

だからプロデューサーとして、現場は社内外の編集者に任せつつ、僕が統括してみるというスタイルも数年画策しているのですが、このスタイルでは未だヒットが出ず、永遠の課題です。

現場の編集者が悪いのではなく、数十万部という小さな本のマーケットで、ヒットというのは「たった一人の熱狂」からしか生まれ得ないものであって、誰かが圧倒的な当事者として狂ったように作ってないと熱が生まれず、仲間を巻き込めず、結果として世間を騒がすことはできないのだと思います。

やはり書籍編集というのは、どこまでいっても最初は私的なものであり、割に合わない私的な狂気によって火がつき、営業や宣伝などのチーム戦に移行していくものであり、最初から効率的にチームでやろうというのは虫が良すぎる気がします。

であるとするならば、僕がプロデューサーとしてやるべきは、良さげな案件を振るのではなく、現場の編集者の狂気を引き出すことなのかなと思い始めました。

これは見城さんが僕にずっとやってくれていることだなと気づきました。

僕は経験を重ねるにつれ、著者に狂ったように没入し、一文字一文字に魂を込めて、一冊でも多く売るために走り回るみたいな狂気が出しにくくなってきています。

虫の目、鳥の目、魚の目と言うように、虫の目で細部にこだわり抜く仕事から、鳥の目で世の中を俯瞰で見たり、魚の目で時代の流れを読んだりする仕事に代わっていってる気がします。

なので徐々に狂気を持つ側から引き出す側に行く時期なような気がしますが、それだと僕じゃないような気もします。

そういう意味で言うと、ガーシーさんの本は久しぶりに狂気を持ちながら自分で一文字一文字に魂を込めて作れたものであり、社内外にハレーションを起こしながらヒットまで持って行けました。

いろんな人に迷惑と心配をかけたので申し訳なかったのですが、編集者としての僕はあれをやれたことで、まだ生きているのかなと思いました。

てか、このペースで書いてたら本一冊分くらいにならないか?

まあ、とりあえず続けます。

編集者として、虫の目の集中力は確実に衰えている中において、自然と培ってきた鳥の目と魚の目があります。

鳥の目で世の中を俯瞰し、魚の目で時代の流れをよむ。この力を活かして出来たのが、サウナランドとラーメン箕輪家というブランドです。

どちらも現場は、それこそ狂気を持った人間たちが日々目の前のお客さんと向き合って良いものを作っています。

僕がやってることは、世の中を俯瞰し時代の流れを読み、ブランドのコンセプトを作ること。そこに強度がないと人は集まってきません。

サウナランドは[世界を変えることが出来なくても、世界から自由になることはできる]といったコンセプトです。

他人と競争し世界を変えてやるぜという資本主義的、起業家的なマインドのオルタナティブな価値観として、世界を変えることなんかできないけど自分はこれでいいんだと世界のモノサシから自由になることはできる、というのをサウナを入り口に表現しようと思っています。

これは僕自身がNewsPicksと一緒にアップデート主義を牽引してきた中で、文春砲を喰らい、世捨て人みたいになった時に懐いた気持ちを根っこにしてます。

ラーメン箕輪家は、[わかっちゃいるけどやめられない][後悔するために生きている]がコンセプトです。

世の中がどんどんホワイト化して不純物が取り除かれていく流れの中で、そうは言っても人間なんてそんな綺麗なモノではないし、悪いって分かってても欲しくなっちゃうモノだよねというのをコテコテの生活習慣病になりそうなラーメンを入り口に表現しようとしています。

本のテーマを考える時もそうなんですが、世の中が大きくどっちかの方向に進んでいる時というのは、その大きな矢印から、個人の気持ちがこぼれ落ちるものなので、それを繊細に捉えて、別の形で表現する事ができるとブランドになっていくと思います。

これをやるのは鳥の目であり魚の目が大切で、必死に虫の目で本の編集者をやっていく中で気づいたら少し身についていたのかなと思います。

サウナランドは、サウナランド浅草が好調でサウナシュラン2022を取って、ラーメン箕輪家も中野に店舗を構えて連日行列ができています。

2023年が勝負の年であると同時に、リアルビジネスというのはいかに日常に溶け込むか、その街の大切な存在になるかという長い道のりだとも思うので、目の前のお客さんに向き合い続けるのが大事なのかなと思います。

どちらも、現場を支えているのが箕輪編集室のメンバーなので、箕輪編集室という単なるオンラインコミュニティの域を飛び出して、一緒に事業を作り、収益を上げるまで持って来れたのは嬉しいなと思います。

こうやってざっくりと自分のこの数年の仕事を分析してみると、ヒット本を出すことで、SNSでフォロワーを増やしながらメディアにも出て、その影響力をバネにさらにヒット本を量産し、ムーブメントを作った。そしてその実績を原資に本以外のブランドを作り始めているという感じだと思います。

先にも書いたように、僕の性格的に短期で、集中して、爆発的にやるのが得意なので、それがハマった数年間で、その原資を上手く横展開しているように見えます。

ただ間違いなくこのやり方はずっとは続かないと思ってます。冷静に見ると、焼畑農業にも近く、過去の原資を食い続けてるとも言えます。

やはり短期でムーブメントを生み出すには若さとかセンスとかカリスマ性みたいな不安定な要素が不可欠で、それを安定的に維持することは難しいはずです。

そうやって考えていくと、今年以降はその若さとかセンスとかに頼らずに原資自体を増やす仕事をしないといけないなと思います。

僕は少し上の起業家の友達が多いので、40近くになって、みんな会社が大きくなったり、上場したりしてます。

その反面、僕は博打師のように生きていて、その違いがお互いに面白く友達関係になると思うのだけれど、あまりにも自分の突発的で感覚的で短期的な仕事のやり方は少し変えていかないといけないなと考えています。

僕の今までの仕事のやり方をする上で生活習慣もいびつでした。

この仕事のやり方には常にお酒を飲んでいたり遊んでいたりSNSで喧嘩していたりという生活習慣が非常に有効でした。

それらは常にハプニングや偶然の出会いを呼んできて、それが何かしらの発想の種になり、ヒットにつながっていくからです。

その今日使う金は今日稼ぐみたいなスタンスは、自分の嗅覚を鋭くし異常な行動を焚きつけることにもなりました。

この数年間はこの生活習慣と仕事内容が非常にマッチし、ヒットにつながり、ただヒットを作るだけではなく、僕自身のフォロワーも増えていきました。

しかしながら、僕のγGTPは577です。

通常、50が正常値で100になるとお医者さんから注意されるというγGTPが577です。

肝臓が悲鳴を上げています。少し生活習慣を変えないと死にます。

というよりも、そもそも、このスタイルで仕事を続け成果を出し続けるのは、肝臓の問題がなかったとしても上記の通り30代までが限界なのだと思います。

その限界を悟るきっかけになってくれたのが、γGTPだったのだなと思います。

で、どうするかという話ですが、40歳になるまでの上に伸びるのではなく、下に根を張る取り組みを大切にしようと思ってます。

ざっくり言うと、箕輪最近見ないなと言われたり、箕輪終わったねと言われるような土に潜る仕事にも一定時間コミットしようと思います。

最近の仕事のやり方は、とにかく浅く広げていくという感じでした。

10のうち1当ればいい、100やれば10くらいは当たるだろうと。そのためにはいかにコミットしすぎないかが大事でした。まさに多動力で、最初だけ関わってあとは任せる。

これ自体は悪いことではなく、このスタイルを極端にやりきったからこそ、無尽蔵に仕事の幅が広がって、今の時代に合った自分ができたという気がします。

ただ、このやり方だと大樹は育たないような気もしています。一瞬の話題やヒットには繋がっても自分のその先にも繋がる原資にはならないと。

そういう意味において、今年からは広めるより深めるということを意識して、これは大樹に育てるぞという案件は別の箱に入れて、別の時間と頭を使って、数年単位の中長期で作っていこうとおもいます。

めちゃくちゃ分かりやすく言うと、

40歳以降の自分を語る代表作になるものを時間をかけて作る。

というスタートの年にしようかなと思います。

僕は今まで色んなとこで語っている通り、普及の名作ではなく時代の徒花みたいなヒットを作るのが好きだし自分の強みだと言ってきたけれど、ある種その究極系みたいなガーシー本を作れたことで、そのスタイルを続けることに興味を失ったのかも知れないです。

40歳以降の自分を語る代表作になるものを数年かけて作る。そのために会食の時間を減らし、編集者の時間を増やしていこうかなと思います。γGTPのためにも。

今までの作品の作り方は、時間と採算をざっくり見据えた上でやってました。しかし、その常識のサイズを打ち破った発想で何かを作らなきゃいけないフェーズになったような気がします。そうじゃないとワクワクできないし、手慣れた仕事になってしまうんだろうなと。

今、コンテンツがどんどんインスタント化する中で、そういった非効率の狂った企画の魅力がきている気がします。

今年スタイルチェンジできなければ、多分一生できないし、死ぬまでその日暮らしみたいな編集者でしょう。

色々と細かなことはあるけれど、これが2023年の箕輪厚介の抱負です。

今年もよろしくお願いします!













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