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【本日発売!】『ハック思考』発売直前インタビュー【後編】「ハック」は多様性に富む変化の多い時代だからこそ必要とされる考え方

満を持して本日発売された『ハック思考』。
もう手に入れた方も多いのではないでしょうか?

著者のKaizen Platform代表取締役の須藤憲司さんのインタビュー後編をお届けします。
前編は下記からご覧ください。

デジタルの黒船到来。幕末を思い起こさせる今、改めて質的豊かさを求めていきたい

――今の日本にハックが必要な理由ってなんでしょう?

須藤さん:今って、西洋から黒船がきた幕末の頃に似ているんですよね。まさに次世代のデジタル技術という黒船がすぐそこまできていて、これからの社会や事業をどう変えていくかを決めて動かなければならない状態です。特に2025年までの5年間が分岐点だと思っていて、日本の歴史の中でも非常に重要な転換期になると思ってます

幕末や明治維新の頃の日本がどのように変化を遂げたかというと、坂本龍馬や西郷隆盛といった体制側ではない人達と、勝海舟といった体制側にいながら変革を推進する人達が手を組むことで成し遂げているんですよね。日本は革命が起きたことのない珍しい国であり、旧体制側の革新派と在野の改革派の人がタッグを組むことで世の中を変えてきた国といえるんじゃないかと思うんです。

当時、福沢諭吉の『学問のすすめ』と『西洋事情』が近代民主主義国家の時代に合わせた考え方や参考事例を知るための指南書となっていました。勉強したら何者にでもなれるチャンスがあると書かれた『学問のすすめ』はベストセラーとなり、西洋の制度や技術を紹介した『西洋事情』とともに、当時の国民に大きな影響を与えています。

今回の箕輪厚介さん編集のもと幻冬舎から出す『ハック思考』は、現代の坂本龍馬や西郷隆盛に向けたビジネス書です。少ないリソースで劇的な成果を出す考え方とともに、ハックのネタをこれでもかと詰め込ました。
また日本経済新聞社から同時期に出す『90日で成果をだす DX(デジタルトランスフォーメーション)入門』は、大企業等で働く現代の勝海舟に向けて書いた専門書ですね。今までのやり方じゃ勝てないと考える旧体制側の革新派の方達に向けた、具体的なビジネス事例や実務の進め方の話が中心です。

――なるほど。デジタル時代の現代において、『ハック思考』は『学問のすすめ』であり『90日で成果をだす DX(デジタルトランスフォーメーション)入門』は『西洋事情』となるわけですね。

須藤さん:はい。両方とも伝えたいメッセージは同じで、これから新しく変わっていくことについてそれぞれの側面から書きました。

日本は昔から知恵の国だと思うんですよね。例えば一休さんのとんち話は、僕からするとまさにハックなんです。屏風に描かれた虎を捕まえるという無理難題を出してきた殿様に対して、「たすきと縄を持ってきてください」と虎を捕まえる準備をし、「さあ、お殿様! 虎を屏風から追い出してください。すぐにこの縄で捕まえてみせます!」と言ってのけた。お殿様は一本取られるわけですが、これって最高のハックですよね。

今は幸せに暮らすのが以前より難しい時代になってきていますし、多様性に富んだ難しい課題が溢れ、それを誰かが解決してくれる時代でもない。真面目に考え過ぎると難しかったり行き詰まってしまう問題がたくさんありますが、一休さんのように視点を変えることで無理難題を楽しんできたのが、日本という国だと思うんです。

こんな時代だからこそ、もう少しだけゆるく考えたり、ときには大喜利のように考えたり。ハックを使ってこれまでのような数字的豊かさではない、質的豊かさの獲得にチャレンジしていきたいと思っています。

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ハック思考に必要なのは「観察・考察・推察・洞察」の4つの力

――ハック思考をするにあたって「今の当たり前を疑う」のが大切だということですが、それは意識をすることでできるようになるものでしょうか?

須藤さん:ハック思考をするにあたっては大きく以下2つのステップがあります。このステップを踏むことで物事を変えていくのが、すごい大事なんですよね。

①人と違う規則性や法則を見つけて
②その規則性や法則を構成するシステムのスキマに介入する

目の前で起きている事象について「人と違う規則性や法則を見つける」ことがハックの第一ステップです。そして、まだ誰も気付いていない(人とは違う)規則性や法則を新たに見つけるには、まずは既存のルールを知っていなければなりません。その既存のルールを知るためにも「今の当たり前を疑う」ことが必要不可欠になるんですよね。

これは単純に意識をするというよりは、練習あるのみですね。練習には「観察・考察・推察・洞察」の4つの察する力を使います。でもこの練習も全然特別なものではなくて、皆さんも昔子供の頃にアサガオの成長日記をつけたことがあると思うんですけど、まさにそれです。毎日毎日アサガオを観察して、芽が出た、双葉が出た、つるが伸びたと書くあれなんです。

【観察】違いを発見する(芽が出た、双葉が出た、つるが伸びた)
【考察】法則性を考えたり、発見する(アサガオは毎日朝に花が咲くなあ)
【推察】法則性が他に転用できないかを考える(じゃあ他の花も朝に花が咲くのか?)
【洞察】観察と考察と推察を掛け合わせて、今目の前で起きた事象以外のルールや因果関係を発見する(アサガオは朝に花が咲くから、朝に飛んでいる虫を媒介して受粉しているのか?)

洞察結果の結論からいうと、アサガオは虫がいらない自家受粉の花です。その解に至るまでは本書にも軽く記載しましたが、そもそもアサガオの成長日記をつけた人全員が、アサガオの自家受粉という事実に辿り着くわけではないですよね。

その事実を発見するまで、観察して考察して推察して洞察して考えた人がいるから、他の人は知らなかった法則性が見つかって、言われてみれば確かにそうだねと思えるアサガオの自家受粉という事実が、今の当たり前になっているんです。

だから、僕はこの4つの察する力を使った日々の練習が、ハックにとってすごい大事だと思っています。

――たしかに目の前の事象で何度も練習を重ねることが、身につけるために必要そうですね。ちなみに須藤さんはどういうところでハックを使っていますか?

須藤さん:これまでの方法じゃ解けない問題がでてきたときに、ハックを使っています。そんなときは、解決策を疑うのではなく、問題そのものを疑うようにしていますね。

本書にも詳しく書いたのですが、「エレベーターの待ち時間が長い」というクレームをハックで解決するすごい有名な話があって。エレベーターの速度や台数を変えるのでは費用対効果が合わず解決策が行き詰まっていたところ、会議に参加していた若者が「エレベーターの待合室に鏡を置いたらどうですか?」と提案し、実施後一切クレームがなくなったというお話です。

これってすごく面白いですよね。だって待ち時間は一切変わらないんですから。要は「エレベーターの待ち時間」が問題なわけではなく、「エレベーターを待っていると認識している時間」が問題だったんです。だから「退屈な待ち時間を減らす」ことでクレームも減ったというわけですね。

僕はまさにこういうのがハックだなと思っていて、「その問題は本当に合っているのか?」「本当は何が問題なんだろうか?」と考えること自体がすごい大切だと思うんです。ハック思考がまだなんとなくぼやけている方は、まずはここからやってみてほしいですね。

エレベーターの待合室に鏡を置くのも、聞けば「ああそんなことか」と思うようなことですが、それで解決するんだったらものすごくいいじゃないですか。まさに低コストで最大の成果を出した事例だと思います。日々の問題をどうやって大喜利に変えるかっていう思考がいいと思いますね。

――面白いですね、大喜利やってみたいと思います。

須藤さん:ぜひ! 他にも、バンクシーという有名なアーティストがいますが、彼もまさにハックを実践しているんですよね。彼は「芸術テロリスト」とも呼ばれていて、2005年に世界的に有名な美術館に解説のキャプションとともに無許可で自分の作品を勝手に飾るということをしています。

美術館は、作品を盗まれないようにするための警備システムは確立されていますが、作品を置かれることに対しては想定されていないですよね。そもそも何かを持っていく人がいないか?はすごく警戒しますけど、何か置いていく人がいるとは誰も思わない。彼はそこのスキマをついて自分の作品を置き一躍有名になっていった。まさにハックといえるでしょう。

もちろん彼の作品自体が素晴らしいのはありますが、情報が溢れる現代では、単に素晴らしい作品を作るだけではなかなか注目してもらえないんです。なぜかというと、素晴らしい作品を作れる人はたくさんいるからです。だから、他の人達と差をつけるためにはどうすればいいかというと、やはり「スキマをどう狙っていくか」になります。既存のシステムや法則を逆に利用して、自分の得たい成果を高めるにはどうすればいいかを考えるのって、すごい大切なんだなと思う事例ですね。

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今、私たちに何ができるか。変化が目まぐるしい時代に対応するためには、日頃からの工夫が備えになる

――今まさに、コロナウイルスの問題で突然のリモートワークや学校の休校などで大変な思いをされている方も多いと思います。

須藤さん:突然始まりましたからね、みなさん色々と本当に大変な思いをされていると思います。でもこの状況も、もし事前に準備や練習ができていたらかなり違っていたのではと感じるところもあり。たとえばオンラインでも対応できる準備ができていた会社と、全く準備ができていなかった会社では、その差は歴然だったのではないでしょうか。

ある組織が方向転換をしようと思ってからその動きが完了するまでをアジリティ(俊敏性)というのですが、その期間が短い方がより強い組織といわれていて。あらゆる局面で状況や環境変化が頻繁に起こるような時代に突入している今。方向転換をしなければならないような状況に対する備えは、個人にも組織にも求められています。

今後のためにこの俊敏性や機敏性を高めておくにはどうすればいいかというと、ちょっとの工夫を毎日積み重ねることが大切です。たとえば「何を変えたら劇的に変えられるだろう」と考えて世界を見つめる習慣を持つことをおすすめします。日頃からやっていれば、変化が訪れたときに立ち止まることなくパッといけますし、その習慣があれば、みなさんの周りの問題や悩みも良い方向に向いていけるんじゃないかなと思うんです。

『ハック思考』は、みなさんの日頃の悩みや課題と照らし合わせながら読んでもらって、数あるネタの中から「この問題、こういう風に考えたり、こういう風にやったらできるかも」とヒントにしてもらいながら読んでいただき、日々の仕事や生活の中で大いにパクっていただけたら著者として冥利に尽きます。

――ビジネスシーンを中心に、本当にたくさんのハックの考え方や切り口や事例が掲載されているそうなので、ぜひ参考にさせていただきたいと思います。『ハック思考』はネタ帳だとおっしゃる意味がよくわかりました。本日はお忙しい中ありがとうございました!

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取材当日は書籍プロモーション用の動画撮影がメインでしたが、「まじめな話をしちゃったなあ」と、カメラが止まってからもいろいろ笑顔でお話してくださった姿が印象に残る取材でした。

発売日前日まで秘密にされてきた表紙も解禁され、「ハック思考」で検索するとあちらこちらで話題になっていますね!

本屋に行かれた方はこの表紙に仕掛けられたハックの効果を、ぜひその目で確かめてください。

まだ手元にない方も、『ハック思考』の関連noteを読みつつ「#ハック思考」でつぶやきつつ、一緒に盛り上がりましょう!

写真/森川亮太
バナー/松儀愛侑
協力/阿部愛荒木利彦鹿田正弘田中ゆかり氷上太郎柳田一記
取材・執筆/土居道子

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