『東大から刑務所へ』0章 無料公開!
どうも、時間総額が上がりまして、現在1201億円の箕輪です(タイムバンク9/24時点)。
『東大から刑務所へ』が昨日から、店頭に並んでおります。
まだ、手に取っていないという奇特な方に向けて、第0章を無料公開します。
本編が始まる前の、出所直後の井川さんをお出迎えしたときのお話です。
第0章 おかえり井川さん
〜出所直後の井川さんをお出迎え〜
カジノ法案可決の夜に刑務所からシャバへ
堀江 井川さん、長らくのお勤めご苦労さまでした。
井川 最高裁判所で懲役4年の実刑判決が確定したのが2013年6月26日、いろいろ身辺整理してから「アカ落ち」(下獄)したのが2013年10月3日だったかな。
堀江 いきなり刑務所行きではなくて、いったん東京拘置所に移送されたんですよね。
井川 そうそう。東京地検特捜部に逮捕された2011年、1カ月だけ暮らした東拘に2年ぶりに帰ってきた。2013年10月末に東拘から喜連川社会復帰促進センター(栃木県さくら市)に移送されて、喜連川で3年2カ月の刑務所暮らしだったのかな。
堀江 井川さんが仮釈放されたのは、2016年12月14日でしたか。クリスマス前にシャバに出てこれてラッキーでしたよね。あんなところで4年も連続で年を越したんじゃ、たまったものじゃない。それにしてもこの日の深夜、衆議院でIR(=統合型リゾート)推進法案(通称「カジノ法案」)が可決されたのはすごい偶然でしたね。
井川 マカオやシンガポールのカジノで累計106億8000万円を熔かした私だけに、安倍晋三総理からの意味深な出所祝いだったのかもしれませんな。
ムショから出て真っ先に食べたマクドナルドの「てりたま」
井川 たかぽんは長野刑務所にどのくらい入ってたんだっけ。
堀江 井川さんが逮捕される5カ月前の2011年6月20日に、長野刑務所(長野県須坂市)に収監されました。仮釈放されたのが2013年3月27日だから、刑務所暮らしは1年9カ月ですかね。
井川 たしかあのとき、出所してマクドナルドの「てりたまセット」を即行で仕入れて食べたのがニュースになっていたよね。
堀江 刑務所にいて、もっとも恋しいのは、味が濃い食べ物だった。あそこにいると、とにかく味が濃いものを食いたくなる。
井川 たしかに、喜連川のメシも味がやたらと薄かったな。
堀江 刑務所内で味が濃い食べ物って、甘いものしかないんですよね。塩分濃度が厳密に制限されているから、塩味がきいた食べ物なんて、たまに出てくるレトルト食品とか、サバの味噌煮くらいしかない。カレーですら薄味のスープだから、ふざけんじゃねえといつも思ってた。
シャバで初めて口にした焼き肉とシャンパン「クリスタル」
堀江 井川さんは、3年2カ月ぶりに戻ったシャバで一番最初に何を口にしましたか。
井川 出所したその日はムチャクチャ忙しかったのよ。
私の場合、長野から東京ほど距離は離れていないけど、それでも栃木から東京都心までは車を飛ばして2時間以上かかる。
東京へ着いたら、まず真っ先に霞が関の法務省内にある更生保護委員会へ出廷した。入所中、長らくお世話になった弁護士の古畑恒雄先生にご挨拶しなきゃいけないし、散髪もしたかった。刑務所に入っている間に、髪の毛が真っ白になっちゃったからね。
一番恥ずかしかったのは、刑務所内で差し歯が抜けちゃったこと。歯抜けのみっともない姿を写真に撮られるのは不愉快だから、予約しておいた歯医者へあわてて出かけた。
堀江 僕も刑務所内でトラブって歯抜けになったけど、治療を受けて差し歯を入れられましたけどね。
井川 私の場合、差し歯が認められなかったんだな。そんなこんなでバタバタしているうちに、ご飯を食べそびれたまま夜になっちゃった。シャバで初めての食事は、四谷の焼き肉屋「名門」へ出かけて食べたんですよ。
堀江 井川さんはかなりの飲兵衛だから、3年2カ月ぶりの酒は甘露の楽しみだったでしょ。1杯目の酒は何を飲んだんですか。
井川 シャバで口にする1杯目がビールというのも癪に障るから、1杯目の酒はルイ・ロデレールのシャンパン「クリスタル」を選んだよ。「出所後1杯目の酒は五臓六腑に染み渡る」なんてオーバーなことを言う人もいるけど、感動は全然なかった。
堀江 刑務所生活が長く続いて、味覚が少しおかしくなっていたのもあるかもですね。僕の出所パーティのときも友だちが来まくってドンチャン騒ぎだったから、食ったり飲んだりするどころじゃなかった。
井川 ああ、それは私も一緒かな。焼き肉屋に来てるのに、みんなとしゃべるのに忙しくて肉どころじゃない。
堀江 肉やシャンパンよりも会話に飢えてるから、とにかくしゃべりたくて仕方なかったでしょ。久しぶりに、面会室以外の場所でかわいい女の子と会えるのもアガる。
井川 こっちの出所パーティは、男の経営者だらけだったけどね。
堀江 もう、しゃべりたくてしゃべりたくてしょうがなくて、全然寿司どころじゃない。
井川 私も、肉は本当にチョコっと食べただけじゃなかったかな。
堀江 僕のときも、シャンパンを飲みながらひたすらしゃべってた。僕が出所した夜は西麻布の「すし通」という寿司屋に行ったんですよ。「堀江さんが帰ってきたときには、最高のネタを用意してお待ちしてますから」と言ってた大将がかなり張り切ってたんだけど、僕が全然食わないから、軽くムッとしてた。
井川 寿司や焼き肉やシャンパンよりも、他愛もない会話、気の置けない仲間と過ごす時間のほうがよっぽどありがたいんだよね。刑務所に何年も入ったところで、そういうシャバっ気はなかなか抜けるもんじゃない。
堀江 出所祝いの焼き肉パーティのあと、2次会はどこへ行ったんですか。
井川 西麻布までカラオケに繰り出した。さすがに朝までコースというわけにはいかなくて、夜中の1時半ころ解散したけどね。
堀江 断酒すると肝臓が復活するという説もあるけど、井川さんはどうでしたか。
井川 ひどい目に遭いましたわ。私はもともと酒が強いほうなんだけど、ほぼ毎晩飲み歩いていたものだから、γ―GTPの数値がかなりまずいことになっていたんですよ。
3年2カ月の獄中リハビリで肝臓が復活したと思っていたんだけど、入所前とは比べものにならないほど酒に弱くなっていたらしい。
シャバに出てきて翌日の朝は、人生最悪と言うほどすごい二日酔いになっちゃった。なにしろスマホを触る気すら起きない。病院に出かける元気もない。
ほぼ48時間何も口にできなくて、ずっと横になっているしかなかった。ベッドに寝ていると、胃液がすぐそこまで上がってきて吐きそうになるわけ。胃液の酸でやられたせいか、ノドが痛くて痛くてたまらない。声はガラガラになっちゃった。
堀江 急性アルコール中毒に似た症状だったのかもしれませんね。
井川 何も口にしないわけにもいかないから、丸2日たってから近所の喫茶店に出かけたわけですよ。そこで定食でも食べて調子を戻そうと思ったんだけど、味噌汁を一口飲んだ瞬間「うわっ!」となっちゃった。
ノドの奥をタワシでこすられているような、刺すような痛みで味噌汁すらノドを通らない。
結局、出所翌日から3日間はバナナもノドを通らなかった。リンゴジュースやゼリー状の流動食をちょっと口にしながら、ほうほうのていで過ごしましたよ。
シャバにいたころは、毎日夜中まで遊び歩いてもまったく問題なかったのに。3年2カ月の刑務所生活は、私の肉体をそれなりに蝕んでいたらしい。
刑務所なんざ、そうそう長く入るもんではありませんな。
そうそう長く入るものではない刑務所で、二人の元東大生は何を見たのか?
続きは本書でお楽しみください!
『東大から刑務所へ』堀江貴文・井川意高