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刺青師 箕輪厚介 『死ぬこと以外かすり傷』 #熱狂書評

発売前から怒涛の勢いで売れ続ける箕輪厚介著『死ぬこと以外かすり傷』(以下、死ぬカス)
なんと発売開始からたった5日間で5万部を達成しました!


(前回の熱狂書評記事)

今回は箕輪編集室ライターチームリーダー橘田佐樹さんの熱狂書評です。

箕輪編集室メンバーに彫り込まれた刺青「変わり続けることをやめない」。

それは、橘田さんに谷崎潤一郎氏の小説『刺青』の一節を想起させました。

ライターチームリーダーとして箕輪編集室に深く関わる橘田さんだからこそ腹落ちした「刺青師 箕輪厚介」。

どうぞご覧ください。

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『死ぬこと以外かすり傷』は発売前から大きなムーブメントとなっています。多くの読者が本書に熱狂し、SNS上では熱の溢れた感想が目に飛び込んできます。その一方で、冷めた意見をお持ちの
方もいらっしゃいます。「内容が極端すぎる」「意識が高い」「宗教だ」などの意見がありました。

どうしてこれほど両極端な反応が起こっているのか。私はこの一連のムーブメントを見ていて、ある小説の一節が思い浮びました。

やがて彼は左手の小指と無名指と拇指の間に挿んだ絵筆の穂を、娘の背にねかせ、その上から右手で針を刺して行った。若い刺青師の霊(こゝろ)は墨汁の中に溶けて、皮膚に滲んだ。焼酎に交ぜて刺り込む琉球朱の一滴々々は、彼の命のしたゝりであった。彼は其処に我が魂の色を見た。

これは谷崎潤一郎の『刺青』の一部分です。これを読んでから私の中で、刺青というもののイメージが世間一般で思われているような非行的なものではなくなりました。
代わりに刺青というものは、何かその人の強い意志や信念を表したものであり、たとえ身体に彫られていなくとも誰しもが心の中に彫っているのだと考えるようになったのです。

『死ぬこと以外かすり傷』のムーブメントは、箕輪さんが彫り上げた刺青のようだと思いました。世間の肌に針を丁寧に落とし、朱を滲ませていく。その針が読者まで深く届き、ここまでのムーブメントが起こっているのではないか。そして、その針の痛みに耐えられない人も中にはいて、このように両極端な反応が生まれているのではないかと感じます。

『死ぬカス』の一節にこんな言葉があります。

僕が舵を握る「箕輪編集室」にはたった1年で1300人が集まった。若い人を中心に記事を書いたり映像を作ったりデザインしたり、イベントをプロデュースしたりと活発に活動している。明治時代の私塾のような感じだろうか。ここは不安定だけど勢いがあり、何よりも毎日変化する見える景色も変わり釣れる魚も変わる。うちのメンバーはみんな背中に「変わり続けることをやめない」という刺青を彫っている。

箕輪編集室のメンバーは、現状に安住せずアップデートし続けるという刺青を彫っています。箕輪さん自身が常に変化を追い求めて行動しているため、自然とメンバーもその姿勢を受け継いでいます。

あなたも本書を読んで、刺青を刻んでみてはどうでしょう。その過程は痛みが伴うかもしれませんが、未来にはきっと美しい絵ができあがります。

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『死ぬこと以外かすり傷』が刊行されて巻き起こっているムーブメントは、出版業界を震撼させています。

それは今まで本を読まない層にも響いているからではないでしょうか。

刺青師が刺青を彫ることも『死ぬカス』によって箕輪さんが人々を鼓舞することも、信念によるものだと橘田さんは言います。

彫られた刺青は完全に消すことができません。
刺青を消すには皮膚に浸透した墨を削るので激痛を伴います。「出産の次に痛い」とも言われるほどの激痛だそうです。

刺青で子どもの名前を彫った芸能人がSNSで炎上したことは記憶に新しいところですが、一つの信念があったことは誰の目にも明らかでした。

刺青を彫っている方は立ち入れる場所が制限されるなど過去のしがらみを抱えて現在のルールができあがっています。

あらゆるルールが変わるであろう未来では、身体に墨が付いている程度では誰も問題にしていないのかもしれません。

針の痛みに耐えてでも新たな価値観を身体に彫り込んで身に付けなければ、時代の大きな波に呑まれてしまいます。

刺青師 箕輪厚介が突き立てる針は多少の痛みがあります。「ただ動け」と訴えるその信念を受け止めた先に、鮮やかな未来が待っていることでしょう。

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テキスト 橘田佐樹
編集 荒木利彦

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