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人と企業を蝕む「PL脳」とは 朝倉祐介『ファイナンス思考』#熱狂書評

7月12日に発売開始した『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と再生の戦略論』。著者は、元ミクシィ代表取締役社長兼CEOで、現在シニフィアン株式会社 共同代表の朝倉祐介さんです。

昨日の記事にもあるとおり、とあることがきっかけで、みの編に記事執筆などのご依頼をいただいてるんです。

まさに本書の出版記念企画の記事も、みの編のメンバーが編集を担当しています。

みの編と関わりが深い本書に、メンバーの期待度も高まっているようです。

そんな本書を、これから手に取る「未来の読者」のために、ライターチーム「熱狂書評」プロジェクトでも盛り上げていきたいと思います。

「企業」を「人」に例えた、箕輪編集室メンバー清水翔太さんの熱狂書評です。

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恋愛市場におけるファイナンス思考

本書を読み、会計知識に明るくない僕でも、すんなりと内容が入ってきた。その理由は、朝倉さんが読者に読みやすいよう、平易に書いてくれているというのもある一方で、「企業」に関する本書の内容が、多く「人間」にも当てはまるからだ。

本書に頻繁に出てくる「PL脳」というのは、

“目先の売上や利益を最大化することを目的視する、短絡的な思考態度のこと”

を意味していて、そもそもの「PL」は、「損益計算書」を指す。そしてこれを、「内巻き志向で縮小均衡型の衰退サイクルに入ってしまう」きっかけをつくる、「日本企業の病魔」としている。また、そうなってしまう理由の一つに、企業側で「操作が可能であること」を挙げている。

さらに、この「PL脳」の対極に、「ファイナンス思考」という概念を置く。これは、「将来に稼ぐと期待できるお金の総額を最大化しようとする発想」で、PL脳を短期思考とするのならば、こちらは長期思考ということになる。

PL脳でみる優良株

以上のことを踏まえて、これを「人間」の世界の中でも「恋愛」に例えてみたい。

身なりが良く、ファッションに気遣い、有名な企業に勤めていて年収が高い20代男性がいる。恋愛市場では、「優良株」とされる。この男のプロフィール、つまりPLに欠点はない。

そんな男を偶然見つけた女性は、PL脳だったこともあり、二人はすぐに交際に発展した。

しかしこの男、じつは水面下では足をばたつかせていた。普段ファッションには全く気を遣わないが、デートの時だけ身なりを最高潮にもっていく。家のクローゼットの中は、昔から着ている服でほとんど占められている。

会社は確かに大手企業だが、「定年までほどほどの昇進でいい」という思考のもと行われる営業活動は、顧客の心を掴むことなく、結果成績は社内最下位。さらに内実、この企業は傾きかけている。男はそれを察知しているが、成長意欲がないので、転職も考えていない。「まぁ、なんとかなるだろう」と考えている。

「表面的によければOK」「その場を凌げればOK」これが男の信条だった。残念ながら男のPLは、男自身によって完全に操作されていた。つまり、残念ながら男も、PL脳だった。

そんなPL脳の男と、PL脳の女が交際した場合、きっと近いうちに齟齬が発生する。「あれなんか違う」と破綻に向かっていく様子が、ありありと想像できる。

PLの奥の正直な自分

一方、どちらかがファイナンス思考をもっていれば、そうした「齟齬」は早い段階で発覚するのではないだろうか。

「PL上はいいけど、実際はどうなんだ?」と考えた男は、会社の不穏な空気を察知し、転職市場に目を向ける。「格好つけてもしょうがない」と居直り、「自分は、実はこんな人間だ」と本質を開示する。それを知った女性は、その事実を踏まえた上で、男との未来を長期的に考える。

少々乱暴な例えではあるが、「企業」と「人」はそれくらい通ずる部分があるのではないかと思う。PL「脳」、それからファイナンス「思考」。「脳」と「思考」、まさに人間の所業だ。

本書はそうした、人生に関わるような本質が「ファイナンス(財源、財政)」の視点で、具体例も交えてわかりやすく書かれている。

こういった分野にアレルギーをもっている人も多くいると思われる。しかし、冒頭で朝倉さんは以下のように述べている。

“本書の目的は、ファイナンスの「理論」や「知識」を事細かく解説することではありません。ファイナンスを扱う土台となる「思考」を紐解くことに力点を置いてます”

どうやら、そういった人たちをあらかじめ想定し、誰でもくぐれるように門戸を広げて待ってくれているようだ。

この書評を読んで、少しでもこの本を手にとってくれる人が増えたら、僕はうれしい。

清水 翔太
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「人」と「企業」、そのどちらにも通じる「脳」と「思考」の話。短期的な未来をとるか、長期的な未来をとるか、知識の差はあれど、その差は一目瞭然ではないでしょうか。

本書の中には、アマゾンやリクルート、コニカミノルタなど、具体的な企業名を挙げ、実際の例をもとに解説している章もあります。経営者のかたはもちろん、そうでないかたにも具体的にイメージができるように記述されているのが、本書の特徴といえます。

自身が「PL脳」なのか、それとも「ファイナンス思考」なのか。それを知ることで、今後の人生の道筋も変わってくるのではないでしょうか。

書店にお立ち寄りの際は、ぜひ本書の前で足を止めてみてください。

引き続き、このような「熱狂書評」をお待ちしています! 朝倉さんの言葉を引用したものや一言書評でも、構いません。ぜひ、「#熱狂書評」をつけて気軽に呟いてみてください!

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テキスト 清水翔太

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