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「未来」を射る 三田紀房作『インベスターZ』#熱狂書評

現在、箕輪書店にて全21巻がセットで販売されている『インベスターZ』。ドラマ初回放送日である7月13日に向けて、徐々に盛り上がってきています。

そしてなんと、取り扱い書籍3冊目の『インベスターZ』には、初のオフライン特典もついています。

到底見逃すことのできない特典が明らかになる中、5月に始動した企画「熱狂書評」も、この企画を盛り上げていきたいと思います。

早速タイムラインに流れる、一言書評。

『インベスターZ』では、心に残る名言も多くあることから、それらを引用する形の書評も見受けられます。

そして、ご紹介したいのは、こちらの熱狂書評。

箕輪編集室メンバーでありPRチームのリーダーでもある小木曽一馬さんの、熱狂書評です。

「なぜ今、普通のサラリーマンが『インベスターZ』を読むべきなのか」と題したこの熱狂書評ですが、7つの目次から構成される一つの書籍のような書評です。

そもそも『インベスターZ』とは何か? から始まり、数々の名言を紹介する中で、タイトルにあるように「サラリーマンが読むべき理由」を結論として据えます。

特に、まだ本書を未読の人は、こちらの熱狂書評をぜひ参考にしてみてください。

続いての熱狂書評は、清水翔太さんが投資の「損切り」にスポットライトを当てて書いたものです。既読の方も、ぜひご参考にしてみてください。

※損切り:投資家が損失を抱えている状態で保有している株式等を売却して損失を確定させること。

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つまり、「生きる」ということ

僕は、映画が好きだ。高校のはじめの頃から、ずっと好きだ。有名なものは、ひと通り観てきた。だからこそ、「まだ光が当たっていない隠れた名作」を見つけたいと思う瞬間がある。

あえてレビューや評価を見ず、表紙やパッケージだけを見て、直感で「なんか良い!」と思ったものを観る。結果、やはり空振りすることが多い。開始10分ほど観て、「あ、これはハズレだな」と悟る。

そんなとき僕は、「せっかくお金を払ったし」と自分に言い聞かせ、エンディングまで観ていた。しかしここ最近は、もう見切ることにしている。そんな風に習慣が変わったのは、ある概念を思い出したからだ。

「サンクコスト(埋没費用)」

大学の「経済学」の授業でたまたま習った概念だ。「サンクコスト」は、英語で「Sunk Cost」と書く。「Sunk」とは沈むという意味であり、沈んでしまって取り返すことのできない状態であることを示している。

埋没した鑑賞料

この概念を思い出したのは、漫画『インベスターZ』のあるシーンを読んだときだ。

野球部に入る予定が、思わぬ勧誘によって「投資部」に入ることになった主人公の財前孝史は、神代圭介を中心とした先輩数名に、ある映画を観るように命じられる。

「この映画を観ないとラーメンを奢らない」という意味深な理由を突きつけられ、渋々映画を観ることになった財前の感想はこうだ。

“うわぁ…何これ。全然つまんない。こんな面白くない映画をボクに観せる意味あんの?”

率直な感想が吐露された直後、財前はほとんど躊躇なくシアタールームを跡にする。鑑賞時間は、通常の映画の約6分の1にあたる18分だった。

普通の人なら、どう判断するだろうか。「でもお金払っちゃったし…。一応、最後まで観るか…」とならないだろうか。

これは神代らによって、投資家になるために最も重要な要素とされる「損切り」ができるかどうかを試されているシーンだ。「損切り」、まさに「サンクコスト」だ。

つまり、「映画が面白くない」と思った時点で、当人にとっては「無価値」であり、それに時間を投資することは、経済学上「無駄」とされる。「鑑賞料を払っている」という事実は動かせないので、悔やむこと自体に意味がないのだ。

中学生にしてこの感覚が既に備わっている財前は、「投資の神様」といわれるウォーレン・バフェットのような天性の才能をもっているのかもしれない。

「人生」をよむ

『インベスターZ』は、「invest(投資する)」を由来にしていることからも分かるように、「投資」の漫画として語られることが多い。だが、ページを繰れば繰るほど、「投資」を題材にした「人生」の漫画であることが分かる。

バフェットが、

“大事なのは、自分が好きな事をとびきり上手にやることです。お金はその副産物に過ぎません。”

という言葉を残している通り、この『インベスターZ』でもお金は副産物として扱われている。「投資」という経済活動を通して、財前自身の「人生」を見つめる物語になっている。

公務員の父に専業主婦の母、年の離れた妹、あれこれ指示してくる先輩、偶然出会う謎の美少女…。それら周囲の人々が、「お金」に対して個々の考えを持つ。会う度、話す度に、財前の心を揺さぶり、「人生」について考えるきっかけを与える。

と、格好つけて書いてはみたものの、投資について無知な僕は、「人生」うんぬん以前に、「経済の勉強になった」という感想が一番大きい。

「サンクコスト」を習った経済学の授業では、「ミクロ経済」「マクロ経済」「公共経済学」…などと細分化されてたが、まとめて『インベスターZ』としてもらいたかったところだ。とは言いつつも、「もう少し勉強しておけば良かった」という純粋な後悔の方が先に来てしまう。

だが、「後悔」なんてものは、経済学では無価値に等しい。

“ああしておけばよかったとくよくよ考えても、過去を変えられるわけではない。あなたは前を向いて生きるしかないのだ”

と、バフェットはいう。悔やむべき過去なんてない。それはもう既に埋没したものだと。だから今ある資源を、今以降に向ける。それが、「投資」というものなのだろう。そう考えてみると、何だか「投資」が、極めて人間的な営みに思えてきた。

食べたり、寝たり、友達と会ったり、それらと何ら変わらない。「生きる」ということ、そのものなのだ。

清水 翔太
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過去を振り返り、後悔する。そんな人間のごく当たり前の思考を、「経済学」の観点からことごとく否定する、この『インベスターZ』。

小木曽さんの熱狂書評にも出てきた、1巻の名言がふと思い出されます。

”的外れなところで頑張ることに、価値なんてない”

神代のこの一言は、つい「頑張ること」自体を正当化してしまう人間にとって、残酷な一言かもしれません。しかし、最も残酷なのは、自身の時間を無駄にしてしまうことではないでしょうか。

つまり、神代のいう「的」は常に「未来」にあるということ。「時間」という矢を使い、正確に「未来」を射る。それが、「投資」の本質なのかもしれません。

そうした人生の気づきを得られる、この『インベスターZ』。ぜひ、箕輪書店を見に行ってみてはいかがでしょうか。

そして引き続き、「熱狂書評」お待ちしてます! 一言書評でも、名言を引用したものでも、構いません。ぜひ、「#熱狂書評」をつけて気軽に呟いてみてください!

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テキスト 清水翔太

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