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「向いているかはわかりません。でも、好きなんです。」次世代へ託す愛情のバトン

前半では、平岡さんのデザイナーとしての原点やデザインへの想いを伺ってきました。

デザインとは何か、自分の気持ちをどのように整えてデザインに向き合うべきなのか、そんなことをお話しいただきました。

後半では、箕輪編集室(以下「みの編」)に対する平岡さんの考えをより詳しく深掘りします。

みの編メンバーとして、デザインチームのリーダーとして、どのような想いで活動していたのか。そしてこれからどのような道を進まれるのか。
その足どりを追います。

みの編での活動を「栄養」にして、さらに磨かれたデザイン力

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ーーみの編に入ってからご自身のデザインに変化はありましたか。

そうですね。気がつけば昔よりも今の方がずっとデザインが好きになっていました。
自分を変えるためには、「時間の使い方を変える、住む場所を変える、付き合う人を変える」って言われますよね。それに当てはめると、僕にとってみの編に入ることは、付き合う人を「加える」という感覚に近かったんです。

最初は、こんな個性豊かな人たちが集まるコミュニティに自分は馴染めるのだろうか、と不安に思っていました。みの編にはデザイナーだけでなく、文章を書いている人もいるし、カメラをやっている人もいるし、はたまた旅行をしたり全力で遊んだりしている人もいて、得体の知れないコミュニティだなと(笑)。

だけどいざ入会していろいろな人と関わってみると、自分は意外とそれが嫌じゃなかった。そんな自分自身の新たな一面を知ることができたのが、僕にとっては大きな発見でした。

入会するまでほとんどデザイナー同士としか交流がなかったのですが、そこから飛び出して多様なバックグラウンドを持った人たちと関わって、刺激を受けました。

また、本業ではやらないような媒体のデザインをする機会にも恵まれて、自分のデザインの幅が広がったのも実感しています。
みの編での活動が、自分のデザインにとっていい栄養になったと思いますね。

これまでは、デザイナーの「実力」って「デザイン力」のことだけを指すと思っていたんです。でも、みの編で箕輪さんやさまざまなメンバーと関わって、いわゆる「コミュニケーション力」とか「営業力」とかも、デザイナーの実力のうちだと考えるようになりました。

箕輪さんって編集者としての能力はもちろん高いし、人を巻き込む力もすごく強いじゃないですか。依頼の仕方が天才的で、「人たらし力」みたいなものも感じますよね。
そんな姿を見ていて、デザイナーもそういう力を養って自分から行動をしていかないと可能性が広がりづらいなって気がついたんです。「実力主義」だと言ってお高くとまっていても、活躍できるフィールドの広がりに限界が出てくる。

だから、クライアントといい関係を築くことも、デザイナーに求められる実力のひとつだと思います。そうやってデザイナーとして自分の世界を広げていくと、結果的に「デザイン力」も磨かれると考えています。

ーーデザインチームのリーダーを務めていかがでしたか。

やってよかったです。会社以外の場で組織のマネジメント方法を実戦で学べましたし、自然と打席も増えて貴重な経験を積むことができました。
正直、みの編をきっかけに電車広告までできるとは思ってもみなかったです。

でも、僕がここまでやってこられたのは、周りで支えてくれた人たちのおかげです。

前リーダーの前田高志さんから「リーダーをやってみないか」と言われた時は、「絶対に無理だ」って思っていました。
前田さんは箕輪さんから絶大な信頼を得ているのをわかっていたので、そんな人からリーダーを引き継ぐなんて荷が重すぎると感じてしまったからです。うまく務められる自信は全然ありませんでした。
それに、胸を張っては言えないことですが、入会した時に「オンラインサロンでは自分がやりたくないことはやらない」と密かに心に決めていたので、ひたすら断り続けていましたね(笑)。

ーーそれでも口説き落とされたのはなぜだったんでしょうか。

その理由は超簡単で。でらみがチーム運営の部分をやると言ってくれたからです。
リーダーの役割とされていることだって、別に自分ひとりで全部やらなくてもいいんじゃないかと思ったんですよ。自分にできないことがあるならば、役割を分けて何人かで分業すればいいのではないかと。
それで、もともとデザインチームでデザイン道場(※)を企画してくれて付き合いがあったでらみにお願いしたんです。信頼できるって思いましたから。

(でらみさん:すごいびっくりしました…!)

※デザイン道場:デザインチームで行われているデザイン講座

結果、とてもよかったですね。でらみと、そしてあとからサブリーダーをお願いしたニトロにもたくさん支えられて、上手くチームとして機能するようにできたと思います。新しくデザインに挑戦したり、デザインが好きになってくれる人も増えたりして、とても嬉しいです。ふたりにはとても感謝しています。


チームをよりよくするために、育てる


ーー平岡さんは、後輩の面倒見がいいと伺います。

そうですねぇ。面倒見いいと思いますよ、自分でも(笑)。

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(弟子作っちゃいます。笑)


なぜ後輩の面倒をよく見るのかと聞かれるとその理由はめちゃくちゃ明確で、チームを継続させるために、人材育成は必須だと思っているからです。
これは本業でも言えることですが、大きな案件になればなるほど、ひとりきりでは対応が難しくなってきます。だから、いいデザインを作るためにはいいチームを作る必要があるんです。

それに、僕自身にもデザインの師匠と呼べる人がいて、その人に基礎から叩き込まれて今の自分がいます。その感謝の想いを、今度は自分の後輩たちに還元したいんです。その気持ちは、会社でもみの編でも変わりません。

まあ、教え方は基本厳しいと思います。その人にとって本当にためになることを教えたいと思うと、どうしても厳しいことを言わなければならない場面も出てきてしまうので。
でも、僕の教えたことでその人が成長してくれれば、別に自分が嫌われてもいいかな、とは思っています。

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もうひとつ、みの編で後輩を一生懸命育てていた理由として、前リーダーの前田さんから渡されたバトンをしっかり次に渡さないといけないという自負があったから、というものありますね。
僕にとってこのバトンは、すごく重たいものだったんです。それを適当に他の人へ「ポイっ」て投げることはできないなと思っていました。

ーー後輩を育てる中で、成長しないから途中で見捨てるということはないんでしょうか。

それはしないです。だって、教えている時点でできると思っていますから。
やっぱりどんな場面でも、教える側と教えられる側で信頼関係ができていることが基本だと考えています。そうでないと、どんなに相手のためを思って伝えても相手の心の底には届かないので。

仮に、僕の教えに対して「自分のスタンスはこう」みたいな主張をする後輩がいても、デザインにおいて基本的なことって不変だということを伝えたいです。
ぶっ飛んでいるデザインをしようが、スッキリと整理されたデザインをしようが、外してはならない基本をおさえていることは共通。僕は「あまり奇抜なデザインをしないデザイナー」として、奇抜なデザインは好きじゃないと思われているのかもしれませんが、そういう次元の話ではないんです。

そもそも、奇抜なデザインとして世に出ているということは、中身を伝えるためにはそのアウトプットが正解だったということなんですよ。コンテンツを伝えるという目的を達成するための、クライアントも納得した上でのアウトプットなのだから、それを形にできたデザイナーには実力があるということです。だから嫌いだとかは思わなくて、その時はそれが正解だったんだなと認識するだけです。

デザイナーの能力とは、単なるデザインの造形力だけではないんです。デザイナーの意思だけで完結するアウトプットなんてほとんどありません。多くの場合はまず伝えたいことがあって、それをデザインするわけですから。

内容をより魅力的に見せるデザインを作れるように、後輩たちには教えていきたいですね。しっかり基礎を身につけて、デザイナーとして世に出せる技術を身につけてほしいというのが僕の願いです。

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(Zoom怖いって言われるけど会えば怖くないです。苦手なんだよなぁ、あの四角。)

脳と手を繋ぐまでの道のり


ーー若きデザイナーへアドバイスをお願いします。

まずは、「自分のやってみたいデザイン」を自由に形にしてみればいいと思います。
その上で、「たぶんクライアントはこういうのが好きだろうな」っていうデザインも同時に作ってみる。そして、どっちがより目的を果たしているか見比べ、考えてみてください。

それって要は、「自分のエゴに走ったもの」と「クライアントが求めるもの」という両極端を形にする作業なんですよね。実際の答えはそのどちらかではなくて、両方の要素を兼ね備えた中間にあるかもしれないのですが、まずはその両極端を認識することで目的に対するデザインの幅が見えてくると思います。

でもおそらくそれ以前に、今若い人たちが「やりたいことがわからない」って悩むのと同じで、いざ作ろうと思っても「自分のやってみたいデザイン」が何かって最初はわからないと思います。だけどそれは思い悩むことでもなくて、ただ単純に若いうちは自分の中にデザインのストックが十分にないから方向性に迷ってしまうだけです。

「自分のやってみたいデザイン」って、自分の中から自然に湧き出るように思われがちですけれど、そうすんなり見えてくるものではなくて。世に出ているデザインをたくさん見て、もがきながらもたくさん作らないと見えてこないものなんです。だから、最初はとにかく手を動かして自分の頭の中に「やりたいデザイン像」が見えるようにすること。まずはそこから始まります。
そういう意味では、みの編は自分から手を挙げる人は周りから認知されてどんどん声が掛かる場所ですから、積極的に活用してみるのがいいと思います。

そして、頭の中で具体的にやりたいことを描けるようになってきたら、実際にアウトプットする段階になるわけですが、そこでもおそらくすんなりとはいかないと思います。思い描いた通りにデザインできない、という現象です。
焦ると思いますが、上手くアウトプットできるようになるための近道はなくて、トライ&エラーで地道に試行錯誤するしかないんですよね。脳みそと自分の手が繋がるまでに、だいたい2、3年くらいかかるものなんです。

ーーそれは平岡さんでも?

もちろんそうでした。いざ自分のやりたいデザインが頭の中で思い描けるようになっても、最初のころはそれを思い通り形にできなくて。「なんでこんなにイメージと違うんだろ。PCのモニターが悪いのかなぁ?」なんて思ってたこともありましたよ(笑)。


デザイナー・ヒラオカの夢は続く


ーーこれからやってみたいことはありますか。

みの編ではデザインチームのリーダーでなくなったというだけなので、今後も変わらず興味のある企画には手を挙げていきたいですね。
個人の目標としては、展示会や美術館の企画展示などの空間デザインもやってみたいです。これまで平面のデザインを主にやってきたのですが、これからは平面から空間に延長された自分のデザインを見てみたい。

以前、仕事で山手線ジャックのデザインをやったことがあって、それがすごく面白かったんです。自分の手がけたデザインが立体的に形になって街を横切り、その場所の風景を作っていて。その時の感動が心に残っているので、今度は自分のデザインでその空間を彩って、その場の空気を作るということに挑戦してみたいなと思っています。

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(目を輝かせて語ってくださる)


ーーぜひ見てみたいです。平岡さんは本当にデザインがお好きなんですね。

そうですね。自分がデザイナーに向いているのかは、いまだにわからないです。
でも、好きですね。
うん。
きっとこれからもずっと、好きです。

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平岡さんは、伏し目がちにそう呟いた。

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デザインを心から愛する平岡さん。

そして、デザインチームのことをとても大切に考え、時には厳しく、時には優しく後輩たちを愛情で包み込んでくださった平岡さん。

簡単には進めない「デザイン道」の極め方について、アドバイスをしてくれました。

今回のインタビューで、惜しみない愛情を浴びた後輩たちが平岡さんを慕う理由がわかった気がします。

ひけらかさない、でも確かにそこにある築き上げられた実力を感じさせる言葉たち。
いかがでしたでしょうか。

活躍したいと願うすべてのクリエイターたちに、この愛情が届きますように。

聞き手/柳田一記大西志帆
編集/大西志帆
写真/小野寺美穂
バナーデザイン/惣島厚




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