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ブランド人になれ!

田端信太郎×箕輪厚介 対談

今日も読んでくれよな!!

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スマホも、パケット放題もない時代に作った“紙のプラットフォーム”

箕輪:田端さんが『R25』はじめたのっていくつぐらいの時ですか?

田端:27か8か。

箕輪:若っ! 優秀! 原案はなんで思いついたんですか?

田端:僕がリクルートに入った01年って、ネットバブルのピークが過ぎた後であんまり新しい投資ができていなかったんですよね。当時、リクルートの保守本流は紙の時代で、ネットってのはインチキだ、ほらバブルが弾けたみたいな感じでやいのやいの言われてて。

で、当時の逆風の中で始めたのが『R25』で、最初は紙のポータルサイトを作ろうと考えていました。

箕輪:どういうことですか?

田端:要は毎日、新聞のように無料で読めるものが駅やコンビニに置かれていたら、みなさん一応手に取りますよね。当時ガラケーはあったけど、パケット定額も少なかった頃だし、スマホなんか無いから。それで通勤時間に読んでもらったらいいじゃないかと。

箕輪:あ、ハックしたんですね。

田端:それと当時大真面目に言っていたのが、無料メディアの方がコンテンツにお金がかけられるということ。

箕輪:へぇー。

田端:たとえば実売10万部くらいの雑誌があるとして。値段が一冊400円として、取次分を無視して(出版社の)手取り400円としたら、雑誌販売収入が(10万部×400円で)4,000万円。それで、超イケてる雑誌だとたぶん広告ページが1対1くらいで入ってて、1ページあたり広告単価が……

箕輪:大体5~600万円くらいでしょうね。

田端:仮に10万部として、1ページ80万円で広告が50ページ入っているとしたら、広告収入が4,000万円。一冊400円で10万部売れてるとしたら販売収入も4,000万円。つまり広告と販売が1対1。これは今どきだとありえないくらいかなりうまくいっている雑誌だと思います。

箕輪:うん、ありえない。

田端:編集ページが100ページあったとして、ページあたり制作費が、めっちゃ豪華にやっているとして10万円くらい。

箕輪:ページあたりなら、そんなに高くないですね。

田端:じゃあ8万円くらいかな。めちゃくちゃリッチに作っているとしても。それで800万円じゃないですか。これを「価格を無料化したら部数が10倍になりました」と仮定すると…これ、ちょっとあとで間違っていたとわかるんだけど(笑)。青臭い前提だけども、理論的には部数が10倍になったら、広告収入も10倍になっていいよね。

箕輪:理論的にはそうですね。まぁ確かに間違ってるけど(笑)。

田端:うん。それで理論的には正しいから27、8歳の若者としては「なぜこうなってはいけないんだ」と考えた。だって広告収入が10倍になるわけだから4億円じゃん。だから販売収入の4,000万を捨てたって3.6億円が残るわけだから…

箕輪:いや、優秀!

田端:ですよね。だから「誰がどう見てもそう思わないですか?」とよく周囲に話してたのを、今思い出しました。

無料媒体で読者をセグメントするには

箕輪:田端さんの理論で作ってみるとして、「無料だから誰が手に取るかわからない」とか言われませんでした?

田端:『R25』だから、いかに若い男しか手に取らないようにするかを考えたんですよ。エロネタ入れるとナショナルブランドが入れなくなるから、エロネタを封印してなるべく若い男性しか手に取らないようなコンテンツを作って。

箕輪:そうか、逆にコンテンツでセグメントしたのか。

田端:そう。それで広告代理店を回って、この話を大まじめにしたんだけど「ハァ?」って反応ばかりで。広告代理店の雑誌セクションなんかは、文化として1ページの広告料が200-300万円っていうのがある。

だから理論じゃなく絶対額として、1ページ1,000万では売れない。「田端さん、その額で売りたかったら『新聞』という扱いにしないとダメだ』って言われましたね。

箕輪:要はサラリーマン的な人は「新聞だったらこう」っていう単価がある。

田端:うん。だから既存の慣習の中でどう位置づけられるかが大事だなと。それで最初は新聞にしようとしたんだけど、これ怒られるかなと思って。

箕輪:新聞社の競合になるととんでもないことになるってことですね。

田端:あとは、新聞社の規模でやるとなると、印刷工場のキャパとか物流が大変。自前のトラックと印刷所持たないと無理で。週刊誌規模なら印刷会社の空きの中で刷れるからリスクもないけど。レピュテーションリスクといったら美しいけど、新聞社敵に回したら恐ろしいし、印刷設備を自前でリスク取れないから、その点は妥協しましたね。

田端信太郎から見る livedoor

箕輪:リクルートを辞めて次にlivedoorに入社しましたよね。東京地検が捜査にきた時はどんな雰囲気だったんですか?

田端:ああ、あの時はなんか、NHKで「livedoorに東京地検が強制捜査」ってニュース速報が流れて。あれ、夕方の3時半か4時くらいだったんだけど、実際に東京地検の人たちがガサ入れに来たのって5時半とか6時なんですよ。
だから2時間くらい間があって、「来るのか来ないのかわかんねーな」ってなった。

箕輪:来るなら来てくれよ、ゴハンの予定があんだぞみたいな(笑)。

箕輪:その時ホリエモンはどんな感じなんですか?

田端:堀江さんは30メートルくらい向こうの島だったからよくわからなかったけど、報道部門の記者は色めき立ってて。強制捜査中の捜査官に「カメラで撮って記事にしていいですか?」って声かけるから、地検の人に「ダメに決まってるじゃないか君」って怒られて。

箕輪:お前らどれだけトガってるんだと(笑)。

田端:「お前ら社員だろ」みたいな。「いやそんなの関係ないですよ、僕ら記者ですよ報道の自由ですよ」みたいな。

箕輪:びっくりですよね。しかもホリエモンが記事にしていいって言ったんですよね。

田端:そう。堀江さんが「記事にしていい」って言って、それで地検が怒るから、僕が間に立ったりして。

箕輪:そうですよね。

田端:記者からしたら他のメディアが絶対に撮れないトクダネが目の前で繰り広げられてるわけだから、そりゃ色めきたつよね。当の本人も「俺がこんなに体を張ってネタを作ってるのにどうしてページビューを稼がないんだ」とか。

箕輪:ブランド人すぎる!! 逆忖度ですね!

「個」を企業として経営し、「会社」との関係性を見直す
田端:でもトップが逮捕されても、案外なんとかなるんですよね。

箕輪:それってホリエモンがいなくても組織が回るっていう?

田端:組織っていうのは生き残ろうと自発的にみんな考えるから。それが分かったのは面白かったです。

箕輪:でも人とか結構辞めたんじゃないんですか?

田端:それはいたけど、辞めていく人は辞めていけばいいと思うから。僕は逆にそこらへんから属している会社と自分自身は一心同体じゃないんだって思い始めて。

箕輪:そこだ。

田端:やっぱり一流企業に入ったと思ってる人は会社にスキャンダルあると「こんなはずじゃなかった」とか言ってやめる。別に自分と会社は別人格だから、むしろ僕からしたらある意味チャンス。だって会社は取引先だから、取引先が困ってたらそれってビジネスチャンスじゃないですか。

自分という名の企業を経営するっていうことは、サラリーマンとして属している会社はただの取引先になるってことですから。むしろビジネスチャンスですよ。

箕輪:それ死ぬほど思う。「会社潰れるらしい」って会議はワクワクする(笑)。

田端:僕がちょっと前のシャープとかいまの東芝とかにいる若い人たちに対して思うのは、今さらやめるくらいなら最後までいろと。livedoorだと事件前の取締役とかが全部いなくなっちゃったから、なんか知らないけど僕みたいのが執行役員になった。

箕輪:なるほど! 企業が別人格って考えた時に、斜陽とかやばい部署とかって最高のブランドになるチャンスですよね、いくらでも暴れられるし。

田端:すでにみんなが認める一流企業で株価が高くなってるところに今から後追いで入るのはあんまり意味がない。それよりは「ええ? あんなとこなんですか?」って言われるところに行くほうがいい。

(次回に続きます)



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