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【尾原和啓×箕輪厚介】-前編-稼ぐために働きたくない世代の解体書『モチベーション革命』

【前編】「乾けない世代」を解く、幸せの5要素
【中編】  新しいルールを作るキングコング・西野亮廣 肩書経済 vs 信用経済【後編】  ゼロになる勇気

2017年9月21日、箕輪編集室にて、『モチベーション革命』の著者である尾原和啓氏と、編集者の箕輪厚介氏によるプロモーション会議が行なわれた。前著『ザ・プラットフォーム』『ITビジネスの原理』が2作連続Amazon Kindle総合ランキング1位の尾原氏と、堀江貴文氏の『多動力』前田裕二氏の『人生の勝算』など、数々のヒット作品を手がけてきた箕輪氏。この2人がタッグを組み、本著『モチベーション革命』で、人間のモチベーションを軸に、世代間の「考え方」や「生き方」の違いを、分かりやすくお伝えする。

「乾けない世代」を解く、幸せの5要素

箕輪
前著『ザ・プラットフォーム』『ITビジネスの原理』は、ITど真ん中だったんですが、今回の『モチベーション革命』は、今までの尾原さんとは違うテーマで書いて頂きました。テクノロジーも背景にありながら、人間のそのモチベーションから見た世代間の「考え方の違い」とか、「働き方」を論じてもらっています。尾原さんにインタビューしていく中で見つけたテーマが、「稼ぐ為に働きたくない」という価値観を持った30歳台以下の方々ですね。

尾原
はい。「乾けない世代」っていう言い方を箕輪さんが定義してくださったとき、ばーっと視界が広がりましたよね。

箕輪
この「乾けない世代」が、僕ら世代のことをめっちゃ言い表していて、感動したのが、人間の幸せは5つの要素から成っているというところ。

「達成」
「快楽」
「意味合い」
「没頭」
「良好な人間関係」

僕らの上の世代は「達成」「快楽」を重視してる。なぜならば、生まれた時に何もなかったから。要は、死ぬほど努力して何かを「達成」し、その達成したことによって物理的だとか、肉体的だとか、色んな「快楽」を得る。

ただ、それより下の、生まれた時に何でもある世代は、「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」を重視する。「何のために働くか」、「働いていることに没頭できるか」。「好きな人と、気が合う人と、刺激し合える人と働ければいい」という、この3つを重視するのがこの下の世代。それをちゃんと言語化して言ってくれる人は今までいなかった。この言語化が大事な理由は、「自分が何のために頑張れるか」を把握していることで、自分をコントロールしやすくなる。

組織論としても、上の世代が「こいつ何でこんな達成する気ねーんだ」って思った時に、実は「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」の方が重視しているんだよ、とこの本があれば伝えられる。そうすれば、上の世代の人が「何でこいつこんな残業しねーんだ」「何で死ぬ気で頑張んないんだ」って思った時に、より理解して、その下の世代の強みを引き出せるかなと思った。だからこの本を書いてもらった。

この本がたぶん刺さるのは、まさにここにいる人たち30代とか。こういうところに来る人は「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」を重視しているんだと思う。「分かる分かる。僕金のために働きたくねーし」っていう人に、まずは刺さって欲しい。そしてその世代の人が「自分たちのことを『モチベーション革命』が言い表してくれてる」と、上の世代にもこの本が伝わっていって欲しい。

今の世代を理解できないのは、ルールが違うから

尾原
最初に言っておきたいのは、働く上で目指すべきゴール・勝ち方というルールが変わったこと。そしてゲームのルールに合わせて、僕たちは心も出来上がってるっていうこと。上の世代の人は今の世代の人たちを「理解できない」だけで、「今の世代がダメなわけじゃない」っていうことが大前提なんですよ。

言い方は悪いんだけど、上の世代のゲームって、シンプルだった。日本は戦争で焼け野原になった。その焼け野原から、こんだけのビルを作るという明確な目標があった。例えばトヨタであれば、日本の中で移動がもう大変で動けなかったのが、車がつくられたことで、家族で海や山に行けるようになった。トヨタで働いているだけで、誰々ちゃんのところの車のお陰で、週末家族みんなで旅行できてすごい楽しかったと言われる。「ないものをある」にするだけで、達成感が得れたし、それによって家族の絆も増えるから良好な人間関係も生まれるし、その時は、ないものの状態の中から日本って始まったから、ないものをあるものにすることに時間を注いでることがかっこいい。

尾原
だから家を顧みず、パパは仕事ばっかり行ってても、「パパがああやって働いてくれてるから、私たちの家はあるんだよ」「ほら新しいカラーテレビ来た」「ほら新しい冷蔵庫来た」っていう風に「ないものがある」っていう風になっていく達成が身体的快楽とも結びつきやすいし、それが、「パパがかっこいいよね」って家庭の中でも認められた。社会の中でもそういう遮二無二に「ないものをある」にしてる奴が出世していくから、ものすごいゲームのルールがシンプルだった。

「ない」時代から「ある」時代へ

尾原
今だって、シリアには問題あるし、東チモールとか言えば飢えてる人たちはたくさんいるし、今でも世の中には、「ないもの」はある。でも、少なくとも僕たちの日常生活の中では「ないものをある」にして、簡単に手に入れられる達成ってもうそんなにないんですよね。

箕輪 
うんうんうん。

尾原 
そうすると、僕たちはちょっとした変化の中にやっぱ意味合いを作っていくことに目を向けるようになる。今僕たちがやってることが、結果的にこの街をよくすることだったり、人を笑顔にすることだったり、お年寄りの方の生活が楽になることだったり、どうやって「ないものをある」じゃなくて、「あるものを少し良くする」とか、あるものの中にほんのちょっと遊びを入れてあげることでみんなが生き生きすることだったり、どうやって意味合いを作っていくかが、大事なんじゃないかって思っていて。

日本は戦争で焼け野原になってから、当時の世代が「ないものをある」にすることで、アジアの奇跡って呼ばれる急成長ができちゃったもんだから、こっちのOS(「達成」「快楽」)が強すぎることの色んな影響がでてしまっているんですよね。

今、”島耕作”世代が変化を求められている

尾原
今の時代はもう「ないものはない」前提のOSになっている。今日、久しぶりに島耕作読み返したんすよ。島耕作って、課長になるのが34なんですよね。それで結構早いって言ってる。だから僕の観測だと、この「ないものがあった」世代というのが37より上で、この世代は「達成」「快楽」を求めている。

箕輪
年齢的に、NewsPicksの佐々木さんとか、コルクの佐渡島さんあたりが境目になるんですね。

尾原
両方若い人でしょ。もうちょっと上の年齢になる部長は「達成」「快楽」の人なんです。で、係長とか、主任とか、現実、社会を回してる人たちは今のOS(「意味合い」「没頭」「良好な人間関係」)なんですよね。だから、一番齟齬が激しくなっちゃってて。

箕輪
上司世代が「達成」「快楽」を軸に指示を出すから、元々モチベーションとか求める人生の価値観が違うのに指示出してて不都合が起こりやすいってことですよね。

尾原
そうそうそう、単に上の世代からしたら、さっき言ったように、「ないものをある」にするのは当たり前だろうと、だから「売り上げを上げろ」とか言う。

箕輪
「とにかくコピー機売ってこい!」って話ですよね、いや、誰もコピー機欲しがってませんけど(笑)

尾原
っていう話だったりとか、「じゃあ達成したら焼肉食いに行くか!」と上司が言っても「別にお前とは焼肉食いたくねえよ。僕、好きな友達と行きたいんですけど」と部下は思ってるとか。

箕輪
いや、僕ね、『モチベーション革命』の中で個人的に一番好きなのが「サイゼリヤのワインで十分だ」ってところ。報酬の上げ方もずれてて、「お前頑張ったら超高い店連れてってやるよ」って言っても、「いや、ちょっと家で普通に食いたいっす」って思ってるってことですよね。

尾原
そうそうそう。だからちゃんと上の人が、下の人たちがやる気になるような、「ちょっと違う新しい製品の見方を試す上で、試金石になるからやってくれ」って意味合いを提供すればいいけど「今お前がやれることってここまでだけど、この仕事を通したらこのレベルまでいけるんだよ」「だから今ちょっと沈むかもしんないけど、毎日毎日磨いてたらこうやって伸びてくから」「こう伸びること楽しいだろ、磨くの楽しいだろ」っていうことを上の人が言えばまだ心動くんだけど、残念ながらそういう脳みその快感が育ってないから、実際には動かない。

編集:松下友紀 林千尋 福尾容子
写真:大竹大也

>【中編】 新しいルールを作るキングコング・西野亮廣 肩書経済 vs 信用経済

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